携帯やパソコンなどのブルーライトはどんな影響を与える?

携帯やパソコンから四六時中ブルーライトを浴びていませんか?

ブルーライトという言葉を聞くと、どのようなイメージを抱くだろうか。パソコンなどから発せられるブルーライトをカットするめがねも数多く販売されていることから、「目に悪そう」と認識している人も少なくないだろう。

ところがこのブルーライト、実は浴びる時間帯によって私たちにとって「敵」にも「味方」にもなりうるのだ。今回はブルーライトが人体に与える影響や、浴びることのメリット・デメリットについてあまきクリニック院長の味木幸医師に話を伺った。

目にダメージを与えるブルーライト

ブルーライトとは、波長が短い青色光のことを指す。ヒトの目で見ることのできる光の中で最も波長が短く、その分強いエネルギーを持っているのが特徴だ。自然界で言えば、太陽光にブルーライトが含まれている。そのほか、私たちの生活においてはパソコンや液晶テレビ、スマートフォンなどのLEDを使用したディスプレーなどにも含まれている。

ブルーライトは角膜や水晶体で吸収されず、目の奥深くにある網膜まで到達するが、網膜は光から強いダメージを受けると失明する可能性がある。また、体にさまざまな悪影響を及ぼす「活性酸素」がブルーライトを受けて活性化することも、ブルーライトが「悪者」扱いされるゆえんの一つだろう。

昼間のブルーライトは体にいい

携帯やパソコン等から出るブルーライト、意外なことにメリットもあるとのこと

だが、このブルーライトは、人間の体内時計を調整するという重要な役割があると味木医師は話す。

「ブルーライトは、浴びた瞬間に『朝の活動が始まるぞ』ということや、その十数時間後に『夜だからそろそろ寝る準備を』ということを知らせる、いわば『体内時計のセンサー』としての役目を果たしています。そのため、昼間に5分か10分でもいいので日光を浴びると、私たちの生命を維持するための『サーカディアンリズム』にとって良いです」。

私たちの体には、約24時間を周期とする内因性のリズムであるサーカディアンリズム(概日リズム)が存在し、ホルモン分泌や睡眠などの活動にもサーカディアンリズムが関わっている。

一方でヒトの体内時計の周期は約25時間と言われており、1日の周期である24時間のリズム(サーカディアンリズム)と約1時間のずれがある。そのため、日常生活において「光」「食事」などの外的要因を加えることで、体内時計とサーカディアンリズムの「1時間のずれ」を修正している。

このサーカディアンリズムと体内時計のずれは、血圧や血糖値、ホルモン分泌などの乱れを招く。その結果として睡眠障害やうつ、肥満、糖尿病、高血圧などのリスクも高まってしまう。そして、このずれの誤差を少なくし、2つを同調させようとする因子の中で最も強いものが、ブルーライトを含む日光なのだ。「日の出と共に起き、日の入りと共に寝る」という言葉は、これに由来するものだろう。

そのため、味木医師は「昼間はむしろたっぷりとブルーライトを浴びた方がいいのです」と話す。また、太陽光には骨の代謝に関係があると言われているビタミンDを活性型にしてくれるというメリットもある。昼間にブルーライトを吸収するならば、太陽の光を浴びるのがいいだろう。

夜間のブルーライトはNG

ただ、ブルーライトが私たちの「味方」なのは、昼間に限ってのこと。夜間にブルーライトを浴びると、私たちの体は「まだ太陽が出ているのだろう」と誤った判断をしてしまい、体にさまざまな不調をおよぼす。目にも必要以上の負荷がかかってしまうことから、「味方」が一転、「悪者」となってしまうのだ。

夜になってもお構いなしにパソコン作業をしているビジネスパーソンは無数にいるだろうし、今やスマートフォンやタブレット端末を持っている人は当たり前となった。もちろん、これらのアイテムはブルーライトを発している。

「今では、ほとんどの車がLEDのライトをつけて走行しています。日中にそれらのライトを見ても大したことはありませんが、夜間に見るとサーカディアンリズムが崩れます。街のネオンにもブルーライトが含まれています」。屋内だけではなく、屋外でも至る場所にブルーライトがあふれているため、夜間は常に「ブルーライトの危険」にさらされているといってよいだろう。

手軽なブルーライト対策って?

プラスの側面とマイナスの側面があるブルーライトは、つまるところ付き合い方が大切と言える。味木医師はブルーライトとの上手な付き合い方のポイントをいくつか挙げてくれた。

■視界がゆがみ欠損して見える「黄斑変性症」を患っていたり、網膜に疾患があったりする人はブルーライトカットのめがねをかける

■目に異常が無くても、眼精疲労やストレスに悩む人もブルーライトカットのめがねをかける

■仕事以外でも頻繁にスマートフォンを使用する場合は、反射防止タイプのフィルムなどを貼付する

■パソコンやスマートフォン画面の照度を下げる

目を労わりたい人は、普段使用のめがねにもブルーライトカット機能を入れてみてもいいだろう。

これらの対策以外に、体の内側からブルーライトを"ブロック"するための方法としてサプリメントを選択するという手段もある。

「ブルーライトから目を守るには、ルテインやアスタキサンチン、アントシアニン系のサプリメントを摂取するのも効果的です。ルテインは網膜の中心部である黄斑部分にフィルターを作ってくれます。また、アントシアニンやアスタキサンチンは体全体に抗酸化作用を及ぼしてくれます。自分の目を守るため、『体の内側にブロッカーを作ればいい』という意識を持つとよいでしょう」。

現代社会は、もはやパソコンやスマートフォン抜きではビジネスが成り立たなくなったと言っても過言ではないだろう。それらのディバイスからブルーライトを浴びてしまうことは仕方ないし、ブルーライトは必ずしも完全悪ではない。サーカディアンリズムの観点から、「昼間にたっぷり浴びて夜は控える」ということを意識して向き合うようにしよう。

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記事監修: 味木幸(あまき さち)

あまきクリニック院長、慶緑会理事長。広島ノートルダム清心高校在学中に米国へ1年の留学。米国高校卒業後に母校に戻り、母校も卒業。現役で慶應義塾大学医学部入学。同大学卒業後、同大学眼科学教室医局入局。2年間の同大学病院研修の後、国家公務員共済組合連合会 立川病院、亀田総合病院、川崎市立川崎病院・眼科勤務。博士(医学)・眼科専門医取得。医師として痩身や美肌作り、メイクアップまでを医療としてアプローチする。著書も多数あり。