1995年にリリースされ今年で20周年を迎える3D CADソフトウェアSOLIDWORKS。全世界のライセンス数は270万を超え、日本国内においても多くのユーザーを有している。過日2015年5月20日、飯田橋にて開催された「SOLIDWORKS Solution Seminar 2015 in Tokyo」では、同ソフト20周年の先を見据えた新たなる展開の発表と、今後のものづくりにおける重要なキーワードである「デザインマネジメント」についての講演、そしてそれを実践するための手法を学ぶワークショップなどが行われた。本記事では、多種多彩な催しが行われた同セミナーの模様を紹介する。

20年目を迎えるSOLIDWORKSの新たな展開

まず冒頭の挨拶として、ソリッドワークス・ジャパン株式会社 執行役員 山崎 究氏による、SOLIDWORKSの現状と、今後の展開についての解説が行われた。山崎氏によると同ソフトのライセンス数は「2015年末には300万を超えるだろう」とのこと。また、同ソフトは教育市場において大きな評価を受けており、全世界で2.8万校、日本国内では760校の教育機関が同ソフトを導入しているとも語った。

ソリッドワークス・ジャパン株式会社 執行役員 山崎 究氏

また、2015年2月8日から11日までの間、米国アリゾナ州フェニックスにて開催され、のべ6千人の参加者を集めた「SOLIDWORKS WORLD 2015」の模様を、写真を交えて解説。世界中から同ソフトのユーザーや代理店が集まる毎年恒例の一大イベントの話だけに、来場者も聞き入っていた。

「ラブが新しい価値を生み出す」株式会社エムテド 田子 學氏による基調講演

午前中におこなわれた基調講演には、幅広い産業分野においてコンセプトメイキングからプロダクトアウトまでをトータルで行う、日本においては数少ない「デザインマネジメント」を実践するデザイナーの一人である、株式会社エムテド 代表取締役 田子 學氏が登壇。「デザインマネジメント ~一気通貫のモノづくり~」と題して、これから求められるものづくりの考え方について、次のように語った。

株式会社エムテド 代表取締役 田子 學氏

「現在はモノにあふれています。ほとんどの人は必要なものを手に入れています。ニーズという観点は、ほぼ崩壊している状況です。そこに、単に色や形を変えただけの商品を投入しても売れません。生まれてくるストーリーに共感し、欲しいという気持ちが喚起される、そんな商品が売れる時代です。だからこそ、最初からブランドを意識して、見た目の造形部分のみにとらわれず、ものづくりを一つのシステムとして設計することが重要となります。そして、それこそがデザインマネジメントなのです」(田子氏)

「デザインマネジメントには、ロジック、センス、ラブの3要素が欠かせません。ビジネスに寄ってしまうと、どうしてもラブの部分が欠落してしまいがちになります。でも、本来ものづくりに一番大切なものは、このラブなのです。日本には、まだまだおもしろい技術や研究がたくさんありますが、それを掘り起こし産業に生かすためには、デザイナーのラブが欠かせません」(田子氏)とも語った。

SOLIDWORKSをフルに活用する多彩なセッションも開催

ソリッドワークス・ジャパン株式会社 営業技術部 佐藤 顕司氏

午後の部では、ソリッドワークス・ジャパン株式会社、および販売代理店である株式大塚商会より、SOLIDWORKSユーザーに向けた多種多様なノウハウやサービスを紹介する以下4つのセッションが開催された。
(1)「SOLIDWORKSだから実現できる、3Dデータの全社活用」(ソリッドワークス・ジャパン株式会社 営業技術部 佐藤 顕司氏)
(2)バージョンアップだけじゃない!使わなきゃ損するサブスクリプションサービス徹底活用!(株式会社大塚商会)
(3)SOLIDWORKSの活用を促進するExcelを活用した設計業務の効率化(株式会社大塚商会)
(4)3D設計で、さらに効果を出す「SOLIDWORKSの設計検証手法」を身に付けよう(株式会社大塚商会)

