感圧タッチトラックパッドを試す

今度の15インチモデル、幅358.9×奥行き247.1×高さ18mmというユニボディのデザインに変更はなく、外観はほぼ同じ。重量は20gアップ(15インチモデル)しているが、2880×1800ピクセルのIPS液晶を採用したRetinaディスプレイも変わりなく、携帯性/機動力に変わりはないと言っていいだろう。

繰り返しになるが、最大の変更点はやはり「感圧タッチトラックパッド」の採用だ。3月発表のMacBookおよびMacBook Pro 13インチを未導入の身としては、この新デバイスにじっくり触れることができる絶好の機会、入念にイジりまわすことにした。

その前に、感圧タッチトラックパッドについておさらいしておこう。かんたんにいえば、従来のマルチタッチトラックパッドに圧力感知機能がくわわり、電磁石を用いたバイブレータの一種「タプティック・エンジン」で指先に振動をフィードバックする機構を追加したデバイスだが、構造は大きく変化している。

従来のマルチタッチトラックパッドは、押すと手前が沈み込む構造(ダイビングボード)を採用しており、沈み込むための"あそび"のスペースが必要だったが、感圧タッチトラックパッドにはない。圧力を感知する感圧センサー4基を設置し、圧力を感知するとタプティック・エンジンを振動させ指先に押したような感覚を知らせるしくみ。言ってしまえば"疑似クリック"だ。

パッド自体に可動部はないため"あそび"を設ける必要もなく、そのぶんスペースの節約が可能になった。直接の因果関係は不明だが、Mid 2015でバッテリー容量が増えたことと無縁ではないだろう。

そのクリック感だが、従来のマルチタッチトラックパッドとほとんど変わらない。反応は2段階あり、最初に押し込んだとき(クリック)、そのまま押し込んだとき(プレス)それぞれに指先に感触が伝わる。軽くクリックすると"コリッ"、強く押し込むと"コリコリッ"とでも言えばいいだろうか。これがタプティック・エンジンの振動なのだということは頭では理解できても、本当は可動部があるのでは? と思わせるほど自然な反応だ。

タプティック・エンジンといえばApple Watchの採用でも知られているが、印象は多少異なる。Apple Watchの場合、クリックはなくプレスだけの1段階。手首に装着するため振動がデバイス全体に伝わることもあり、"コリッ"ではなく"ブルッ"に近い。それを思えば、感圧トラックパッドの疑似クリックがいかに"実クリック"に近い味付けを施されているかがわかる。

クリック感がタプティック・エンジンの働きによるものという証明はかんたんにできる。電気的に遮断する、つまりMacBook Proをシャットダウンすればいいのだ。実際、シャットダウン後にクリックを繰り返してみたところ、確かに指先に伝わるものはない。パッドの隅々まで均一にあったクリック感が、きれいに消えた。

ところで、感圧センサーが感知する圧力レベルはそれほど多くはないようだ。「プレビュー」の署名機能で、毛筆風になるよう指先に強弱を付けながら文字を書いてみたが、止めや払いはそれらしくならなかった。押す強さに応じて線は細く/太くなるのだが、変化の幅は小さく、たっぷり"ためて"から払うような筆跡にはならない。App Storeで感圧センサー対応アプリを探しても見つからず、プレビューの署名機能でしか試せていないが、手書きテイストは実現できても毛筆テイストは難しそうだ。

感圧タッチトラックパッドには手前が沈み込む構造はなく、感圧センサーが圧力を感知するとタプティック・エンジン振動させ"疑似クリック"を生み出す

"疑似クリック"の反応は2段階あり、最初に押し込んだとき、そのまま押し込んだとき、それぞれに指先に感触が伝わる

システム環境設定「トラックパッド」パネルには、感圧タッチトラックパッド向けの項目が追加されている

プレビューの署名機能で文字を書いてみたが、感知できる圧力レベルは多くないようで、毛筆テイストにはならなかった

3月に先行発表された13インチモデルは、CPUにBroadwell世代のCore i5/i7を採用、内蔵GPUもIntel Iris Graphics 6100に更新されるなど今回の15インチモデルの先を行く部分もあるが、AMD Radeon R9 M370X搭載モデルは外部ディスプレイに最大5K(5120×2880/60Hz)で出力できるという他にない特徴がある。映像重視のユーザーならば、このパワフルなディスクリートGPUを積む上位モデルを選んだほうが後の憂いは少ないだろう。

気になるのは価格で、今回は下位モデルが22万4,800円、上位モデルが28万2,800円(Apple Store価格)となった。15%以上の値上げと映るが、大きく円安に振れた最近の為替水準からすると理不尽なわけではなく、SSDのスループット向上やバッテリーの改善、上位モデルではディスクリートGPUの性能アップというメリットもある。敢えて15インチを選ぼうというユーザにとっては、"欲しいときが買いどき"というMacの法則にかなうニューモデルといえる。

ついにMacBook Proの全モデルに搭載されたタプティック・エンジン。OS XのUI設計にも影響を与えることだろう

製品名 15インチMacBook Pro Retinaディスプレイモデル:2.2GHz 15インチMacBook Pro Retinaディスプレイモデル:2.5GHz
CPU Core i7-4770HQ 2.2GHz/4コア Core i7-4870HQ 2.5GHz/4コア
Turboost時 最大3.4GHz 最大3.7GHz
L3キャッシュ 6MB
メモリ 16GB(1600MHz DDR3L)
ディスプレイ 15.4型 IPS液晶(2880×1800ピクセル/220ppi)
グラフィックス Intel Iris Pro Graphics Intel Iris Pro Graphics、AMD Radeon R9 M370X(2GB GDDR5)
外部ディスプレイ解像度 最大4096×2160/24Hz(HDMI) 最大5120x2880(Mini Displayport)
デュアルディスプレイ/ビデオミラーリング 最大2台/3840x2160
ストレージ 256GB SSD 512GB SSD
通信機能 無線LAN(IEEE 802.11ac/a/b/g/n対応)
インターフェイス USB 3.0×2、Thunderbolt 2×2、HDMI×1、FaceTime HDカメラ(720p)、Bluetooth 4.0
カードスロット SDXC×1
サウンド機能 ステレオスピーカー、デュアルマイクロホン、ステレオヘッドホン兼オーディオライン出力(デジタル/アナログ)
本体サイズ/重量 幅358.9×奥行き247.1×高さ18mm/2.04kg
バッテリー駆動時間 最長9時間(最大30日間のスタンバイ)
OS OS X Yosemite(v10.10.3)
Apple Store価格 22万4,800円 28万2,800円