悪い意味で自分に自信がない

――なんだか、恋する女性みたいですね……?

そうですね。女性にはそういう人がいますよね。

僕の場合は、自分に自信がないんですよ。悪い意味で。だから、今自分がいる場所は"不本意な場所"だと思いますし、相手の世界にすごく興味があるんです。

――自分に自信がないことで、相手により興味が持てるということですね。

ええ。もはや僕の仕事はそれで成り立っていますからね。自分に自信がない限り、他の人には思いつかないことを思いつき続けられる。仮に僕が自信満々になってしまったら、きっと今書いているような文章は一行も書けなくなってしまいます。代わりに自己啓発本とか書き始めるんじゃないですかね。「素敵な人になるための○カ条」みたいな(笑)。

今でこそ僕は短歌を詠んだりエッセイを書いたりすることを職業化できていますけど、それまでは"ただ自信のない人"でしたからね。相当まずかったですね。

「短歌やエッセイを職業化できるまでは"ただ自信のない人"だった」

「作品は裏切らない」と気づいた

――恋愛が作品に影響することはありますか?

恋愛が盛り上がっている時は、あまり作品は生まれませんね。他のことへのやる気がなくなります。

恋愛が盛り上がっている時に傑作を生み出すタイプの人はどんなジャンルにもいると思うんですけど、僕は恋愛が盛り上がっているとそれだけで良くなってしまうんですよ。本当はそれじゃだめなんですけどね。自分だけのミューズがいて傑作ができる、みたいな。かっこいいですよねぇ。

――穂村さんの中で恋愛と短歌は結びつかない、ということですね。

直接は結びつかないですけど、それは行為としてその2つが似ているからだと思います。

――短歌と恋愛が似ている、とは?

短歌を詠むことも、"運命"と同じで僕にとってはひとつの扉なんです。短歌は、一瞬だけ、異次元の世界への扉を開いてくれるもの。「自分が本来いるべき場所へ、この通路からいけるんじゃないか」みたいなイメージがあるんですよ。女性に対する意識もそれと似ているから、どちらかだけで良くなってしまうんじゃないですかね。

ただ、作品は残りますけど、恋愛は毎回ゼロからになってしまいますからね。だんだんそれがきつくなってきて、ある時から「やっぱり一番大事なのは作品だ」と思うようになったんですよ。「作品は裏切らない」と。最終的にはみんなこの寂しい結論に達するらしいんですけどね。

――最後に、今の男女や恋愛についてどう思われますか?

女性はともかく、昔と比べて若い男性は変わりましたよね。見た目も感覚も、いろいろな意味で奇麗になったし、優しい人が増えたと思います。というより、男性は優しくないと生きていけない、という社会になったのではないでしょうか。

著者プロフィール

平井 絵未理(ひらい えみり)
ラーメンをこよなく愛する女子大生。2014年度ミスキャンパス学習院ファイナリスト。現在は身も心もすっぴんライフ満喫中。趣味はアカペラ。研ぎ澄まされた絶対音感を持つ方向音痴。
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