(1) では、SOLIDWORKS製品群の連想性を利用した活用方法とその効果を具体的に紹介。企業にとって大切な資源となる3Dデータを、設計部門のみならず、社内外でも活用するための環境づくりについて解説。
(2) では、バージョンアップ以外にも様々な場面で活用できる、大塚商会が同社のサポートサービス「たよれーる」を通して提供する、サブスクリプションサービスについて解説。加入者に対して無償で提供している大塚商会オリジナルツール集「SOLIDWORKS Collection Kit」など、さまざまな特典サービスが紹介された。
(3) では、SOLIDWORKSとMicrosoft Excelを連携させ、設計業務を自動化して手間と時間の効率化をはかるテンプレート設計手法について解説。また、新たに開発した「テンプレート設計スタートアップサービス」についても紹介された。
(4) では、フロントローディングを実現するために必要となる、「SOLIDWORKSの設計検証手法」を紹介。設計の各フェーズで実施すべき検証内容、具体的な検証方法やテクニックを、わかりやすく解説していた。

新たな価値を生み出すための思考術を学ぶワークショップ

別会場では、基調講演で紹介された「デザインマネジメント」の思考を実践するためのワークショップ「価値を生み出すプロトタイピング ~技術を価値へと転換する~」が開催された。

まずは、講師である慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 特任講師 富田 欣和氏、および特任助教 渡辺 今日子氏によって、新たな価値を生み出すために有効となる「イノベーティブ思考法」について解説が行われた後、数名のグループとなった参加者が、それぞれ「新しい価値」を生み出す考え方についてグループワークを重ねていった。田子氏の言葉にもあったとおり、今までと同じやり方でモノを作っても売れない時代になってきている。富田氏からは、日本以上にこうした取り組みが盛んに行われているアジア各国の現状が紹介された。いかに価値ある「新しい」コト・モノを生み出し、広く普及していくかが、いま、日本のモノづくりに求められている。こうした背景から、製造業のユーザーを後押しし、競争力のある製品作りに役立ててもらうため、昨年からこのようなワークショップを実施しているのだという。

(左)慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 特任講師 富田 欣和氏、(右)特任助教 渡辺 今日子氏

昨年の同セミナーでも「イノベーティブ思考法」を紹介した富田氏は「もっと具体的な内容のものにして欲しいという要望が多かったので、今年はプロトタイプをテーマにした内容としています」と話した。

業種も年齢も異なる上、全くの初対面同士である参加者が、意見を出し合いながら徐々に熱を帯びていく様子は、新たな日本のものづくりを感じさせてくれる光景だった。その模様を詳細にお伝えしたいのだが、同ワークショップは今後、名古屋・大阪でも開催予定となっている。事前に予備知識があると不都合が生じるため、具体的な内容について、本記事での紹介は控えさせていただく。

さて多くの参加者と多彩な催しにより大盛況に終わった「SOLIDWORKS Solution Seminar 2015 in Tokyo」。参加者からは、「トップの人間ほど、デザインマネジメントの重要性を理解する必要性を感じた」、「大変刺激になった。設計についての捉え方、アプローチの考え方が大きく変わった」「実際に今後の商品開発に取り入れて行きたい」などの感想が寄せられた。
同セミナーは、6月10日に大阪、7月22日に名古屋にて、それぞれ開催予定となっている。詳細および申し込みについては以下のURLを参照して欲しい。なお、それぞれ定員に達し次第締め切りとなっているので、興味のある方は早めの申し込みをお勧めする。

以降開催セミナーの詳細は以下の通り

大阪
・タイトル: SOLIDWORKS Solution Seminar 2015 Osaka
・開催日時: 2015年6月10日(水)   9:30~18:00 (受付開始 9:00~)
・参加費: 無料 (事前予約制)
・開催会場: 株式会社大塚商会 関西支社 大阪府大阪市福島区福島6-14-1 大塚梅田ビル
・主催:株式会社大塚商会
詳細はこちらから

名古屋
・タイトル: SOLIDWORKS Solution Seminar 2015 Nagoya
・開催日時: 2015年7月22日(水)   10:00~17:30
・参加費: 無料 (事前予約制)
・開催会場: 株式会社大塚商会 中部支店 13F 愛知県名古屋市中区丸の内3-23-20 HF桜通ビルディング
・主催:株式会社大塚商会
詳細はこちらから