「なんでもいい」っていったじゃないかー!!!

男性「何食べに行く? 」女性「なんでもいいよ」男性「じゃあラーメンにしようか」女性「え、ラーメンはヤだ」……。こういう会話、男女間においてはよくありませんか。男性からすれば、「なんでもいいって言ったでしょ! 」と思ってイライラしますよね。どうして女性は、「なんでもいい」といったあとで文句をいうのでしょうか。

人は決断が苦手な生き物?

「なんでもいい」といったわりには、提案すると「それはちょっと」という人は、女性だけに限らず男性にも存在します。というのも、基本的に人は物事の決断が苦手というのが前提としてあるからです。

「想起集合」という言葉がありますが、これはモノやサービスなど何かを購入しようとするとき、その検討の対象となる商品集合のことをいいます。具体的にいえば、お昼ご飯を食べに行くとき、頭の中に選択肢が思い浮かびますよね。ハンバーガーにしようか、ラーメンにしようか。それが、想起集合です。そして当然ながら、牛丼やそばが想起されなければ、選択されることはありません。なので、少しでも頭に思い浮かべてもらおうと、企業は広告宣伝に力を入れるのです。

ですが、人が想起できる数には限りがあるといわれています。一般的には多くて5つまでとも。そして問題は、仮に5つ想起できたとしても、5つもあると人は決められないのです。当然ながら、最適なのは2つ。これが3つになると、決定力が大きく下がります。

「どこ、食べに行く? 」「どこでもいいよ」という「どこでもいいよ」には、まったくなにも想起されていない場合と、想起されているけれど選択できない状態のどちらかが考えられます。そのとき、「じゃあ、ラーメンにしようか」と提案して、「え、それは……」という反応を示したのだとしたら、そこで初めてラーメンが想起され、あらかじめ想起していた選択肢になかったということ。また、彼女の中で想起はされていたけど、選択肢としては除外されていたということなのです。

「なんでもいいよ」という言葉は、「すべての判断をあなたに任せるわ」という意味ではなく、決められない状態にあるという意味を知っていれば、腹も立たないのではないでしょうか。

また、具体的な解決策として、次のような方法もあります。抽象的なものから、徐々に具体的なものに選択肢を落とし込むというやり方です。例えば、「さっぱりしたもののと、味のしっかりしたもの、どちらがいい? 」とか、「洋食と和食と、どちらがいい? 」とか。そして、「タイ料理と韓国料理、どちらにしようか」と、常に2つの選択肢で具体的に落とし込んでいくのです。そうすると、相手も選択肢が2つなので、決めやすくなります。これは、彼女とのデートだけではなく、接待の2次会などでも有効な手段です。

ただ、女性にも知っておいてもらいたいのは、意外と男性はデートのプランを事前に計画していてシミュレートしていることが多いです。彼女に「どこ、食べに行く? 」と聞いても、実は男性なりのプランがあったりします。もしくは、せっかくのデートなんだから、2人で相談して決めたいとも思っていたりします。

「どこ、食べに行く? 」と男性から聞かれたときには、「なんでもいい」と答えるのではなく、「いい場所、知らない? 」とか、反対に「さっぱりしたものが食べたい」とざっくり提案をしつつ、彼と一緒に決めていくようにすると、余計なケンカをしなくてすむはずです。

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著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理に詳しい。
現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は「化粧にみる日本文化」「黒髪と美女の日本史」(共に水曜社)など。