【レポート】

新入生全員にiPad 500台を貸与。生徒に気づきを促す、桐蔭学園が実践するICT教育への挑戦

文科省のビジョンを受け、中学1年の全生徒にiPadを貸与

桐蔭学園 中学校 男子部 外観

横浜市青葉区にある桐蔭学園は、自然豊かで広大なキャンパスに、幼稚部から小中高校、大学までを有する総合私立学校だ。県内屈指の進学校であるとともに、スポーツも盛んであり、野球、サッカー、ラグビー、陸上など様々な競技において全国屈指の強豪校としてその名を轟かせている。そんな文武両道の校風を持つ同学園では、ICT教育の一貫として、今年4月に入学した中学校と中等教育学校1年の全生徒500人を対象にiPadを貸与し、授業で活用している。生徒への貸与完了後には、授業を行う教員にもiPad140台を配布。現在、計640台のiPadがICT教育向けに稼動しているのである。

桐蔭学園のiPad導入は、文部科学省が2011年に教育の情報化に関する総合的な推進方針として発表した、「教育の情報化ビジョン」を受けてのものだ。このビジョンでは、2020年を目標にすべての児童生徒に対し1人1台のタブレット端末を導入することが掲げられているのである。

今回の取り組みを主導している同学園 中学校男子部の教諭、山口大輔氏(技術科担当)は、「教育の情報化ビジョンでは、一斉学習や個別学習に加え、協働学習が行えるようにすることが示されています。そうした環境を実現するために必要なツールとして、iPadを導入しました」と説明する。

そうした中、タブレット端末を選定する上で特に重要視したのが、バッテリーの稼働時間だ。生徒にはiPadを自宅に持ち帰ることも許可しているが、学校にいる間は充電する必要がないよう、少なくとも午前8時から午後3時までは連続して稼動可能であることが求められたのである。

まずOSを問わずに、Windowsタブレット、Android端末、iOS端末、Chromebookと検討した結果、iOS端末に決定。続いてiOS端末の種類については、前述のバッテリー容量に加えて、操作性やメモリ容量、画面の大きさなど様々な条件で絞っていった結果、最終的に「iPad Air 2」のWi-Fi 64Gバイトモデルの導入が決まった。導入端末の検討に当たって、端末手配は有隣堂に、端末のセキュリティ・管理面はアイキューブドシステムズに相談しながら検討したと言う。

続いてシステムの中核を成すアプリケーションとして選ばれたのが、アイキューブドシステムズのMDMサービス「CLOMO MDM」をはじめ、デジタルアーツのスマートデバイス向けウェブフィルタリングツール「i-FILTERブラウザー&クラウド」、タブレット向け授業支援アプリケーション「ロイロノート・スクール」である。他にも、Googleの各種アプリケーションやドキュメント作成、プレゼンテーション、動画作成アプリケーションが導入されている。

生徒の解答が瞬時に共有

このうちロイロノート・スクールは、協働学習を実施する際の要となっている。授業中に発せられた生徒からの様々な意見や質問をまとめて表示したり、それらに対する教師からのコメントや解答を共有したりと、柔軟なコミュニケーションを実現しているのである。またオフライン機能が充実している点も、通信環境に左右されず重宝しているようだ。

続いて、i-FILTERブラウザー&クラウドによって、生徒がiPadを自宅に持ち帰っても、学校から貸与された教材端末としてふさわしいWebサイトのみを閲覧できるよう、フィルタリングを行っている。(iPad の通常ブラウザアプリ(Safari)は、CLOMO MDM を通じて利用できないように設定している)

「校内であればファイアウォールでアクセスを制限できますが、自宅からではその管理外となってしまいます。とはいえ自宅で個別学習が行える環境も必要なので、高度なフィルタリング機能を備えたツールを選びました」(山口氏)

ICT教育に欠かせないMDMの条件とは

そして、生徒に貸与するiPadの総合的な管理のために導入されたのがCLOMO MDMである。CLOMO MDM は、授業に必要のない機能を制限するとともに、授業で使用するアプリケーションの配信・削除などに利用されている。

桐蔭学園 中学校 男子部 教諭 山口大輔氏(技術科担当)

山口氏は言う。「今回は500台での利用環境ですが、将来的には高校までタブレット端末を導入することも視野に入れています。そうなると膨大な数の端末から大量のアクセスが発生することが想定されるので、大規模な環境でも確実かつ安定して稼動するMDMサービスというのが必須条件でした。結果、大企業での導入実績とノウハウが豊富なアイキューブドシステムズのサービスが現実的だろうと判断し、CLOMO MDMに決定しました」

システムの導入が決まると、ベータ版のテスト段階からアイキューブドシステムズとの間で頻繁なやりとりが行われた。

「非常に多機能なMDMということもあって、サポートセンターにはよく電話やメールでコンタクトをとっていました。対応がとても素早く、適確な回答をもらうことができたので、我々の使い方に合わせた環境を構築することができました」

CLOMO MDM の管理画面

CLOMO MDM ならではの機能が大きな効果を発揮したケースも既にいくつか発生しているという。例えば、ある生徒がMDMの構成プロファイルを削除してしまったところ、学校が配布したアプリが自動削除されると同時にその情報が管理者に通知され、即座に対応を行ったという出来事があった。

「MDMの構成プロファイルは削除不可にも設定できますが、あえて削除された時点で端末から授業に必要なすべてのアプリが消えるようにしています。そうすることで、削除した子どもたちはiPadが使えなくなり不利益を実感し、やっていいことと、やってはいけないことを学ぶことにつながるのです。また我々も、生徒たちがどこまで端末を操作することができるのか把握することができるので、なぜやってはいけないかということを教えることが可能になります。“危ない使い方もできる道具だから生徒には持たせない”では教育とはいえません。どういう使い方をしたら危ないのかをしっかりと教えることもまた教育なのです。そうした意味でも、CLOMO MDMはICT教育に極めて有益なツールとなっています」(山口氏)

これまでの成果などを受けて、桐蔭学園では今後、iPadの導入を拡大していく構えだ。

「今回、CLOMO MDMやi-FILTERブラウザー&クラウド、ロイロノート・スクールなど、アプリケーションのおかげで生徒が学びやすい環境を整えることができたという手応えを感じています。これからは、来年度に入学する生徒への端末の貸与をはじめ、高校を含めた他学年での取り組みなどについてICT教育委員会で検討していきます。子どもたちの豊かな発想や鋭い着眼点に十分に対応できるようなICT教育のあり方を、実践を通じて探っていきたいですね」と、山口氏は抱負を述べた。



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