【レポート】

弁護士に聞く、裁判で離婚できる原因とは - セックスレスは? メシマズは?

今や離婚は珍しくなくなりましたね。厚労省の統計では昨年の離婚件数は22万件と推計され、実に2分22秒に1組もの夫婦が離婚している計算になります。離婚経験者や今離婚を考えて悩んでいる方もたくさんおられると思います。

離婚の理由はさまざまですが、お互いに離婚に納得して離婚届を出す協議離婚なら、どんな理由であれ特に問題になりません。でも、相手が離婚に応じないと話は別です。というのも、相手が応じなくても裁判で離婚を請求できる離婚原因は、民法770条で5つに限られています。

それは、(1)不貞行為、つまり配偶者以外の異性と自由な意思で肉体関係を持ったとき、(2)悪意の遺棄、つまり正当な理由がなく夫婦の同居・協力・扶助義務を果たさないとき、(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないとき、(4)配偶者が強度の精神病で回復の見込みがないとき、(5)婚姻を継続し難い重大な事由があるとき、です。

(1)から(4)にズバリあてはまらない理由は、(5)婚姻を継続し難い重大な事由、つまり婚姻関係が破綻して婚姻の本質に応じた共同生活の回復見込みがない状態とされると離婚原因になります。

実際の離婚事件でもいろいろな離婚したい理由が主張されるので、問題になるのが多いのも(5)ですが、どのような理由なら離婚原因となるのでしょうか。

「セックスレス」は離婚原因になる?

まず、男性女性問わずお悩みの多いセックスレス。夫婦関係の悪化や浮気・不倫につながることも多いですが、性生活は法律の世界でも結婚の重要な要素と考えられています。もちろん数回応じなかったことくらいでは離婚はできません。でも、セックスレスの原因、態様、期間にもよりますが、正当な理由がない長期間のセックスレスは離婚原因になることがあります。

実際、裁判例で性交渉できないことを告げずに結婚し結婚当初から性交渉がない、夫がAVにハマって自慰行為にふけったり、ポルノ雑誌にハマったり、同性愛者で妻との性交渉を拒否したなどのケースで離婚が認められました。

逆に、昼夜を問わず性交渉が強要されるなど、通常と比べて著しく強い性欲がある異常性欲の場合も、離婚原因となりえます。また、性的趣味・嗜好の面では、電気をつけて靴下を履いた状態での性交渉を求めて離婚が認められたケースもあり、相手が応じがたいことを求め続けると離婚原因になることもあります。

性の問題はなかなか口にしにくいですが、埋めがたい溝ができる前に、相手の意向を尊重しながら夫婦間でしっかり話し合うことが大切です。

「夫が育児・家事をしない」は離婚原因になる?

他には、妻の不満に多い夫が育児・家事をしないこと、これは夫が夫婦間の協力義務を怠っているので、度が過ぎると(2)悪意の遺棄や他の理由とあわせて(5)婚姻を継続し難い重大な事由になることがあります。

裁判例では、妻が子供の入院や育児、家事で多忙だったのに、夫が仕事を理由に家事育児を拒否し、結婚生活に失望した妻が別居を望んだことにつき、夫婦を結び付ける精神的絆は失われていたとして離婚を認めたものがあります。

一方、離婚が難しいのは、「夫のリストラ」「夫の給料が上がらない」「妻の料理がまずい」「妻が実はアイドルオタクだった」などといった理由です。経済的・精神的に完全に満足でなくても一般水準の生活が営めるレベルや、合理的な時間や出費の範囲で自由に趣味を楽しむレベルなら離婚はできません。

しかし、これらが原因となってけんかが絶えず別居になったり、リストラ夫が再就職せずに怠けた生活を続けたり真面目に働かない、無断で収入に見合わない多額のお金を趣味に費やして生活が苦しい、家庭を顧みず改善しないなどの場合は離婚原因になる可能性があります。

「性格の不一致」は離婚原因になる?

また、よく言われる性格の不一致も、そもそもお互いが譲歩しあって調和を目指すものなので、それだけでは離婚原因とは認められにくいです。

ただ、お互いの我が強すぎて離婚を認めたまれな裁判例もあります。人一倍几帳面で清潔好きの外科医の夫が、家事などがルーズで融通の利かない言動をする小児科医の妻に我慢できなかったというケースでは、同居3年、別居5年の間、けんかが絶えなかったこともあり、二人の性格や言動を変えるのは難しく、お互いの妥協しがたい性格の違いから継続的な結婚生活は極めて困難で、夫婦関係は破綻しているとして離婚を認めました。

他にも、DV、重い病気や障害、過度の宗教活動、多額の借金・浪費、アルコール中毒、犯罪行為・服役、親族との不和など、いろいろなことが離婚原因になりえます。

ただ、離婚が認められるかは、離婚原因や経緯のほか、別居・結婚期間、結婚中の双方の言動、子供の有無や年齢、離婚意思の有無や強さ、健康状況、資産状況、年齢、性格など個別の事情にもよりケース・バイ・ケースなので、個別のご相談をお勧めします。

なお、離婚したくてもあえて自分で離婚原因を作るのはNGです。離婚原因を作った配偶者からの離婚請求は、別居期間や子供の状況、経済状況などの事情にもよりますが、原則として認められません。

どんな夫婦も、長い人生の中でぶつかり合うことはたくさんあります。離婚になる前に、まずは時間をかけて冷静に話し合い、お互いに譲歩、尊重しあっていくことも円満な結婚生活のためには大切です。

それでもうまくいかないときは、個別の事情次第で離婚が認められるかの結論は変わってきますので、離婚を考えている方も離婚を求められている方も一人で悩まず、包み隠さずに弁護士にご相談くださいね。

※写真は本文と関係ありません

<著者プロフィール>
正木裕美(まさきひろみ)
愛知県出身。愛知県弁護士会所属。男女トラブルをはじめ、ストーカー被害や薬物問題、ネット犯罪などの刑事事件、労働トラブルなどを得意分野として多く扱う。身内の医療過誤から弁護士の道へと進む。2012年には衆議院選挙に愛知7区より日本未来の党の公認候補として出馬し、「衆院選候補者ナンバーワン美女」とインターネットや夕刊紙で大きな話題を呼んだ。

ブログ「弁護士正木裕美のまっさき通信」

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