クラウド会計ソフトを手がけるfreeeが会社設立に必要な書類をすべて出力できる「会社設立freee」を6月23日にリリースした。必要書類を最短5分程度で出力できるだけでなく、書類を提出する近隣の役所を自動的にサジェストしてくれる機能などを提供する。

freeeはクラウド会計ソフトだけでなく、クラウド給与計算ソフトも2014年5月より提供。バックオフィス全般の業務を、コンシューマが親しんでいるWebベースのインタフェース、なおかつ中小企業でも使いやすいクラウドという形でサービス提供しているわけだ。2カ月前には新コンセプトの「クラウド完結型社会」を発表し、マイナンバーへの対応やe-Gov APIへの対応を日本で初めて行うなど、クラウドですべての業務を完結できるビジネスソリューションへの道を着実に歩んでいる。

そこで登場した「会社設立freee」だが、なぜプロダクト開発に至ったのか。代表取締役の佐々木 大輔氏は、自身がfreeeを立ち上げた時の経験を語り、その煩雑な作業が日本のビジネスの足かせになっていると指摘する。

freee 代表取締役 佐々木 大輔氏

「会社の設立には、23通の書類と16カ所の押印作業、そして6カ所に書類を提出しなければなりません。書類の提出で言えば、法務局などは"駅チカ"にないところが多いので、私は法務局や公証役場、税務署などを、汗をかきながら自転車で回りました。役所を回ることもさることながら、書類の用意も非常に大変なんです。

弊社の調査ですが、会社設立の経験者に尋ねた平均設立日数は24.2日で、約3割は1カ月以上かかっています。また、公的制度の手続費用を除く、専門家相談などによる資料作成だけでも平均して約11万2000円の費用がかかっており、時間もお金もかかることが会社設立のネックになっています」(佐々木氏)

佐々木氏がより問題視している点は、「日本の開廃業率」だ。文字どおり、各年度における企業が開業した割合、廃業した割合のことだが、シリコンバレーでスタートアップがボコボコと出てくるアメリカが、開業率の廃業率いずれも10%前後を推移しているのに対し、日本は5%前後にすぎない。政府もこの点は課題と認識しており、安倍首相のもとで提起されている「日本再興戦略」の構造改革プログラムで開廃業率の向上がうたわれている。

もちろん、日本はその他先進諸国に比べて雇用が安定しており、失業率が低いという状況もある程度加味しなければならないと思う。しかしながら、新しい企業が生まれ、「新しい産業を立ち上げよう」という気概がある人物が簡単に起業できる環境があれば、それだけ国の経済に寄与するし、産業構造の変化にも柔軟に対応できる土壌が生まれる。

佐々木氏はそこで「ビジネスのしやすさ」と「ビジネスのはじめやすさ」の世界ランキング(世界銀行調査)を持ち出す。これによると、日本はビジネスのしやすさで29位とまずまずの順位である一方、ビジネスのはじめやすさでは83位とかなり低い順位になっている。実は、ビジネスのはじめやすさで言えばアメリカも46位とそこまで高くない。ビジネスのしやすさが7位であることから、高い開業率につながっている面はあるものの、開業率向上に向けては、最低限でもアメリカ水準の"はじめやすさ"が求められていることが、この調査から見えてくる。

そこでfreeeは、佐々木氏の経験や社内での議論の中から自然発生的にこのプロジェクトを立ち上げ、"クラウド完結型社会"という構想のもとにプロダクト化にこぎつけた。佐々木氏が「このプロダクトで収益を得ようとは考えていない」と話すように、基本的にすべてが無料で使える。むしろ、起業する障壁を低くし、SOHO/SMB、中小企業のバックオフィスをすべてクラウドで利用できるfreeeの強みへの動線としての存在が、この「会社設立freee」の存在意義だ。

「freeeとして、会社設立freeeからクラウド会計を利用してもらい、事業がスケールしたら、従業員を雇って給与計算も利用していただく。"ゆりかごから成長まで"支援できたらいいですね」(佐々木氏)

会社設立freeeはすでに利用できる。代表者氏名や会社登記簿上の住所など、さまざまな資料に必要な重複情報はすべて共通して記載し、印刷までサポートしてくれるため作業が簡略化されている。

また、ジャパンネット銀行と連携し、法人口座開設も支援。最初に入力した登記書類の内容をそのまま登録画面に反映してくれるため、大手銀行で煩雑になりがちな法人口座開設にまつわる無駄な作業も簡略化される。また、現在の法制度ではハンコが必ず必要となるため、実印作成についてもハンコヤドットコムと連携して注文できる。

スマートフォンでも作成が可能だ

横串で重複内容の転載を行い、電子公告や銀行、印鑑など、その他必要手続きなどもサポートしてくれる。freeeはここでマネタイズするのではなく、あくまでfreeeの会計ソフトや給与計算への入口として同ソフトの位置づけをとらえている