Cypress Semiconductorの日本法人である日本サイプレスは6月2日、CypressとSpansionの経営統合の完了に伴い、日本国内において新たに「日本サイプレス株式会社」の登記を完了したこと、ならびに組織体制の刷新と新たな事業戦略を策定したと発表した。

組織体制としては、6月1日付で、旧 日本サイプレスにて代表取締役社長を務めてきた吉澤仁氏が代表取締役会長に、旧スパンションにて日本営業部門担当副社長を務めてきた長谷川夕也氏が代表取締役社長にそれぞれ就任したほか、日本のヘッドクォーター(HQ)を、旧 日本サイプレスがあった新宿(中野坂上)でも、旧 スパンションがあった川崎でもなく、旧 スパンションが買収した富士通のマイコン・アナログ部隊(スパンション・イノベイツ)がオフィスを構えていた武蔵小杉へと移転させている。

新生日本サイプレスの代表取締役会を務める吉澤仁氏。旧 日本サイプレスでは代表取締役社長を務めてこられた

新生日本サイプレスの代表取締役社長を務める長谷川夕也氏。旧スパンションでは日本営業部門担当副社長を務めてきたほか、その前には日本IDTの社長も経験している

新生Cypressとしての2015年第2四半期の業績は複数のアナリストによる予測の中央値だが、約5億ドルと、ほぼ見込み通りといったところの値となる模様

日本サイプレスのHQ以外のオフィスは、従来の2社のオフィスをそのまま活かす形でセールスのほか、デザインやマーケティング活動が行われることとなる

CypressとSpansionの統合の詳細については既報の通り。売り上げは20億ドル規模となり、10億ドルが各種のメモリ製品、10億ドルがPSoCやARMマイコンなどのロジック関連製品で占められる。「メモリは現在、DRAM以外のほぼすべてを取り揃えているほか、ローエンドからハイエンドのヘテロコア製品まで含めてARMマイコンやPSoCでカバーしており、カスタマに幅広いブログラマビリティを提供できることが特徴の半導体ベンダ」(長谷川氏)とする。

新生Cypressの概要

新生Cypressの製品ポートフォリオ。メモリ関連はDRAM以外はほぼほぼ提供できる企業となっており、そのDRAMについてもファブレスでメモリ技術開発などを行っている米ISSI(Integrated Silicon Solution)に対し買収提案を行っており、これが実現すればDRAMも加わることとなる

だが、新生 日本サイプレスの最大の特徴は「従業員数が約1000名と、ほかの外資系半導体ベンダに比べても多い」(同)という点にある。また全社売上高の約30%が日本であるとのことで、カスタマからの要望も米国本社に届けやすいポジションにあるとのことで、そうした部分を押し出すことで、「エンベデッドサプライヤとしてNo1になるという目標を掲げている」(同)とする。

さらに日本サイプレスの方向性としては、アプリケーションごとに提案できる製品が多数あり、「オートモーティブ(自動車)」「FA/インダストリアル/メディカル」「IoT」「PCインタフェース」に注力していくとする。中でも自動車とFA/インダストリアル関連は、世界に誇れる企業が多くあり、そうした企業が世界で今後も戦っていける製品づくりの手伝いができればとする。そうした顧客重視の意味も含め、「顧客へのサポート人員はエンジニアリングを含めて増強していく」とのことで、合併してもエンジニアを中心に人員拡充を進めていくことを強調したほか、代理店も注力市場に強いところと複数パートナーシップを締結し、日本サイプレスのエンジニアと同等のスキルレベルの人員によるサービスの提供も図っていくとした。

新生Cypressのビジネスとしては4つのディビジョン分けがなされており、このうち「Emerging Technologies」を除く3つのディビジョンが日本市場のターゲットとなる。中でも右の図、緑の枠で囲まれた市場分野は特に注力市場と位置付けられており、リソースの積極的な投入を図っていくとする

「我々はほかの外資系メーカーに比べて日本人のリソースが多く、これを活用することで、日本企業との円滑なコミュニケーションを図りつつ製品づくりにつなげることができる。次世代製品の開発にしても、日本発祥のベストな製品をベストな価格でベストなタイミングで提供することも可能な位置にいると考えており、そうした点でも日本の顧客が世界で勝てる支援をしていけるのではないか」と長谷川氏は抱負を語ったほか、「日本サイプレス全体として、日本のものづくり産業を支えられるような製品づくりを手伝い、日本の産業を支える一翼を担えるようになれれば」とした。

日本市場に向けて長谷川社長が掲げた3つの戦略(左)と日本の産業界に向けて提示した3つのコミットメント(右)