アユートは7月11日、オーディオイベント「ポタ研2015夏」にて、Astell&Kern初の一体型サウンドシステム「AK T1」の試聴会を行った。ポタ研2015夏は、東京・中野サンプラザを会場に、同日17時まで開催されている。

AK T1 (上部)

AK T1は5月にドイツ・ミュンヘンで開催されたイベント「HIGHEND MUNICH 2015」にて参考出展されていたが、国内では今回の試聴会が初披露の場となる。試聴会は、Astell&Kernの国内代理店であるアユートの藤川真人氏が製品説明とデモを行う流れで進行していった。

AK380を手にAK T1のデモを披露するアユートの藤川真人氏

AK T1は、デザイン家電のような外観からもわかるように、インテリアの一部としてリビングに設置されることを念頭に開発された。藤川氏はAK T1の四大キーフィーチャーとして、AK 240相当のプレーヤー機能を内蔵していること、アナログ・デジタルのハイブリッドアンプ構成をとっていること、3ウェイ6スピーカーを搭載していること、Wi-FiとEthernet(有線LAN)そしてDLNAといったネットワーク機能に対応していることを挙げた。

リビングに設置する製品として開発された。高級インテリアのようなデザイン

AK T1の四大特徴

AK T1のプレーヤー機能は「AK240がくっついていると思っていい」(藤川氏、以下同様)というように、AK240と同等の性能を持っている。具体的には、シーラスロジックのDACチップ「CS4398」をデュアル搭載し、FLAC/WAV/ALAC/AIFF 192KHz/24bit、DSD 5.6MHzのネイティブ再生に対応している。

AK T1 (全体像)

Tの字がクロスする部分にプレーヤー部がある

アンプの構成も非常に独創的だ。アナログ・デジタルのハイブリッドアンプを搭載しているが、左右ではなく、高低のディスクリートとでも言うべきだろうか。アナログアンプはツイーターに対して、デジタルアンプはミッドレンジとウーファーに対してオーディオ信号を送るシステムとなっている。

スピーカーの構成は、19mm径(0.75インチ)のツイーターと50mm径(2インチ)のミッドレンジをT字のバーの"耳"にあたる部分に配置。165mm径(6.5インチ)のウーファーをT字の支柱の"首"あたりに搭載している。再生周波数帯域は48Hz~22KHzというスペックだ。

アンプの構成図。ツイーターはアナログアンプから、ミッドレンジとウーファーはデジタルアンプから信号が送られるという非常にユニークなシステムだ

T字のバー部分にミッドレンジとツイーターユニットを、支柱部分にウーファーを配置している。支柱がスリムなため、左右でウーファーの位置の高さが異なる

背面下部、台座に近い部分。ウーファーにつながるバスレフの出口が見える。その下に有線LAN端子、電源端子

HDDを搭載しておらず、音楽データについては「NASがある環境が前提」。外部の入力ソースから受けて再生に徹するという思想だ。また、専用リモコンも付属せず、操作はスマートフォンやタブレット、もしくは他のAKシリーズをリモコン代わりにして行う。連携アプリとして、iOS/Android OS向けに「AK Connect」を提供しており、このあたりは今の時代に沿った考え方ともいえるだろう。

ネットワーク機能として、Wi-Fi (IEEE802.11b/g/n、2.4GHz帯)、有線LAN (1000BASE-T対応)、Bluetooth 3.0を搭載。DLNAもサポートする。インタフェースはUSB (type A)、microSDカードスロット、AUX入力、光デジタル入力を備えている。

なお、AK T1のサイズはW700×H998×D404mm、重量は約15kgとなっている。

インターネットラジオや音楽ストリーミングサービスの受信、AKシリーズとのDLNA連携機能を持つ

操作はスマートフォンやタブレットから行い、音楽データはNASなどから受信することを前提としている

Astell&Kernのロゴがプレーヤー部に。Astell&Kernの象徴といえる面を斜めにカットしたようなデザインも

USBメモリーやmicroSDカードも利用可能。図には記されていないが、有線LANインタフェースも用意している。これらインタフェース類は背面上部に集約

試聴会では、藤川氏が手元のAK380をDLNAサーバーに見立てて、AK380内の楽曲をAK T1から再生するデモを行った。実際に聴いてみたサウンドは、1曲のみの試聴ということもあり、まだ開発途上の段階であるように感じた。ともあれ、AK T1は「今のマーケットに存在しないもの、革新的なものを投入していく」というAstell&Kernのブランド風土を象徴する製品といえる。デザイン家電の要素を取り入れた一体型システムへのチャレンジとして、発売までには確実にブラッシュアップしてくるだろう。

ホームユースだけでなく、オフィス内や病院の受付、美術展など、これまでになかった利用シーンも提案していくという

ポタ研2015夏のアユートブース。最新フラッグシップDAPのAK380や現行AKシリーズ、DITAやMASTER&DYNAMICなどのイヤホン・ヘッドホン製品を試聴できる