ヤフーは5月1日、2014年度通期の決算説明会を行った。これによると、売上高は前年度比4.9%増の4284億円、営業利益は同0.4%増の1972億円となり、18期連続で増収増益を記録した。なお、2014年度の期末配当は1株あたり8.86円となり、前年の倍になった。

説明会で、代表取締役社長の宮坂 学氏は、「(広告やオークションなどの)基幹事業が収益をしっかりと牽引している強みを持っており、将来に向けた成長として、投資事業も行っている。投資事業は、ショッピングやクレジットカードで、コストが先行しているものの、中長期的に見れば花開く、次の時代に柱になる事業だ」と話し、収益性と将来性の両輪が上手く回っている点を強調する。

ヤフー 代表取締役社長 宮坂 学氏

投資事業以外にも、同社が得意とするビッグデータ解析のためのシステム基盤強化として31億円を投下。投資事業の68億円と合わせ、基幹事業などの利益107億円の多くを費やしてまで、将来の礎としての先行投資を行った。

「ヤフーの強みはユニークなマルチビッグデータ。広告とeコマース、決済・金融とそれぞれの事業に可能性がある。これらを掛け算することでシナジーを出したい」(宮坂氏)

同社が指すマルチビッグデータは、広告やeコマースなど、それぞれ単体のデータとして解析するのではなく、豊富なデータ量、そしてそれぞれを組み合わせることで得られる"質の高いデータ"から、更に多角的な分析ができることとなる。

これは、スマートフォン時代ならではの掘り起こしにも繋がるし、「ヤフーはスマホ時代に使われないのではないか」(宮坂氏)と言われてきた同社にとって、大きな強みとなる。ただ、この使われないと言われていた懸念も払拭し、スマートフォン広告の売上構成比率が33.4%まで向上している。通期累計では、834億円となり、前年度比64.6%の伸長だ。

しかし、これはどのメディアでも共通する悩みだが、スマートフォン広告は単価が低い。ディスプレイ面積が限られ、リッチコンテンツによるユーザーへの"魅せ方"が打ち出しづらいスマートフォンでは、売上の伸びは限定的となる。実際に、同社のDUB(Daly Unique Browser)でスマートフォン比率は57.6%まで高まっているにも関わらず、売上構成比率が3割強ということを考えると現状でよしとは言えないだろう。

そこで同社が打ち出した対策は、5月中に正式スタートを予定しているスマートフォン向けのヤフートップのリニューアルだ。TwitterやFacebookなどのSNSでユーザーが慣れ親しんでいるUIに変更することでユーザーの回遊率向上を目指す。この変更では、それだけでなく、インフィード広告やビデオ広告といった収益性の高い広告メニューを効率的に配信できるメリットがある。広告単価が向上することで、PC時代と変わらぬ売上の伸びを目指す。もちろん、UI変更は、これまでのUIと大きく変わるため、少なからず戸惑うユーザーもいるはずだ。その上で宮坂氏は「ヤフー祖業の広告だが、これまでも新たなプロダクトを作ってきた」と話すように、次のステップという位置付けで今回のトップデザインの変更に臨むようだ。

かつて「爆速で1位を目指す」と語ったアプリのパブリッシャーとしての地位も1位になった。

だが、ユーザーが爆発的に利用するようなアプリを生み出せていない現状がある。個々のカテゴリでトップになるのではなく、圧倒的なトップになれるよう「アプリでも使われる次の3年にしたい」と話す宮坂氏。投資事業のショッピングやクレジットカード、決済と合わせ、更に伸長できるか注目だろう。

クレジットカード事業は、昨年の6月に買収したケーシー(現ワイジェイカード)が手がける。執行役員 決済金融カンパニー長の谷田 智昭氏も決算会見に登場するなど、その意気込みはかなりのものだろう