先日アップルが発表した「Apple Music」では、ユーザーのライブラリをクラウド上に保管する機能が提供される。ところが、同じような機能をアップル自身が「iTunes Match」として提供している。この2つの違いは一体何なのだろうか?

iTunes Matchは「ライブラリのクラウド化」がポイント

iTunes Matchは、日本では2014年5月に開始されたサービスだ。価格は年額3,980円。このサービスを一言で説明すると「iTunesライブラリをクラウドに置き換える」ものだ。

iTunes MatchはパソコンのiTunesのライブラリをクラウドにアップロードする機能だ

通常、iTunesのライブラリはパソコンのローカルストレージに保存され、ここからiPodやiPhoneにコピーして視聴するスタイルだった。さらにホームシェアリングによって、家の中の5台までのパソコンやApple TV、iOS機器とライブラリを共有して、ストリーミング再生したり、ローカルにファイルをコピーすることもできた。

このスタイルはiPod登場時から長年よく機能してきたのだが、最近は音楽再生もスマートフォンが中心となって、フラッシュメモリの使い道が音楽以外にアプリや写真、ファイルにも割かねばならなくなり、ライブラリのすべてを格納できないケースも増えてきた。幸い回線速度も高速化しており、クラウド側のストレージ容量も増えたことから、ライブラリをクラウドにコピーして、一括で管理すればいい、というのがiTunes Matchの考え方だ。こうすれば、ユーザーのデバイスの容量は音楽向けに使わずに済むわけだ。

iTunes Matchではユーザーがリッピングした曲も、iTunes Storeで購入した曲もすべてアップロードされる。このときiTunes Storeで売っている曲なら、いちいちアップロードしなくともiTunes Store用として収蔵されたデータにアクセスさせればいいし、ユーザーがリッピングしたデータでも、iTunes Storeで扱っているのと同じアルバム・同じ曲だと認識すれば、元のデータが低ビットレートでリッピングされていた場合でも、iTunes Storeで販売されているのと同じ256kbpsの高音質データと差し替えてしまう。こうして、アップル側のストレージは最小限の消費で済むようになっている。

ユーザーがアップロードしたデータの出処までは問われないため、違法に入手したデータでもiTunes Storeで販売されているのと同じ正規のデータに変わってしまうため「ロンダリング」とも言われたが、有料サービスのため、レコード会社には包括契約的に一定額が支払われているのではないかと推測される。違法コピーと戦うよりは、合法ユーザーにしてしまおう、というわけだ。

iTunes Matchでは、同じApple ID、iTunes Storeアカウントを使っている機器10台まででライブラリにアクセスして再生できる。クラウド側の曲はストリーミング再生もできるし、必要に応じてローカルにコピーすることもできる。コピーした曲は前述の通り256kbpsになっている。もしiTunes Matchを解約すると、購入した曲以外はクラウドからダウンロードできなくなるので、事前にすべてダウンロードしておくといい。