Windows 10は「One Windows」というカーネルやプラットフォームを統合したビジョンを目指している。そのため、デスクトップ/タブレット向けOSのWindows 10だけでなく、スマートフォン向けOSのWindows 10 Mobileの存在も興味深い。

Windows 10 Mobile ビルド10136をリリースした際に、Microsoft OSG Fundamentalsチーム エンジニアリングジェネラルマネージャーのGabriel Aul氏は、「開発が順調に進めば、今年の後半には(Windows 10 Mobileを)リリースできると思う」と述べている。

これまでの流れを振り返ってみよう。最初にWindows 10 Mobileのプレビュー版が登場したのは2015年2月12日だった。そのころは「Windows 10 Technical Preview for Phones」と呼ばれ、プレビュー版がサポートするデバイスは、Lumiaシリーズの第2~第3世代などに限られていた。

プレビュー版リリース初期のWindows 10 Mobile。バージョンは9941.12498だった

その後、3月27日にサポートデバイスを拡充し、4月10日にはバージョン10.0.12534.56(ビルド10051)、4月21日にはバージョン10.0.12534.59(ビルド10052)と、開発者向けセミナー「Build 2015」に向けて駆け足でプレビュー版を更新していった。

正直に述べればこの頃の筆者は、Windows 10 Insider Previewの変化を追いかけるのに忙しく、Windows 10 Mobileにあまり興味を持っていなかった。それを大きく覆したのが、2015年5月14日にリリースしたバージョン10.0.12562.84(ビルド10080)である。

Build 2015で披露したWindows 10 Mobile。ビルド10080と思われるが、会場ではデバイスにディスプレイやキーボードをつないでPCライクな操作性を提供する「Continuum for Phone」を披露した

ビルド10080ではUIを改良し、新しいアクセントカラーやライブタイルアニメーション、透明化などを実装。Windows 10 Insider Previewと同じく「ミュージック」や「ビデオ」のプレビュー版アプリや、Windowsストアのベータ版を提供し始めたのもこの頃である。しかし、筆者も実際に試したが、Windows Phone 8.1の安定度には遠く及ばず、一部のアプリケーションが起動しない場面に何度も出くわした。

その後しばらくアップデートする気配はなかったものの、5月26日に突然「Phone Companion」を発表。こちらはPCとWindows Phone/Android/iOSの連係を目的とし、アプリケーションのインストールやOneDrive経由のデータ同期を実現するスタータープログラムである。

注目すべきは音声パーソナルアシスタントのCortanaをAndroid/iOSに提供する点だ。もっとも2015年7月29日のWinodws 10アップグレード開始時点では、Cortanaは日本語に対応していないため、我々が恩恵を受ける場面は少ない。Cortanaについては機会を見て報告する。

音声パーソナルアシスタントCortanaをAndroidやiOS上で実行可能にする「Phone Companion」

Microsoftが公開した動画では、Android上でCortanaが動作している

Winodws 10 Mobileが安定し始めたのは、6月16日リリースのバージョン10.0.12634.131(ビルド10136)あたりからだ。アップデートロジックにバグがあるため、一度Windows Phone 8.1に戻してからインストールする必要があるなど、不具合も残ってはいるものの、ようやく使えるレベルに達したように感じた。開発チームも手応えを感じ、本稿冒頭のように2015年後半のリリースを示唆するに至った。

Windows 10 Mobile Insider Preview ビルド10136のスタート画面

そして6月25日、バージョン10.0.12648.133(ビルド10149)をリリースした。今回はWindows 10 Insider Previewと同じく更新プログラムでアップデートを実行する形だが、最後のステップで日付と時刻が表示されないロック画面が10分ほど続いた状態になる、とAul氏は注意を喚起している。筆者の環境でもアップデートを実行後の再起動処理がうまく続かず、0x80091007エラーが発生。そのため、Windows Phone 8.1→Windows Insiderアプリのインストール→高速リングへ変更という手順を経て、ようやくビルド10149にたどりついた。

更新プログラムに現れたビルド10149。その後エラーが発生する……

Windows 10 Mobile Insider Preview ビルド10149のスタート画面。通知センターからの懐中電灯切り替え機能などを実装した

ビルド10149における変更点はUXやCortanaの改善、写真撮影時のOneDrive自動アップロード機能の復活やバグ修正など多岐にわたる。筆者は途中参加ながらも一連のプレビューを見て行くと、Windows 10 Mobileが一歩ずつ安定性や利便性を向上させてきたことがよくわかる。2015年中に登場予定のWindows 10 Mobileの開発は順調だ。まもなく登場するWindows 10と合わせて利用する予定の方は期待していいだろう。

阿久津良和(Cactus)