ユーザーだけではない、WWDCに集まる開発者も若い!

今年のWWDC基調講演は、ここ数年のAppleの基調講演では最長の2時間24分だった。が、それでも足りなかったと思えるぐらい盛りだくさんで、ビッグサプライズはなかったものの、同社の安定した進化がIT・テクノロジー産業の成長を促すと納得させる内容だった。会場の垂れ幕には「変化の震源地」と書かれていたが、そのメッセージに相応しい基調講演になった。

Tim Cook氏が最初に示した今年のWWDC参加者のデータによると、初参加者が全体の80%。奨学プログラムで参加する12歳が最年少である。これらの数字はApple製品に関わる開発者の拡大、そして若返りを示す。米国ではティーンエイジャーや学生を中心とした若い層の支持がiPhoneやMacの好調な売れ行きにつながっているが、そうした傾向が開発者コミュニティにも見られるのがAppleの大きな強みになっている。

26回目を迎えたWWDC、参加希望者が多すぎてチケットが抽選で販売されているにもかかわらず、初参加率は80%。この割合がiOS・OS Xアプリ開発者の広がりを物語っている

続いてCook氏は、クリーブランド・インディアンスのBrandon Moss選手の「100号ボール身代金事件」を話題にした。Moss選手の100号ホームランボールを持っているという人物からMoss選手に「オレたちがこれらのアイテムを手にしたら、おまえはボールを取り戻せる」というメッセージが送られて話題になった事件だ。

100号ホームランボールを物質(ものじち)にとられ、欲しいものリストを送りつけられたBrandon Moss選手。リストには「Z.Mac-iPhone 6」「JB-Apple Watch」というようにApple製品ばかりずらり

実はこれ、ブルペンに飛び込んだホームランボールを確保したチームメートのいたずらである。たわいもないジョークだが、脅迫メッセージに書かれた欲しいものリストが全てApple製品だったから、Appleが反応し、同社が"身代品"支払いの肩代わりを名乗り出た。Moss選手はボールを取り戻し、チームメートはApple製品をゲット、AppleはWWDCで同社の製品の人気ぶりをアピールできた。みんなハッピーというわけだ。

いきなり開発者とは関係のない話に飛んだが、考えてみると関わる人すべてをハッピーにするというのは、開発者やエンドユーザーの満足がAppleの成長につながるという同社の姿勢を思わせる。このWWDCで、Appleは集まった開発者にApp Storeの1000億ダウンロード達成を報告した。同ストアでアプリを販売する開発者への支払い額の累計は300億ドルに達したという。

今回のキーノートは「つかみ」が良好で、会場に集まった開発者をほど良く盛り上げた状態で、OS X、iOS、そしてwatchOSの次期メジャーアップグレードを紹介する本編へと突入した。

通常Appleの基調講演では、新しくオープンしたApple Storeなどを冒頭で紹介するが、OS X、iOS、watchOSの新版を発表する今回は長丁場になるため、すぐに本編へ