NECは7月9日、同社グループで、海底光ケーブルの製品の製造・販売を行うのOCC(Ocean Cable & Communications)の製造工場(海底システム事業所:北九州)および、光海底ケーブル敷設船への船積み様子をプレス向けに公開した。OCCの海底システム事業所は、日本唯一の海底ケーブル製造工場だ。

北九州市にあるOCCの海底システム事業所

NECは、国際通信の99%を支える光海底ケーブルシステムにおいては、すでに地球5周半以上、延べ20万kmを超える敷設実績がある。

NEC 海洋システム事業部長代理 緒方孝昭氏

現在、光海底ケーブルは、太平洋をはじめ、世界中に張り巡らされており、2015年のNECの世界シェアは、契約ベースで米TE Subcomの34%に次ぐ2位(30%)だ。北九州という場所がら、アジア圏に強いという。

NEC 海洋システム事業部長代理 緒方孝昭氏によれば、海底ケーブルは、米TE Subcom、仏Alcatel-Lucent、NECの3社が主要サプライヤーで、シェアは拮抗しているという。3,000m以上の深海に対応できるのは、世界でこの3社のみだといい、そういう意味で、OCCの海底システム事業所は、アジア圏唯一の海底ケーブル工場といえる。

光海底ケーブルの主要サプライヤ

光海底ケーブルシステムは、光海底ケーブル、光中継器、光分岐装置、給電装置、光端局装置、SDH装置から構成される。

光海底ケーブルシステムの構成要素

海底ケーブルは100Gb×100波長のファイバ8本で構成され、ケーブル1本で約80Tb/s(DVD約2,100枚分)の伝送容量がある。設計上のシステム寿命は25年。水深8,000mの水圧に耐えることができる。

海外との通信インフラには衛星通信もあり、1995年には海底ケーブルと比率は50:50であったが、2014年には、99%が海底ケーブルによる通信になっているという。海底ケーブルの需要が増大した背景には、安価で信頼性が高い大容量回線であることや、トランスポーダーさえ交換すれば通信容量がアップするというシステム拡張が容易で長寿命な点のほか、伝搬時間が短い点が挙げられる。

海底ケーブルシステムの完成には、入札・契約から引き渡しまで、1-2年のプロジェクト期間があり、NECグループの海底ケーブル生産工場は、OCC北九州工場のほか、光伝送装置・給電装置製造を行う宮城県のセレスティカと、海底中継器・分岐装置の生産を行うNEC山梨がある。

海底ケーブル完成までの流れ

国際通信の回線需要は年々増加し、ここ5年では4倍の伸びがあり、平均すると毎年1,500億円から2,000億円の市場規模があるという。

海底ケーブルの市場規模。2014年に大きく伸びているのは、100Gb/s技術が成熟したタイミングたったからではないかとNECは推測している

今後は、第5世代の伝送技術が開発され、2000年頃には400Gb/s程度の伝送容量になるという。

伝送技術および容量の変遷

現在NECでは、FASTER(日本-米西海岸 9,000km)、SEA-ME-WE-5(シンガポール-フランス 20,000km)、SEA-US(フィリピン-ハワイー米西海岸 15,000km)、SACS(アンゴラ-ブラジル 6,200km)、AAE-1(タイ-香港 2,900km)のプロジェクトが進行中だ。

NECの最近の海底ケーブルプロジェクト

OCC 代表取締役社長 都丸悦孝氏

OCC 代表取締役社長 都丸悦孝氏によれば、こういったプロジェクトに対応するため、これまで月産1,000km程度であった海底ケーブルの生産を、現在月産1,500kmまでアップしており、年内には、ラインを増やすなどして、月産2,000km程度まで能力アップを図る予定だという。

NECでは最近、海底ケーブルの技術を利用した海底観測システムにも力を入れており、地震や津波の観測や海洋資源の探索でも威力を発揮している。

海底ケーブルの技術を利用した海底観測システム

地震や津波の観測装置