より積極的に音楽を楽しむ

Apple Musicは、グローバルでは3,700万曲とも言われる膨大なカタログにアクセスできるサービスだ。画面右上に検索窓が用意されているものの、ユーザーが楽曲を指定して検索するような使い方はどちらかというとメインではない。

Apple Musicの特徴は、音楽エディターやDJなどが関わって人の手によって選ばれた「プレイリスト」や、アルゴリズムによって選ばれる「ラジオ」を通じて、音楽と出会い、好みを記録しながら楽しんでいく仕組みにあると言える。

プレイリストや楽曲には、「+」ボタンと「ハート」ボタンが用意されている。「+」ボタンを押すと、プレイリストや楽曲を「My Music」に追加できる。My Musicの音楽はオフラインで聴くために、デバイスにダウンロードすることもできる。「ハート」ボタンは音楽の好みをApple Musicに記録する役割がある。また、アーティストのページには「Follow」ボタンがあり、Connectに新規投稿が表示されるようになる。

聴いている楽曲からラジオステーションを開始したり、マイミュージックやプレイリストに追加できる。聴きながら、楽曲に対してアクションが可能な仕組みだ

このようにして、聴きたい音楽を選んだり、聴いた音楽に対してアクションを起こす仕組みを備え、膨大なライブラリから自分なりの音楽の聴き方を育てていくことができる。

また、聴いているプレイリストや楽曲、ラジオステーションを、iOSの共有機能によって、TwitterやFacebookなどに投稿できる。Twitterに共有する場合、プレイリスト名やApple Music上で直接開けるリンクに加えて、ジャケット写真のコラージュも投稿される仕組みだ。

音楽の聴き方に変革をもたらすか?

Apple Musicは、後発の音楽サービスということもあり、非常によく練られられている印象だ。特にプレイリストは、人の手によって作られていることが、詳しい解説が添えられていることからも伝わってくる。

冒頭でも紹介した通り、Appleはこのサービスについて「革新的」と語った。確かに、これまで1曲150円、アルバムを2,000円前後で購入してきたiTunes Storeの世界と比べれば、毎月980円ですべての音楽にアクセスできる点は、音楽を購入してきたリスナーにとっては大きな変化だ。

CDやデジタルで楽曲を「購入する」という従来の楽しみ方の場合、購入するかどうかという判断があり、購入した音楽は自分のものとして繰り返し楽しむようになる。思い出や好きなアーティストである、など、何らかの思い入れがそこに働く。

しかし、無料で広告ベースのストリーミングサービスは、よりBGM的に、受動的に音楽を楽しむスタイルを世の中に定着させてきた。もちろん好みの反映もされるが、必ずしもApple Musicのように積極的に「選ぶ」行動を必要としなかった。そして、アーティストにとっては、収益性を低下させるだけでなく、リスナーからの積極的なフィードバックを得にくい構造が作られていった。

Apple Musicは旧来の「購入する」スタイルのリスナーも、ストリーミングに親しんでいるリスナーも取り込めるような工夫されている。ストリーミングで自分の好みに近い未知の音楽に触れながら、結果的に新しく好きになった楽曲やアーティストを見つけてフォローする、という積極的なスタイルを実現できそうだ。

こうした音楽の体験や、Apple Music流の音楽市場の構築まで含めて「革新的」と呼ぶなら、非常に納得できる。日本向けのカタログの充実や、アーティストやレーベルのビジネスなど、今後も多くの課題がある。しかし、これまでコンテンツサービスの開始が遅れてきたり、機能制限があったストリーミング途上国の日本でも、世界に足並みを揃えてサービスが始まった点は、素直に評価すべきだろう。