米Digital River にて Global Strategies Senior Director を務める Howard West氏

デジタルリバージャパンが主催する「Digital River グローバルEコマースサミット 2015 東京」では、同社が提案するEコマース(EC)のグローバル化戦略が明らかになった。

同サミットに登壇した米Digital River Global Strategies Senior DirectorのHoward West氏(ハワード氏)によると、「どの市場を狙い、どの範囲までグローバル化するか」という点を明確化することが重要だという。

拡大するグローバルEC市場(越境EC市場)

同社によると、2014年1月にA.T. Kearneyが発表した調査結果において、2013年度のグローバルなEC市場(EC経由で購入された商品の総額)は約1兆2520億ドル(約150兆円)で、2017年には約2兆3570億ドル(約280兆円)、平均成長率88%を達成する見込みだ。

2013年度、EC経由で購入された商品の総額(世界規模) データ出典 : eMarketer, Jan 2014; A.T. Kearney 資料提供 : Digital River

特にアジア地域は、中国や新興国を中心に取引が増加し、平均成長率174%を実現するのではと推測されている。商品のジャンルを国別で見ていくと、多くの国において、電化製品(世界平均77%)やファッション用品(76%)、書籍(73%)などの購入率が高く、食品や生活用品の購入ではEC利用率は高くない。

2013年度、EC経由で購入された商品ジャンルを国別で分析 データ出典 : eMarketer, Jan 2014; A.T. Kearney 資料提供 : Digital River

なお余談だが、同データによると、日本ではECを利用した電化製品の購入が比較的少ない印象を受ける。これに対しハワード氏は、「実店舗が充実しており、ECサイトで購入する必要性をあまり感じていないのでは」と分析する。加えて、日本と中国においては、他国に比べ、食品の購入率が高い(68% / 90%)ことも特徴だろう。

どの市場に進出し、どの範囲でグローバル化するか

このような背景のほか、日本国内では、少子高齢化による国内消費市場の縮小が懸念されているため、ECを展開する企業の多くは、グローバルへの対応を視野に入れているようだ。

では、ECのグローバル化とは、どのような段階を経て実現するものなのだろう。

ハワード氏によると、「CRAWL (GOOD)」から「WALK (BETTER)」「RUN (BEST)」へという具合に3つの段階を経た拡大方法が好ましいという。

ECのグローバル化における3つのステップ「CRAWL≫WALK≫RUN」資料提供 : Digital River

「CRAWL(赤ちゃんのはいはい)の段階では、ECサイトの多言語化や製品価格のローカリゼーション、国際的なクレジットカード会社との提携による決済方法のグローバル対応などを行う一方、商品の提供に関しては購入者に直輸入してもらうという形式が考えられます」(ハワード氏)

これに加え、各地域に応じたUXの提供や関税・租税の処理も実現する「WALK」、在庫や物流も各国にて設け、マーケティング戦略も国別で行う「RUN」と、グローバル対応を行う機能を拡大していく。

「最終的には、それぞれの国において求められている機能を対応させていくことになるでしょう。しかし、ここで最も重要なことは "どの市場に進出し、どの範囲でグローバル化するか" という判断です」(ハワード氏)

文頭で説明したように、国によって、EC市場規模や購入されやすい製品に違いがあるほか、扱われている言語や通貨、決済方法、法準拠、物流、カスタマサービス、税金処理、マーケティング手法にもそれぞれの特徴がある。

海外展開を行う上で、大きく分けて経理分野と販売分野における課題を考慮しなければならない 資料提供 : Digital River

「これらの情報を収集・分析することで、費用対効果やユーザーの特徴を明らかにし、どの機能に投資を行いどれくらいの収益を見込めるのかという戦略と見通しを立てることが、グローバル化に向けた第1歩だろう」と同氏は語った。

労力対効果で市場を比較したグラフ 資料提供 : Digital River