企業がシステム構築の選択肢としてクラウドをまず候補に挙げる「クラウドファースト」への流れが進む中、富士通は、SaaSやPaaS、IaaSなどのさまざまなクラウドサービスを「Cloud Initiative」として体系化。それらサービスのインテグレーションまで含めたソリューションを展開している。その中で、VMwareのテクノロジーをベースとして構築したホステッドタイプのプライベートクラウドが「FUJITSU Cloud IaaS Private Hosted LCP」(Private Hosted LCP)だ。

高い信頼性と充実したサポート体制

富士通 サービス&システムビジネス推進本部 クラウドビジネス推進統括部 クラウドサービス推進部 永田雅人氏

Private Hosted LCPは、専用線で接続する機密性の高いクラウドで、大規模から中規模の基幹システムをセキュアな環境で提供するサービスである。Private Hosted LCPの最大の強みは、その高い信頼性にある。メーカーとして長年ものづくりに携わる富士通が、その信頼性をクラウドサービスにも同レベルで持ち込もうとしているためだ。Private Hosted LCPは日本を含め15カ国に展開。国内では、東日本と西日本の2箇所にPrivate Hosted LCP基盤を構え、運用している。

同サービスの中で特に高く評価されているのが、インテグレーションと運用サービスだ。富士通は、Private Hosted LCPのクラウド基盤を単体で提供するのみならず、導入時のインテグレーションから導入後の運用まで、トータルでサポートを提供する体制を整えている。

「すでにクラウドを導入した企業が抱えている悩みのひとつが運用です。クラウド化によって物理サーバはなくなったものの、システムそのものがなくなるわけではないため、いかに運用負荷を低減するかという部分で悩む企業が多いのです」と、富士通 サービス&システムビジネス推進本部 クラウドビジネス推進統括部 クラウドサービス推進部 永田雅人氏は語る。

「十分なサポートを提供できていないクラウドベンダーもあります。何かトラブルがあった場合、お客様はサポートを別のSIerなどに頼らざるを得ません。そのため、システムそのものの導入コストが下がったとしても、逆に運用コストが上がったという話を聞きます。しかし、特に日本においては、システム導入時のインテグレーションからその後の運用まで、トータルサポートを希望する企業が多いのです。そこで富士通は、ユーザー企業がシステム全体を最適に利用できるよう、総合的なサポートを含めたクラウドを提供したいと考えました。当社は、長年にわたって提供しているデータセンターアウトソーシングビジネスの評価が高く、このビジネスで培った運用スキルやノウハウをPrivate Hosted LCPに生かしています」(永田氏)

Private Hosted LCPの位置付け

事実、SAPで稼働させていた基幹業務システムの更新時にPrivate Hosted LCPを導入した保土谷化学工業では、オンプレミスから同サービス環境への移行時、富士通の担当SEとサービスマネージャーの存在を高く評価していたという。「一部のデータベースをオンプレミスに残したまま、Private Hosted LCPとのハイブリッド環境を構築するケースでした。その際、SEとサービスマネージャーが集中してシステムインテグレーションを担当し、3.5カ月という短期間で移行を実現しました。その後の運用負担も軽減できたとご満足いただいています」と永田氏は言う。

また、一度は富士通を検討しつつも海外のクラウドベンダーを選択したユーザー企業が、1年後にやはり富士通を利用したいと戻ってきたこともあると、永田氏は語る。「そのお客様は、他社を選定したものの通常運用時のサポートや障害時の対応に満足できず、再検討した結果、富士通を選んでいただくことになりました。ものづくりで培った信頼性の高さやサポートの実績が、お客様に安心感を与えているようです」(永田氏)

Private Hosted LCPは、流通業や製造業、情報産業など幅広い業界で導入されているほか、高い信頼性を求める金融業界からも引き合いが増えているという。「Private Hosted LCPではFISC対応も実施しており、金融業界でも安心して使っていただける仕様になっています」と、永田氏はアピールしている。

顧客ニーズの高いVMware vSphere基盤

富士通 アウトソーシング事業本部 ビジネス開発室 シニアマネージャーの鈴木康紀氏

Private Hosted LCPは、ハイパーバイザーにVMwareのテクノロジーを採用したプライベートクラウド基盤だ。同サービスがVMware vSphereベースであることの意味について、富士通 アウトソーシング事業本部 ビジネス開発室 シニアマネージャーの鈴木康紀氏は、「VMware vSphereはグローバルで高いシェアを持ち、これまでに作り込んだシステムをVMware vSphereベースで運用している企業が多いのが現状です。クラウドファーストという考えが浸透し、オンプレミスからクラウドへの移行を考えた際、同じハイパーバイザーがベースとなっている方が移行においてスムーズであることは明白です。すでにVMwareの製品を利用しているお客様は、VMwareに安心感を抱いています」と説明、顧客ニーズを考えるとVMwareのテクノロジーをベースとしたクラウドサービスは必須だとした。

また、SIerとしてVMware製品のインテグレーションや運用に長年携わってきた経験のある鈴木氏は、「VMware vSphereは非常に安定したハイパーバイザーです。技術者が多くて情報も豊富、サポートも充実しているため、信頼性を担保するには使いやすい製品です」と説明する。鈴木氏によると、Private Hosted LCPがサービスインした2013年10月以来、VMware vSphereを含め、お客様システムの停止に繋がるトラブルは一度も発生していないという。

これまでにもVMware製品をオンプレミスのシステムに導入するなど、富士通とヴイエムウェアの結びつきは強かったが、ヴイエムウェアが新たに発表したパートナープログラム「VMware vCloud Air Network」により、「オンプレミスの資産を一部残しつつ、クラウドに移行したいというハイブリッド環境を望むお客様も増えているので、こうしたニーズに適材適所で提案できるようになりました」と鈴木氏は話す。

また鈴木氏は、ヴイエムウェアとのパートナーシップに期待することとして、次のように話す。「富士通はお客様に信頼性が高く付加価値のあるシステムを提供するために、最先端技術と実績のある技術をバランスよく活用しています。ヴイエムウェアのような最先端技術を次々と生み出す企業と、検証や構築・運用に強みのある我々富士通がパートナーシップを結ぶことで、新しい技術を採用してもお客様に安心して提供できると考えています」(鈴木氏)

永田氏は、今後もさまざまなクラウドサービスを提供していきたいと語る。「富士通の強みはインテグレーションやマネジメント力。これに、VMware製品のグローバルな普及率と技術力が組み合わさることで、Private Hosted LCPというより良いサービスが生まれました。富士通では、お客様のニーズに合ったクラウドこそが、一番いいクラウドだと考えています。今後もさまざまな製品やサービスを組み合わせるインテグレーションによって、お客様のニーズに応えていきたいですね」(永田氏)