【レポート】

痛みにまつわるコミュニケーション、男女でどう違いがあるかを専門家が解説

ファイザーとエーザイはこのほど、「性差と痛み」に関するセミナーを開催。長く痛みを抱える全国の男女9,4000人を対象に行った実態調査をもとに、男女の痛みに対する感覚や表現の差などについて、心理カウンセラー・五百田達成さんと順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座 井関雅子教授が講演した。

心理カウンセラー・五百田達成さん

「痛みコミュニケーション」の男女差について講演した五百田さんは、男女の脳には有意な差はないものの、その思考やコミュニケーションスタイルは異なることが多いと話す。例えば、「男はほめてほしいが、女はわかってほしい」「男は一般化したがるが、女は具体化したがる」などが具体例として該当するという。

男性は女性に比べ痛みを他者に言いたがらない

では、痛みに関してはどのようなコミュニケーション差が出たのだろうか。

まず、「長く続く痛みを伝えている対象」に関しては、男女ともに「配偶者・恋人」が7割を超えてトップだった(男性: 79.5%、女性: 70.8%)が、女性の方が伝えている対象が多岐にわたっていた。男性は「勤務先同僚」および「勤務先上司」には多く伝えているが、「子供」「母」「友人」「兄弟姉妹」にはあまり伝えおらず、男女間で有意差がはっきりと出ている。

女性(赤いバー)の方が男性(青いバー)よりもさまざまな相手に自分の痛みを伝えている傾向がある

五百田さんはこの結果について、「女性は共感を求めます。男性はプライドやメンツを大事にするのであまり言わないのでは」と推測する。

「痛みを感じているときにパートナーに期待する行動」では、「できないこと(家事などの用事)を代わりにしてくれる」(男性: 58.7%、女性: 83.1%)と「体を休めるように声を掛けてくれる」(男性: 57.7%、女性: 78.5%)の2つにおいて、男女間で20%以上もの開きがあった。ほぼ全項目において女性の方が回答の割合が高いことから、女性はパートナーを何らかの形で巻き込むことで、痛みに対処しようという現実的な考え方がうかがえる。

ただ、このときに気を付けてほしい点があると五百田さんは指摘する。それは「痛みを改善するためのアドバイスがほしい」という状況においてだ。相手のためを思ったアドバイスは、時に相手の気分を害する恐れがあるからだ。

「夫婦間や友人間で齟齬(そご)を生みやすいのがアドバイスです。(仕事の愚痴などを言った際に)『仕事ってそういうものだろ』『転職したいと言っても、今はなかなかいいところがないから今の場所で頑張れよ』みたいなことを言われると、相談した側は『別にアドバイスを求めていないのに……』となってしまう。そのため、(痛みに直面するなどの)ピンチに陥った人とのコミュニケーションには、共感したり受け止めたりすることが大切です」。

痛みを感じているときは、男女共がパートナーに「そっとしておいてくれる」という行動(グラフ左端)を望むようだ

縦社会に生きる男性、横社会に生きる女性

「周囲から得た、痛みに関する情報への信頼性」についても、明確な男女差が生じた。

「通院先の医師の指示」(男性: 83.3%、女性: 87.2%)と「著名な医師の意見」(男性: 64.6%、女性: 67.1%)では、男女間でそこまで大きな差は見られなかった。一方で、家族や友人などの身近な存在による情報を、女性は男性に比べて10%以上も多く「重視する」と回答している。

「一般的に男性は権威的であり、ビッグネームやきちんと保証されたネームバリューのある人の話は聞きますけれど、身の周りの人の情報をうのみにすることは少ないです。一方の女性はそんなことは分け隔てなく、有名な先生だろうが、ある(web上の)掲示板で見た情報だろうが、隣の奥さんだろうが平等に接し、『これは私向けのアドバイスだな』と思ったものは自分に取り入れます」。

これは、多くの男性が会社という縦社会に属していることが影響していると、五百田さんはみている。一方の女性は、誰に対してもある程度平等に対応するという横社会に属していることが結果に反映されているようだ。

女性(赤いバー)は男性(青いバー)に比べ、複数の痛みにまつわる情報ソースを重要視する傾向があることがわかる

五百田さんは、「余裕のない状態で『目に見えないもの』を伝える」という点に「痛みコミュニケーション」の難しさがあると指摘したうえで、「自分の認識が当たり前と思わない謙虚さを持つことが大切」とした。

「女性の方が痛みに強い」は誤り

井関教授は、「痛みへの誤った認識とその対策」について講演した。

順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座 井関雅子教授

痛みは「他人と共有できない不快な感覚と情動体験」であり、一般的に「女性の方が痛みに強い」とされている。だが、実は「女性の方が痛みに不利な点がある」と井関教授は解説する。

「動物実験では男性ホルモン『テストステロン』は痛みを鈍らせることがわかっていますし、女性ホルモン『エストロゲン』が減ると痛みをより感じやすくなります」。実際に、男女の痛みの感覚差は結果に反映されているのだろうか。

まず、「今まで(5年以内)に『長く続く痛み』で病院・医院に通院したことがあるか」という問いに対しては、男女共に現在通院している割合は3割以下(男性:25.6%、女性: 26.2%)で、そこまで目立った差はなかった。

「痛みが長く続いたとき、初めにとる対処法」に関しては、女性よりも男性の方が「何もしない(我慢する)」と回答した割合が明確に多かった(男性: 24.0%、女性: 18.2%)。男女ともに最も多い回答は「塗り薬・貼り薬を使用する」で、女性の方が「痛み止めを飲む」を選択した人が6%ほど多かった。

「日本人はわりと塗り薬や貼り薬が好きですね。欧米人だとあまり使わないと思いますが、(日本では)どこでも売っているということで、多く使われていると思います。女性の方が不快だと思えば、その不快を取るための行動に出るようですね」。

痛みへの対処法は「塗り薬・貼り薬を使用する」が最も多い

また、「女性の方が痛みに強い」という通説に対しても質問すると、「女性の方が痛みに強い」と回答したのが全体の約7割。井関教授の解説にあった、男女のホルモンによる痛みへの耐性の事実を知らないことが示されたかっこうだ。

これらの結果から、井関教授は調査により、男女で痛みへの対処や他者へのニーズは異なる点がみられたことを指摘。そのうえで、「女性の方が痛みに強いという通説を女性も男性も大半が支持していましたが、実際には早期の段階で女性はあれこれと自己対処をして、男性は痛みを我慢している面もあります」と考察した。

広い心で他者とコミュニケーションすることが大切

2000年代前半、男性と女性の行動スタイルの違いを描いた書籍『話を聞かない男、地図が読めない女』(主婦の友社)が日本でも大ヒットした。「男と女の違い」というテーマは、おそらく未来永劫(えいごう)にわたり議論され続けられるだろう。

五百田さんは「生物的本能(脳)」「社会的ジェンダー」「(男尊女卑などの)現代日本独特の事情」という3つの視点から男女を分けることができるかもしれないが、「明確な違いなんてないのかもしれません」と話す。

ただ、男女による考え方の違いの有無に関係なく、コミュニケーションにおいて最も大切なのは「自分が正しい」という固定観念を持たないことだろう。十人十色。同じ事象を前にしたとき、人によって感じ方が異なるのが当たり前なのだ。

今回焦点を当てた「痛みコミュニケーション」というテーマを含め、パートナーとのコミュニケーションには常に広い心で臨んでみてはいかがだろうか。

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