iPhone本体よりも高いiPhoneケースが話題を呼んでいる。

iPhoneアクセサリの製造・販売を手がける株式会社SQUAIRが開発した「SQUAIR」ブランドだ。定価2万5000円のジュラルミン製iPhoneバンパー「The Edge」に始まり、定価5万円の「The Dimple」、そしてフラグシップモデルとなる「The Slit」は、iPhoneよりも定価15万円。なんとiPhone本体よりも高いのだ。

SHOWCASEでの取り扱いが始まった「The Slit」。価格は15万円(税抜き)

そんな「SQUAIR」ブランドのiPhoneケースは、どこでも購入できるわけではなく、限られた店舗でしか購入できない。その一つが、株式会社KODAWARIが運営するiPhoneアクセサリショップ「SHOWCASE秋葉原」。「The Edge」「The Dimple」「The Slit」の3ラインがすべてそろっているの数少ない店舗の中の一つだ。

なぜSHOWCASEで「SQUAIR」ブランドを取り扱うことになったのか。株式会社KODAWARI代表取締役社長・田村洋祐氏と、株式会社SQUAIR・CTOの道家剛史氏の二人に経緯と「メイドインジャパン」にかける思いを伺った。

株式会社KODAWARI代表取締役社長・田村洋祐氏(左)と株式会社SQUAIR・CTOの道家剛史氏

――SHOWCASE秋葉原で「SQUAIR」ブランドのiPhoneケースを取り扱うようになった、そもそものきっかけは何だったのでしょうか。

田村 2月に開催されたギフトショーですね。そこでたまたまSQUAIRさんのブースを訪れて、「SQUAIR」を見たんです。あ、いいなと。ひと目で質の良さがわかりました。ちょうどSHOWCASEの核となる商品を探していたこともあり、お声がけさせていただいたんです。

――2月のギフトショーで見て、同じ2月から販売を開始したのですか!? ものすごいスピード感ですね。

田村 めちゃくちゃ早かったですね(笑)。まさに急展開でした。

道家 ギフトショーの3日間で、2時間だけ僕もブースに立っていたんですよ。そこに田村さんが来られたので、製品の説明をしたんです。本当に偶然でしたね。

――もともと知っていたというわけではなかった?

田村 セールス担当の方はSHOWCASEの事を知っていましたが、それまでは特につながりはなかったですね。

――SQUAIRの第一印象はいかがでしたか?

田村 これはすごいなと。僕がギフトショーで見たのは一番安い「The Edge」だったのですが、まさか上にそんなレンジがあるとは思いませんでした。それを知って、ますます感心しました。これはこだわってるぞ、と。うちよりもこだわっていると(笑)。

――(笑)。道家さんに伺いますが、SQUAIRブランドのiPhoneケースはどのようにして生まれたのですか?

道家 バンパータイプのものを開発したことが最初です。その後、スタッフが既にあった別ブランド展開のメッシュタイプのiPhoneケースと同じ形状のケースを金属で作りたいと言い出したんですね。原価云々とか、いくらで売ろうとかではなく、とにかく金属版のメッシュタイプのiPhoneケースが欲しいんだと。実際に開発してみると、とてつもなく時間と製造コストがかかりました。原価がとんでもないことになって、10万円で販売したのです。ところが、試しに30個出してみたら、すぐに完売してしまいました。

――10万円のiPhoneケースが完売ですか!

道家 当時はすでにiPhone 6の噂が出ていた時期で、あと3カ月くらいしかなかったんですよ。買う方もそれはわかっていたはず。それでも売れたんです。追加でさらに製造しましたが、それもすぐなくなりました。それで「これは完全に市場があるな」と気づいたんです。15万円の「The Slit」は、その後継モデルです。

――なるほど。それで、iPhone6でもSQUAIRを展開したと。

道家 本当は25万円のケースを作ろうかなと思ったのですが、それだと他よりも二歩先を行ってしまうんですよ(笑)。とりあえず一歩半くらいにしておこうかなと。

――それでもiPhoneより高級なiPhoneケースはインパクト抜群です。どんなこだわりがあるのでしょうか。

道家 まずデザイン。それから持ったときの質感。素材の調達から製造まですべて日本で作り上げたメイドインジャパンならではのクオリティを出すことにこだわっています。iPhoneケースというと、iPhoneのデザインの良さをある程度スポイルしてしまうけど、保護するために仕方なくつけるもの、というイメージがありますよね。SQUAIRはそうではありません。僕らはiPhoneのデザインや質感をさらに超えるものを作っているんです。もとの良さを殺さないのではなく、もとの良さをさらに超える。そうでないと意味がないんです。

田村 だからこそ、本体よりも高級なんですよね。

SHOWCASE店内の様子

――素材となる超々ジュラルミンは非常に高価ですよね。

道家 超々ジュラルミンはとても軽量ながらトップクラスの強度を持つアルミ合金で、航空機などに用いられている素材です。この切削には5軸加工機という機械を用いており、専用の刃物も開発しました。削るのは機械ですが、その機械を操るためには職人技が要求されます。僕らは技術も道具もすべてフルオープンにしていますが、絶対に他では真似できません。

――細部へのこだわりは、これまでのケースとは一線を画していますね。

道家 たとえば多くのiPhoneケースでは、ボタン部分に穴を開けていますよね。あれは純正のボタンが一番操作しやすいからです。しかし、僕らはあえてボタン部分も覆いました。さわっていただくとわかりますが、ボリュームのプラスマイナスが触れただけでわかるようになっています。

――iPhoneとしての使い勝手も向上させながらデザインと質感を両立するのは、かなりの苦労があったのでは?

