無線LANの互換性認証と共通規格の策定を行っている業界団体のWi-Fi Allianceは、都内で近接情報の発見機能である「Wi-Fi Aware」に関する説明会を開催した。無線による位置情報や近接情報の発見・伝達規格はほかにもいくつかあるが、Wi-Fi Awareのメリットはどういったところにあるのだろうか。

他機器間での「すれちがい通信」も実現できる?

Wi-Fi Awareは、Wi-Fi機器どうしが近くに来た場合、「自分はここにいるよ」という情報を相手に提示できる機能だ。もともとWi-Fi機器はアクセスポイントにせよクライアントにせよ、定期的に自分が存在することを示す信号を送っているが、それよりもさらに小さいサイズの情報を使って機器どうしのネットワークにより接続を実現している。

この情報は「Neighbor Awareness Networking」(NAN)と呼ばれるプロトコルとして規定されており、NANを扱える機器同士は機器間でクラスターを構築する。このクラスター同士が接続してNANネットワークを構築し、双方のクラスターに属する機器を介してネットワークが拡張されていく。クラスター内で各機器は「マスター」と「ノンマスター」の立場に分かれるが、この立場は絶対的なものではなく、状況によって入れ替わることもある。また、アクセスポイントのような固定式の機器もクラスター内には含まれる。

機器同士のクラスターにより、通常のアクセスポイントでは到底接続しきれないような数百、数千といった単位のクライアントも同時に扱うことができる点がWi-Fi Awareの特徴になる。また、広い会場でアクセスポイントの電波が届かないような場合でも、クラスター経由で情報を受信可能になるため、緊急速報的なものを広く配信したいときにも便利だろう。

「NANネットワーク」。Wi-Fiアクセスポイントのようなスター型トポロジーではなく、メッシュ型トポロジーになるが、ネットワークを構成する機器が移動して頻繁に入れ違うことを考えると妥当な設計と言えるだろう

利用環境の条件として挙げられたのがIEEE802.11n/ac(5GHz帯はオプション扱い)と、セキュリティとしてWPA2をサポートしていることが最低限必要で、チップセットはピアツーピア接続の「Wi-Fi Direct」をサポートしている必要があるという(説明会では11a/b/gも含まれるという説明だったが、仕様書では11n/acのみの扱いなので、11n/acのみとする)。同時に、利用にはOSやアプリ側のサポートも必要になるが、そのあたりは今後の課題ということだった。