高級ポータブルオーディオの分野で強い存在感を放つ「Astell&Kern(アステル・アンド・ケルン)」が、東京・中野サンプラザで5月16日から2日間にわたり開催される「春のヘッドフォン祭 2015」にてハイレゾDAPの最上位モデル「AK380」を披露した。

32bitデュアルDAC構成のポータブルハイレゾDAP「Astell&Kern AK380」

AK380は、LR独立のデュアルDAC構成・バランス出力対応という弩級スペックで話題を集めたAK240の後継となる、ハイエンド指向のハイレゾDAP(デジタルオーディオプレーヤー)。いわゆるフラッグシップモデルに位置付けられるが、「Astell&Kernのブランドミッションは、原音に忠実な再生を追求すること。AK380では、そこにプラスして"プロフェッショナルな環境で望まれる機能"を加えた」(アユート・藤川真人氏)という。

Astell&Kernの国内代理店・アユートの藤川真人氏

AK240の基本コンセプトは継承しつつも、音質に大きく影響するDACは一新。AK240ではCyrrus Logicの24bit DACチップ「CS4398」を2基搭載していたが、AK380では旭化成エレクトロニクスの32bit DAC「AKM AK4490EQ」に変更。同じデュアルDAC構成ながら音質面が強化された。

再生はPCMが最大384kHz/32bit、DSDが5.6MHz/2.8MHzのネイティブ再生に対応。「従来32bit再生に対応したモデルは24bitにダウンサンプリングしていたが、AK380は32bitネイティブ再生が可能。デュアルDACとバランス出力の組み合わせで"グランドまでL/R分離のトゥルーデュアルモノラルDAC構成"となり、より高品質な再生が可能になる」(藤川氏)と、AKM AK4490採用のメリットを説明した。

32bit DACをLR独立のデュアル構成とし、バランス出力を実現している

高品質再生に重要な役割を果たすクロックについても、新たに電圧制御水晶発振器(VCXO)を採用。「据え置きハイエンド機にも採用される超精密クロックを採用し、フェムト秒クラスの0.2psという極限に近い低ジッターを実現した」(藤川氏)という。

音質調整機能としては、PEQ(パラメトリックイコライザ)を採用。20バンド/0.1dB単位での調整に対応し、詳細なEQ設定を実現している。

本体底面に用意された4ピン端子を利用し、外部機器と音声信号を入出力するという機能拡張のコンセプトも披露された。現時点では試作機の紹介にとどまるが、「AK380専用のアンプ、クレードル、CDリッパーを計画している。クレードルの背面にはXLR端子を装備しており、そのままアンプに接続して使える」(藤川氏)とのことだ。

超精密クロックを採用、フェムト秒クラスの0.2psという極限に近い低ジッターを実現した

PEQ(パラメトリックイコライザ)を採用、20バンド/0.1dB単位での調整が可能

底面の4ピン端子で機能拡張が可能。AK380専用のアンプ、クレードル、CDリッパーが計画されている

DLNA対応のコントローラアプリ「AK Connect」も提供される。対応プラットフォームはiOSとAndroid、現時点ではAndroidのベータ版が公開中だ。AK380はレンダラー(DMR)としてNASなど他のDLNAサーバ上の曲を再生できるほか、メディアサーバ(DMS)としてAK380上の曲に対しアプリ(DMC)から再生指示する、というスマートフォン/タブレットと組み合わせたネットワークプレイヤー的な使い方も可能になる。韓国ですでに公開済みのプレイヤーアプリ「Music APP」も、「ハイレゾ配信サイトのMUSICBIRDを含め、年内にも日本対応が正式決定した」(藤川氏)。

発表会でナビゲーターを務めた、オーディオライターの佐々木喜洋氏

旭化成エレクトロニクスのオーディオ・マイスター、佐藤友則氏

デザインは「光と影」をイメージ。動きのある光が自然に反射されるとともに影が生成される様子を表現しているという。ボディと背面の素材はAK240に習い、それぞれ航空機グレードのジュラルミンとカーボンファイバーが採用された。

内蔵ストレージの容量は256GB。別途128GBのmicroSDカードを追加して最大384GBの総容量まで増設できる。再生対応フォーマットはWAV/FLAC/WMA/MP3/OGG/APE/AAC/ALAC/AIFF/DFF/DSF。ギャップレス再生と150段階のダイヤルボリュームコントロールに対応、OTAによるファームウェアアップデートとBluetooth A2DP/AVRCPもサポートする。発売時期と価格は、決定次第発表される。

発表会では、オーディオライターの佐々木喜洋氏により、試作機のクレードルとXLRで接続されたアンプ、スピーカーを利用した試聴デモも行われた。AKM AK4490の開発を担当した旭化成エレクトロニクスの佐藤友則氏も登壇し、「24bitでは生じた誤差が切り捨てられるが、32bitであれば余すことなく音楽として再生できる」と、32bit DACのメリットを説明。「右と左を加算することでSNが向上する。左右チャンネルの分離でクロストークの影響がなくなる」と、デュアルDAC構成のメリットも語った。

AK380のボディ。長方形の液晶画面が斜め方向にスライドしたような、独特の動きを感じさせる

背面にはカーボンファイバー素材が採用されている

底面には拡張用の4ピン端子が。AK380専用のオプション機器としてアンプ、クレードル、CDリッパーが計画されている

4ピン端子に接続して使うポータブルアンプ(試作機)

クレードルとCDリッパーのデモ。実際にCDから取り込む様子がデモされた

クレードルの背後にはXLR端子が配置されている

試聴デモの様子 (音は出ません)