来場者の注目を集める「リアル形状検索」

6月24日~26日に東京ビッグサイトで開催されている世界最大級のものづくり専門展「第26回 設計・製造ソリューション展(DMS)」では、生産管理システムに関するものが多く見受けられた。今回はその中から、すでに欧米などでシェアをのばしている部品情報検索システム「PARTsolutions」を提供しているキャデナス・ウェブ・ツー・キャド(以下、CADENAS)のブースをレポートしよう。

ものづくりワールド2015 設計・製造ソリューション展 同社ブース

  まずブースを訪れると、実部品の山から同じ部品のペアを見つけ出すイベント「リアル形状検索」が注目を集めていた。実際に挑戦してみると、これがなかなかに難しい。スタッフの方からは「これを部品データの管理に置き換えて想像してみてください」とコメントをいただいたが、なるほど、カオス状態のファイルサーバを整頓する煩雑さや、欲しいデータがすぐに手に入らない設計者の苛立ちは容易に想像できる。

目を引いた「リアル形状検索」と、本稿でご紹介する「PARTsolutions」のパネル

このような部品データの管理や検索の課題を解決するのが、今回の展示のメインとなる部品情報管理システム「PARTsolutions」とのこと。ERPやPDMなどのシステムを統合し、形状検索をはじめとしたユニークな検索機能で、メーカー部品を含めた必要な情報にアクセスできる同製品について、ブースにて詳しい解説を受けることができた。

キャデナス・ウェブ・ツー・キャド株式会社 マーケティングチーム 高橋康祐

プロダクト管理の本場で成熟したシステム

同社マーケティングチームの高橋氏によれば、同システムが生まれた背景には、世界の大手ものづくり企業が社内システムの標準化やコスト削減を目指して、各社独自に行ってきたシステム開発への取り組みがあったという。プロダクト管理への意識が高いドイツをはじめとする欧米企業では、従来から部品標準化の促進や部品点数の削減、制作部品の再利用率向上、部署を横断した部品情報の見える化などの実現を求めて試行錯誤が繰り返されてきた。そんなものづくりの先端企業各社のノウハウを結集し、キャデナスが確立してきた膨大な部品メーカーのデータベースと融合する形で生まれたのが同システムだ。

設計現場の意見を受け止めて鍛え上げられたサービスだけに世界の一流ブランドからの評価も確固たるものがある。自動車業界ではポルシェ、コンシューマ・エレクトロニック業界ではブラウン、航空業界ではエアバス、工作機械ではトルンプ、鉄道業界ではSNCFなどで既に導入され、ほかにも工業プラント、造船、軍事など枚挙にいとまがなく、業界も多岐にわたっている。日本のトップメーカーの間でも採用が進んでおり、その度に国内特有の要望やグローバルに活用するために必要な要素をノウハウとして取り込み、さらに進化を続けているという。

世界各国の事例集、世界のものづくり大企業が並ぶ

設計と購買がつながることで生まれるメリット

では、これだけの企業に支持を受けているのは何故か。高橋氏によれば、“製品のトータルコストの70%が、開発段階で決定してしまう”という事実に向き合いソリューションを提示しているからだという。つまり同システムの真骨頂は、本来は後工程となる購買の視点も巻き込みつつ、コストが決定される設計段階において削減の意思決定を実現できる点にある。

製品のトータルコストの70%が、開発段階で決定してしまい、これが後々までコスト削減のハードルになる

ものづくりの流れにおいて、設計部門と購買部門の思惑は往々にして分断されてしまう。これは、ERPやPLMなどの管理システムが標準化されていないことが大きな要因だ。システムが連動していないため、採用実績や在庫情報、価格情報などを横断して把握することができず、情報の更新も他システムに反映されない。パーツ登録時の用語の不統一や人的ミスも発生しやすくなる。

これらの問題を解決するとしてCADENASが提唱するのが同システムだ。ERP、PLM、CADシステムの「楔」となることで、部品についてのIDと名称と各種情報が統合された「きれいなマスターデータベース」ができあがる。これにより、コスト決定に関わる情報が設計段階から見える化し、最適な部品選定や無駄な新規設計の防止、部品点数の低減につながる。またグローバル化の競争下においては、「生産国での調達は可能か?」「各工場でのストック状況は?」「調達価格は?」など“調達可能な部品/調達すべき部品”を正確に知ることでアドバンテージを得ていくことができるだろう。当然、設計自体の効率化や管理部門のシステムの簡素化、データの正確性の向上にも大きく貢献してくれる。

同システムを中心に、システム管理、開発・設計、製造、購買の各部門が統合すれば、設計段階でも購買の条件を考慮した部品選定が可能になる