日立アプライアンスは6月9日、過熱水蒸気オーブンレンジ「ヘルシーシェフ」シリーズの新モデル「MRO-RY3000」を発表した。今回のモデルチェンジでは、加熱ムラを解消する「Wスキャン」システムを搭載。また、調理中の庫内を確認しやすい「明るい庫内」も新たに採用している。発売は7月中旬で、推定市場価格は税別150,000円前後だ。

ヘルシーシェフの新モデル「MRO-RY3000」。メタリックレッドとシルバーの2色展開

最大の課題は「あたため・解凍ムラ」

国内オーブンレンジの動向について語る、日立アプライアンス取締役 家電環境機器事業部長の松田美智也氏

製品発表会には、日立アプライアンス 取締役 家電環境機器事業部長 松田美智也氏が登壇。製品開発の背景と新機能について説明した。松田氏によれば、2015年度のオーブンレンジの需要は、前年度比3%増の約256万台(予測)。その中でも高価格帯の「プレミアム機種」は、ここ数年の安定した需要から、2015年度もオーブンレンジ全体の約1割を占めると予想されている。

日立アプライアンスの調査によれば、エントリーモデルから多機能モデルまで、どのユーザー層もオーブンレンジでよく利用するのは「あたため」と「解凍」機能だという。よく利用されている一方で、オーブンレンジの不満点の筆頭に挙げられたのは、「解凍ムラ」と「あたためムラ」だった。この不満点は特に、購入時に製品への期待値が高いこともあってか、「プレミアム機種」のユーザーになるほど高い傾向がある。そこで、同社は「加熱ムラ」を解消したプレミアムなオーブンレンジを開発するに至ったという。

オーブンレンジで使用している上位8機能のうち、7機能が「あたため」「解凍」に相当するもかかわらず、「不満点」のトップ2が「あたため」「解凍」に関するものという結果に……

2種類のセンサーで加熱ムラを解消!

従来モデルは、庫内底面3カ所で食材の重量や位置を把握する「トリプル重量スキャナー」方式を採用していた。食材の重さに合わせて加熱時間などを算出するというものだ。一方、今回発表された新モデルでは、このトリプル重量スキャナーに加えて、食材の表面温度を計測する「センター赤外線スキャナー」を搭載した「Wスキャン」方式を採用した。食材重量と食材温度という2つの要素をもとに加熱を制御することで、ムラを解消できるとしている。

食材の重量と位置を把握することで、最適な加熱時間を計算する「トリプル重量スキャナー」。オーブンレンジ底面3か所にある重量スキャナーで、食材の重量を計測する

庫内天井の中央に温度を計測する赤外線スキャナーを配置。重さだけでなく、食材の温度も把握して加熱時間をコントロールできるようになった

温度センサーは、庫内を8×15ブロックに120分割して、細かいエリアごとに庫内温度を計測する。発表会では温度センシングする様子を、実際に確認する実験もあった。庫内に手を入れると、MRO-RY3000が手の温度を感知している様子が、横のモニターで確認できる

加熱ムラが発生しやすい解凍メニューでは、前述したWスキャンに加え、「ひき肉」「ブロック肉」など食材の種類を選択する。食材の特性や温度に合わせた加熱ができるため、解凍時にありがちな「食材の一部だけが煮えてしまう」「解凍したはずが内部はカチコチ」といった失敗を解消できる。

ひき肉やブロック肉など、食材の種類を選択することで、特性に合わせた解凍を行う。「冷凍庫から出したばかり」「冷蔵庫で半解凍済み」など食材の温度や、食材の重さもWスキャンでチェックする

会場では、実際に固く凍ったひき肉を解凍する実演も。解凍メニューをスタートして数分で、カチコチに凍っていたひき肉も手でほぐれるほどに。肉をほぐして確認してみると、内部には火が通っていなかった

Wスキャンは解凍だけではなく、飲み物を温める際にも力を発揮する。会場では、異なる容器に日本酒を入れて加熱する実験も行った。徳利に入れた日本酒は「ぬる燗(45℃)」メニュー、マグカップに入れた日本酒は「ひと肌(35℃)」で加熱。結果は徳利が45℃ぴったり、マグカップも33℃とほぼ設定通りの温度に温まった

Wスキャンのおかげで、MRO-RY3000では「温度設定コース」も実現した。これは、自分の指定した温度まで食材を加熱する機能だ。-10℃から50℃まで、5℃単位で温度を設定可能だ。アイスクリームをほどよいやわらかさまで解凍したり、離乳食を温めたり、チョコレートを溶かしたりといった用途に利用できる。

庫内灯は明るさ約8倍にパワーアップ

MRO-RY3000は、調理中の食材の見やすさでも進化した。庫内ライトに、従来比約8倍の照度を実現するLED×2灯を採用。また、一般的に庫内は黒く塗装されることが多いが、MRO-RY3000では側面に白色のシリコン塗装を施した。白色の壁面にすると、調理中の食材を確認しやすいほか、汚れも目立ちやすい。そのため「汚れを放置して取れなくなった」という失敗も軽減できるという。また、庫内を見るための窓の面積は従来モデルより約23%拡大。窓が大きくなったおかげで、より庫内が見やすい。

庫内灯のLEDは13ルクスから105ルクスに照度がパワーアップ。庫内壁面を白色に塗装したことで、さらに視認性を高めている

庫内を確認できる窓のサイズも、366×156mmから372×189mmに大きくなった

会場には、従来モデルとの明るさのちがいを表す展示も。左が従来モデル、右が新モデルの「MRO-RY3000」だ。明るさのちがいは歴然

庫内側面も白色に塗装して、あえて汚れが目立ちやすいようにした。シリコン塗装で、軽く拭くだけで汚れが落ちるのも特徴だ

全ラインナップがWスキャン機能を搭載

発表会では、普及モデルに位置付けられる「MRO-RY3000」がメインで説明されたが、そのほか「MRO-RV2000」と「MRO-RBK5000」の2機種も発表された。MRO-RV2000はスチームグリル機能非搭載のエントリーモデルで、MRO-RBK5000はベーカリー機能を搭載した最上位モデルとなる。両モデルともWスキャン機能や「明るい庫内」に対応。また、33Lの庫内容量を確保している。推定市場価格はMRO-RV2000が120,000円前後、MRO-RBK5000が180,000円前後だ(いずれも税別)。

今回発表されたヘルシーシェフ。左がスチームグリル非搭載のMRO-RV2000。中央2機種がMRO-RY3000。右がベーカリー機能を搭載したMRO-RBK5000だ