カシオ計算機は5月12日、現在の樫尾和宏 取締役 専務執行役員が、代表取締役社長に就任することを発表した。2015年6月26日に行われる定時株主総会開催後の取締役会で正式決定する。樫尾和雄・現社長は、代表取締役会長に就任。CEOを兼務する。

同社では社長交代の理由を、「今後、さらなる成長を遂げるための新たな経営計画を、強いリーダーシップで推進できる、強力な経営体制を構築するため」としている。

写真左が樫尾和雄・現社長、写真右が樫尾和宏・次期社長

樫尾和宏・次期社長は、1966年1月22日生まれ。慶応義塾大学理工学部卒。1991年4月にカシオ計算機に入社し、ハウスエージェンシーの立ち上げ、米国販売会社への赴任、新規事業の立ち上げなどに関与。2007年6月に執行役員経営戦略担当、同年7月に執行役員経営統轄部副統轄部長、2011年6月に取締役執行役員DI事業部長を経て、2014年5月に取締役専務執行役員コンシューマ・システム事業本部長に就任し、現在に至る。49歳。趣味はゴルフ。最近はほぼ毎週やっているという。スコアは85~115と幅がある。樫尾和雄・現社長の長男である。

5月12日午後6時30分から、カシオ計算機本社で行われた会見で、樫尾和宏・次期社長は、「2014年度は最終利益で過去最高を達成した。その上で、今後の新たな目標として、2017年度に売上高5,000億円、営業利益で750億円とした。節目の数字を早期に達成すべく、新会長の指導のもとに全力を尽くしたい。カシオ計算機にとって、最大の資産は、カシオファンの存在である。社是である『創造 貢献』のもと、ファンの期待を超える製品を作り続けることで、新たなカシオ計算機を作り、社会貢献をしていきたい」とした。

2018年度へ向けたカシオ計算機の新3カ年計画

カシオ計算機の課題については、「時計事業に偏りがちなところがある。コンシューマ事業とシステム事業で、柱になるような製品を作ることが最大の課題である。これらの分野においても、カシオ計算機らしい製品を作りたい」とし、「カシオらしいという意味は『オハイオ』。面白いモノ、初めてのモノ、意味のあるモノ、驚きのあるモノの頭文字。こうしたカシオ計算機でなくてはできないものを作りたい。カシオファンとはそこでつながっている。これからもオハイオにつながる製品を作っていきたい」とした。

社長就任の打診を受けたのは、今年3月のことだった。社長室に呼ばれて打診されたという。「次の中期経営計画の3カ年の間は、まだ社長(編注:樫尾和雄・現社長)を続けると思っていたので驚いた。その場では返事をせずに数日後に返事をした」と、樫尾和宏・次期社長は語った。

一方、樫尾和雄・現社長は次のように述べる。

「私は、26年間社長を務めてきた。V15という中期経営計画を立て、15%の営業利益率を確保できる事業体質への転換を目指した。2015年度がこの中期経営計画の最終年度であるが、そこで終えるのではなく、これを通過点として、今後3年間でさらなる向上を図りたいと考えた。2014年度は、365億円の利益を出した。これを今後3年間に倍増させ、営業利益は750億円を目指す。

カシオ計算機には、時計、コンシューマ、システムという3つの事業の柱がある。だが、システム事業があまりうまくいっていない。3つの事業のすべてを健全な事業とし、売上高5,000億円を目指したい。この計画を新体制でやっていくことにしたいと考えた。

私自身も、そんなに長く社長をやっているわけにはいかない。今後1年間は、その達成に向けた課題をクリアすることに、新社長と二人三脚で全力を尽くす。1年間で目処をつけ、新社長体制に完全に移行させ、その後は、新社長にすべてを任せる。1年後の代表権の返上については、1年後の様子を見て、それから考えたい」

さらに、「社長候補はほかにもいたが、実力から見ても、適任であると考えた。長年一緒にやっている。彼ならばできると考えた。樫尾一族がどうの、というものではない」と述べた。

樫尾和雄・現社長はこれまで経営を振り返り、「売上高は2007年度に約6,300億円まで拡大した。だが、携帯電話事業で激烈な競争を繰り広げ、この分野で勝てるのかどうかということを考えて、アライアンスに踏み切った。その結果、売上高が大きく落ち込んだ。いまの売上高では満足できない。

カシオ計算機には、会社としての知名度、販売力、資産もある。これらを活用してさらなる発展を遂げることができると確信している。今後のカシオ計算機の再生に結びつくのは資産。資産を活用すれば、さらなる業績拡大ができる。事業拡大に本気になって取り組む」と述べた。

カシオらしさについても言及。「カシオが出す製品は、真似ではなく、初めてのものである。ここにカシオらしさがある。いま、新規事業として、サイネージ事業、リスト端末事業、人材開発事業の3つがある。リスト端末は現在の市場にある多くの製品とはコンセプトが異なり、時計メーカーらしいものを出していきたい。また人材開発事業では、2年間で業界水準を超える人材を育成することを目指す。この自動オペレーションシステムを上期中には完成する。これらより社会貢献していく」とした。