道家 そうですね。妥協は一切したくなかったので、まずデザインを決めてから加工に落とし込み、それができるかどうかを検討し、再びデザインに落としこむ。その作業を何十回とやりました。たとえば最初はケースをちょうど真ん中から割ってつけるようにしていたんです。そのデザインで作って、量産に入ろうかというときになって、CEOの後藤(鉄兵)が真ん中で割るのはアップルマークとのバランスが悪いと言い出したんですね。で、分割ラインを下げろと。いやいや、簡単に言うけど、すごく難しいんですよと説明しました。というのも、「The Slit」は電気を金属に通してアルマイト加工をしているのですが、大きさに個体差があると電圧の違いで色が変わってしまうんです。真ん中で割るなら対象なので同じ色が出るのですが、分割ラインを下げると上下で大きさが変わってしまうため、同じ色に仕上げるのが難しい。そういう説明をしたのですが、「だから?」の一言でしたね(笑)。

――本当に妥協がないですね(笑)。

道家 そういうことをやっていたので、発売が当初の予定よりも2カ月半遅れましたね(笑)。

田村:でも2カ月半の遅れだったんですね。これだけの精度で作るケースだと、年明けになるのが普通だと思うんですよ。だけど、年内に間に合わせたスピード感は本当にすごい。

――ところで、「The Slit」は金属製ですよね。そうなると電波が気になるところですが……。

道家 唯一、向上できなかったのは電波ですね。これはもう金属である以上、どうしようもないことなんです。それを妥協してでもつけたい人に買ってほしいですね。……とは言っても、実はかなり対策は施しているんですよ。電波のアンテナがどこに入っているかを研究して、その部分だけ開けたりしています。極限までシビアにこだわっています。

――販路についても伺いたいのですが、「SQUAIR」ブランドは実店舗だと、限られたお店でしか置いていませんよね。

道家 そうですね。2万5000円の「The Edge」は、それでもまだ色々な店舗に置いていますが、5万円の「The Dimple」は限られた店舗だけです。「The Slit」に関しては、完全に僕らが選んだお店にしか出していません。最近だとバーニーズニューヨークの本店に入ることが決まっています。これ、飛び込み営業で持ち込んだんですよ(笑)。

――飛び込みですか! でもたしかに、どの店で買えるのかは重要ですよね。どこでも買えるとありがたみが薄くなりますし。

道家 立派なガラスケースに入れるとか入れないとかではなく、選ばれたお店でしか買えない。それがお客様にとっての価値になりますからね。その点で、SHOWCASEはベストでした。スタッフの方が「SQUAIR」の価値をきちんとわかってくれていますからね。でも、「SQUAIR」の3つの商品をすべて置きたいと言ってもらえたのは初めてですね。たいてい一つだけとかなんですよ。2万5000円と5万円を一緒に並べると、どっちかしか売れないって判断されたりして。

田村 ブランド全体の世界観に共鳴したのが大きかったですね。高級らしいから置いてみようか、みたいな意識では他の店と同じレベルじゃないですか。やるなら本気でやる。世界観を伝えていくわけだから、全ラインナップが必要なんです。それがお客様にとっても、メーカーにとってもSHOWCASEの存在意義であり、付加価値だと思っています。

――ちなみにSQUAIR自体で実店舗を持つ可能性は?

道家 それはやりたいのですが、自分たちで店舗を構えるのはまだ先だと思っています。「ここに行けばSQUAIRが買える」という場所は今までなかったのですが、これからはSHOWCASEがそういう場になると思います。

田村 実は、まだ店舗にSQUAIRを置く前なんですが、SQUAIRを買いたいというお客様がうちに来たことがあったんですよ。SHOWCASEでは永久保証もやっているから安心できるということで、SQUAIRは取り扱っていないのか、と。やはりネットで15万円のものを買うのは、ハードルが高いみたいですね。

道家 実際に見てほしいですよね。

田村 そうですね、触らないとわかりませんからね。

――SHOWCASEにSQUAIRを置くことで、良い相乗効果が生まれそうですね。

田村 そう思います。こういった、きちんとした商品を置いていることで、お客様が安い商品を買うときにも信頼感が出ると思いますね。最終的な目標としては、メーカーさんに「SHOWCASEでの取り扱いブランドに選ばれたい」と思っていただけること。そして、お客様には「SHOWCASEで取り扱っているブランドなら安心できる」と思っていただけることですね。

道家 それこそがセレクトショップの意義ですよね。そういう店舗にこそ、SQUAIRは置かないとダメだと思っています。

メイドインジャパンで最高のものを生み出し、ユーザーに最高の満足感を提供する――その価値観を共有するKODAWARIとSQUAIRだからこそ、SHOWCASEとSQUAIRという組み合わせが実現したと言える。メイドインジャパンの技術を結集して生み出された「SQUAIR」を、ぜひSHOWCASEで手にとってみてほしい。