声優として数多くの作品に出演するだけでなく、アーティストとしても多数の楽曲をリリースし、いわゆる"声優アーティスト"のさきがけとして高い人気を誇る林原めぐみが、歌手デビュー25周年を記念したアルバム「タイムカプセル」を2015年6月17日にリリースした。

6/17にリリースされた林原めぐみ「タイムカプセル」のジャケットイメージ

歌手としてスターチャイルドに所属する林原だが、今回の「タイムカプセル」は、歌手デビュー当初、スターチャイルド以外からリリースされた楽曲を集めた「初期ベスト盤」。さらに、1990年にリリースされたミニアルバム「PULSE」については、原曲だけでなく、新アレンジにて新規レコーディングを敢行。25年の歴史だけでなく、林原の今も体感できる、まさにファン感涙の作品となっている。

そこで今回は、「タイムカプセル」の発売にあたり、歌手デビュー25周年を振り返りつつ、林原自身が語ったメッセージを紹介しよう。

林原めぐみが語る「タイムカプセル」

――歌手活動25周年ということですが、この25年は長かったですか? 短かったですか?

林原めぐみ

林原めぐみ「長いとか短いとか、感覚的に表現するのは難しいのですが、すごく変化があったと思います。たとえば、携帯電話がなかったとか、ネットがなかったとか。チケットを予約するためにはぴあに電話を掛け捲らなければいけなかった。そういうアナログ的なこと、手に入れるためには努力するしかないんですよ。ちょっとした賢さとか、ちょっとした情報の先取りくらいでは何ひとつ渡り歩けない。25年前というのは、そういう時代だったと思います」

――たしかに25年前というとそういう時代でした。今では考えられないこともたくさんありますよね

林原「人を待つことに対してもう少し寛容だったと思いますし、たとえばデモテープというと本当にテープが届くわけですよ。ガラガラとたくさん(笑)。それをひとつひとつ聴くわけですけど、そんなムダの中にも喜びがあったような気がします。今はとても便利になって、とても速くなって、すごく快適になったはずなのに、どこかが寂しいのはなぜだろうって思うんですよ」

――そんな25年をあらためて振り返っていただきたいのですが、林原さんはもともと歌手として活動する気はなかったとお伺いしていますが

林原「そのとおりです(笑)。ちょうどその頃、『機動戦士ガンダム0080』というオリジナルビデオアニメーションがあったんですよ。当時はオリジナルの、オンエアには乗らないようなビデオ作品がたくさんあって、それを売るためのキャンペーンイベントがけっこう行われていたのですが、その際、主題歌を歌っていた椎名恵さんという歌手の方がスケジュール的にイベントに出られないということで、だったらヒロインの役をやっている子は歌えないのか? ということになり、じゃあテストをしてみようと。ちょうど40度くらい熱があったとんでもない日に、当時は護国寺にあったキングレコードの小さなスタジオに呼び出されまして、ゲホゲホと歌っていたのですが、それを聞きつけた大月(俊倫)さんが、何だかわからないけれど一曲作ろうと言い出したのがきっかけです(笑)」

――気がついたら歌うことになっていたという感じですね

林原「これは決して驕りではないのですが、その曲がある意味、業界的には照明弾みたいな感じになったんですよ。そして、ほかにもそういった照明弾を打ち上げる方が何人もいらっしゃって、"どうやら声優は歌えるらしい"と音楽業界が目をつけた。そんな時代ですね」

――スラップスティックといった声優バンドもありましたが、その当時は、そこまで声優=歌というイメージではなかったですよね

林原「ちょうど私がデビューした頃は、業界そのものが新人を望んでいた時代でもありました。声優はアルバイト的な仕事で、あくまでも自分は役者である。そんな先輩方がいらっしゃった時代から、養成所出身の、芝居の板なんて踏んだこともないような人間が声をあてるような時代。そんな過渡期であり、良くも悪くもその最初だったんだと思います」