どんなにケアしても口臭が気になる場合、その原因は舌苔にあるかも

自分の舌を見て、ふと白っぽい苔(こけ)状のものが付着していることに気づいた経験はないだろうか。この苔状のものは「舌苔」(ぜったい)と呼ばれ、基本的には健康に害を及ぼすようなことはない。

その一方で、舌苔は体のさまざまな不調と密接に関わっているため、舌苔を見ることで「体からのSOS」を察知できる。今回はM.I.H.O.矯正歯科クリニック院長の今村美穂先生に舌苔の特徴や原因、除去方法などについて伺った。

舌苔は口臭の温床

舌の表面に見える苔状の舌苔は、舌にたまった食べかすや細菌のかすで、唾液の分泌腺の機能状態や分泌量、体調などの影響を受ける。通常は白色だが、心身に何らかの異常があると、黄褐色や黒色になる場合もある。

多少の舌苔は健康な人にもあるが、口の中が乾いていたり、体調が優れなかったりしたときは舌苔が厚くなる。特に胃粘膜の状態がよくない場合、一般的に舌苔が厚くなると言われている。舌の上にある味覚や感覚を知覚する箇所の働きを低下させ、食欲を減らすことで食物摂取を減少させる。その結果、胃腸を保護するというわけだ。

そして、厚くなった舌苔は口臭の原因になる。口臭の主な成分である硫化水素は舌苔に関連していると言われているが、硫化水素は食べかすなどが細菌によって腐敗されることによって発生する。舌苔は、まさに口臭にとってうってつけの"環境"というわけだ。

唾液不足やストレスなどが舌苔の原因

そんな舌苔の原因は複数に及ぶ。

■唾液量分泌不足による口の渇き

■風邪や睡眠不足などからくる免疫力の低下

■口呼吸

■食べ残しが多い歯みがき

■喫煙

■加齢

■ストレス

これらが主だった原因となり、当てはまる項目が多ければ多いほど、舌苔がたまりやすくなる。

「例えば、唾液には歯や口腔(こうくう)内の汚れを落とす『自浄作用』がありますが、その唾液が不足すると細菌が繁殖しやすくなります。また、口呼吸をするとどうしても口の中が乾燥しやすくなるため、舌苔が舌の上に停滞しやすくなります」。

基本的に舌苔除去に治療はいらない

この舌苔に限らず、そもそも最近は「不健康な舌」の持ち主が多いと今村先生は話す。

「最近は健康的なピンク色の舌の持ち主が少ないですね。舌が青くなっていたり、黄色くなっていたり、先端が割れていたりという人が多く、正常な形の人も少ないです。色は淡い赤からピンク色で、厚くもなく薄くもなく、真ん中がふっくらとして弾力があり、うっすらと舌苔が生えているのが健康的な舌です」。

舌はその人の健康と深い関係がある。例えば、舌に黄色い舌苔が生えていたら、食べ過ぎや飲みすぎ、便秘など食生活に乱れが起きている可能性がある。舌の色が赤紫や青っぽい感じで斑点がある場合は、「冷え」が疑われるという。

ただ、何らかの異常があれば別だが、基本的には舌苔の除去には特別な治療を必要としない。無理に汚れをこすり落とそうとすれば、粘膜を傷つけて他の病気につながるリスクもあり、かえって逆効果。大切なのは、舌苔の原因を見極めたうえでの対処法だ。

例えば、唾液が少なく食べ物が舌の上に残りやすい場合、口腔内の細菌がそれらの食べ残しを食べ、プラーク(歯垢)化することもある。

「そのような場合は舌磨きをした方がいいですね。そして、唾液が少ない人は唾液腺のマッサージが必要となりますし、舌の上に食べ残しが多い場合は咀嚼に問題がある可能性もあります。そうなると、ちゃんとした咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ: 飲み込むこと)の方法を知ってもらわないといけませんね」。

今では、舌を磨くための専用の舌ブラシも手軽に購入できるようになっているため、舌を磨く際に活用するとよい。ただ、先述の通り、舌苔の原因はさまざま。舌磨きなどをしてもどうしても気になる場合は、自分で原因を決め付けずに、歯科医などを受診するようにしよう。

家庭でもできる3つの舌苔予防策

それでは、口臭の原因になる舌苔の沈着を防ぐため、日ごろから実践できる対策には何があるだろうか。今村先生は、重要なのは「規則正しい生活を送ること」「舌をしっかりと使うこと」としたうえで、3つの対策を教えてくれた。いずれも簡単なことばかりなので、今日から早速試してみよう。

食後に歯や舌を磨く

舌苔は舌の上にたまった食べかすや細菌かすなどのため、やはり食後にしっかりと歯や舌を磨くことが肝要。「もしも食後に歯を磨く時間がないようでしたら、うがいをするだけもで違ってきます。原則は歯磨きで、それが難しいならばうがいをするようにしましょう」(今村先生)。

食物をしっかりかんで、しっかり飲み込む

「舌苔を沈着させないためには、口の中に食物残渣(ざんさ: 残りかすのこと)を残さないことが大切です。自浄作用がある唾液を多く分泌させるためにも、しっかりと咀嚼をしましょう」(今村先生)。

ご飯は少なく、野菜は多く摂取する

野菜に多く含まれる食物繊維は、歯に汚れが付着するのを防いでくれるといった効用がある。逆にご飯やパンなどの炭水化物は口腔内に残りやすいため、舌苔につながりやすい。しっかりと野菜を食べるようにしよう。

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記事監修: 今村美穂(いまむら みほ)

M.I.H.O.矯正歯科クリニック院長、MIHO歯科予防研究所 代表。日本歯科大学卒業、日本大学矯正科研修、DMACC大学(米アイオワ州)にて予防歯科プログラム作成のため渡米、研究を行う。1996年にDMACC大学卒業。日本矯正歯科学会認定医、日本成人矯正歯科学会認定医・専門医。研究内容は歯科予防・口腔機能と形態 及び顎関節を含む口腔顔面の機能障害。MOSセミナー(歯科矯正セミナー、MFT口腔筋機能療法セミナー)主宰。