スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「Quick Charge 2.0」についてです。

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Quick Charge 2.0は、米Quallcommが開発したスマートフォン/タブレットの高速充電規格です。同規格に対応した端末(対応チップを搭載した端末)と充電器(ACアダプタ)を組み合わせて利用することにより、従来より高速に充電を行うことができます。

2015年6月現在、Quick Charge 2.0に対応するスマートフォンはAndroid端末のみです。2014年夏モデルから市場に投入されはじめ、auとソフトバンクでは同じ「Quick Charge 2.0」、NTTドコモでは「急速充電2」という名称で端末と充電器が展開されています。

USB 2.0/3.0の規格では、電圧は5V、電流は500mA(USB 2.0)と900mA(USB 3.0)が上限とされていますが、Quick Charge 2.0は電圧を9Vまたは12Vにすることで"時間あたりの電力"を増やします。電流を変えなくても、電圧を変えれば充電速度を高めることができるのです。

たとえば、1.8A出力可能なACアダプタがあるとします。従来方式では5V×1.8Aで9Wの出力が上限でしたが、電流が同じ1.8Aでも9Vならば16.2W、12Vならば21.6Wになります。この場合のW(ワット)は1秒あたりに流れる電力を意味しますから、時間あたりの電力が増すことがわかります。

なお、Quick Charge 2.0対応端末にはバッテリー前段に降圧回路が搭載されており、バッテリーに供給される電圧は4.2Vです。電圧を下げたぶんバッテリーに流れる電流は増えるため、充電速度がアップするのです。降圧は9V→4.2Vと12V→4.2Vだけでなく、5V→4.2Vに対しても行われますから、Quick Charge 2.0非対応の従来型充電器も利用できます。

Quick Charge 2.0対応の充電器も、9V/12V非対応の従来型端末で利用できます。充電開始時はUSBの規格上問題ない5Vを利用し、その後端末側がQuick Charge 2.0対応(9V/12V対応)であることを確認できれば、電圧を9V/12Vに切り替えて充電を再開するしくみです。

充電速度は端末の仕様にもよりますが、従来の充電方式よりおおむね20、30%ほど高速化されています。ただし、バッテリー容量上限に近づくと電流が減る仕様ですから、バッテリー残量が60%を超えるあたりから速度差は減ってきます。Quick Charge 2.0の強みが生きるのは、バッテリー残量が下限に近い状態からの急速充電と言っていいでしょう。

Quick Charge 2.0の急速充電を行う場合は、対応端末と対応充電器が必要です(写真はQuick Charge 2.0対応端末「SONY Xperia Z4」)