「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」という病気をご存知ですか。あまり耳なじみがないかもしれませんが、不妊の原因にもなる排卵障害のひとつで、若い女性にも多い病気です。排卵がうまくできないために、卵巣に排卵しなかった卵胞が多数残ってしまうのが特徴。では、一体どんな症状が出たら「多嚢胞性卵巣症候群」の可能性があるのでしょうか。

生理不順など生理のトラブル

まずもっとも多い典型的な症状が生理不順です。多嚢胞性卵巣症候群になると、排卵が遅くなったり起こらなかったりするため、生理周期の乱れという形で表れます。生理が来ない、あるいは生理周期が35日以上になる場合は、多嚢胞性卵巣症候群の可能性があると言えるでしょう。そのほか、脳下垂体から分泌されるLH(黄体化ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)のバランスが崩れ、生理のとき出血が過多になる場合もあるようです。

男性ホルモン増加によるヒゲ、ニキビ、低音声などの男性化兆候

多嚢胞性卵巣症候群では、脳から出て卵巣に作用するLHが異常に分泌し、FSHとの分泌量のバランスに乱れが生じ、男性ホルモン(テストステロン)値が正常より多くなると考えられています。そのため血中の男性ホルモンの値も高くなり、その影響がさまざまな症状として現れます。代表的なものが、スネ毛などの体毛が濃くなるというもの。人によっては、ヒゲが生える場合もあります。さらに、肌がべたつき、ニキビが多発して肌荒れを起こしたり、声が低くなったりする場合も。

肥満

近年では、多嚢胞性卵巣症候群は、インスリンの代謝異常とも関係があるという説があります。インスリンには血糖値をコントロールする働きがあるため、インスリンがうまく働かない場合、血糖値が高くなったり肥満になったりすることがあります。

上記のすべてが、多嚢胞性卵巣症候群の自覚症状として現れるわけではありません。ひとつだけしか症状が出ない人もいれば、複数の症状が出る人もいます。なかにはまったく自覚症状がない人もいるので、たとえ症状がなくても定期的に婦人科で検診を受けておくと安心です。続編では、多嚢胞性卵巣症候群の治療法についても解説していきます。

※画像は本文と関係ありません

善方裕美 医師

日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。

主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など