新社会人として初めての給料明細をもらって、「手取り額」が少ないことに驚いた人もいるでしょう。サラリーマンは、給料から健康保険料、厚生年金、税金などが天引きで差し引かれるので、実際に手にする金額は初任給として聞いていた額より少なくなるのです。でも、実は2年目に、さらに引かれるものがあります。それが「住民税」です。なぜ2年目から引かれるのか、そのナゾを解き明かします。

給料から引かれる社会保険料、税金には何がある?

給料から、どんなものが差し引かれるのでしょうか。初めてもらった給料明細に細かく書かれていますので、一度じっくりと確認してみましょう。大きくは、社会保険料と税金の2つ。これを「法定控除」といいます。

社会保険料には、厚生年金、健康保険、雇用保険があり、それぞれ所得に応じて金額が決まります。

ただし、厚生年金と健康保険に関しては、前月分を当月の給料から差し引く仕組みなので、多くの企業では5月の給料から差し引きます。つまり4月の給料から引かれる社会保険料は雇用保険のみというケースが多いのです。

4月の給料は、もともと1カ月フルで勤務していないので、所定の給料も少ないのですが、引かれる社会保険料も少ないので、実際に、「手取り額が少ない!」と実感するのは5月の給料ということになるでしょう。

税金に関しては、所得税と住民税が給料から差し引かれます。しかし、実は住民税は、社会人1年目は1円も引かれないのです。1年目に引かれるのは所得税のみです。ちまたで社会人2年目は給料が減ると言われるゆえんです。なぜ、住民税は1年目にはかからないのでしょうか。

住民税は2年目からのナゾ

所得税は、年間の所得に対して一定の税率で課税されるもので、本来は年末にならないと正確には年収がわからないはずです。しかし、会社員の場合は、ある程度、年間の所得が推定できるので、それに基づいて所得税額を決め、毎月の給料から天引きされるのです。ただし、実際の所得が確定するのは12月の給料が決まってから。そのときに「年末調整」がされて、過不足があれば12月の給料に反映されるというわけです。

住民税は、少し事情が違います。まず市区町村が住民税を決めるには、所得が確定していなければなりません。年間の所得が確定するのは12月。つまり12月になるまでは、市区町村は住民の所得を把握できないのです。所得が確定してから、翌年の1月1日現在で住民登録がある市区町村にその情報が送られ、住民税の算出が行われます。

そのため、社会人1年目に限り、住民税の支払いがないというわけです。確定した住民税の支払いは、6月から翌年の5月までの12回に分けて、給与から天引きされます。社会人1年目は住民税の天引きがないのは、こういうわけなのです。

ちなみに、住民税は「所得割」と「均等割」があり、所得割は前年の所得に対して課税されるもので、都道府県税4%、市区町村税6%の合計10%。均等割は収入の多寡に関係なく、一律に課税されるもので、都道府県税が年間1500円、市区町村税が3500円となっています。

実は、3年目にフルで引かれる

さらに住民税には注意が必要です。住民税は、前年の所得に対して課税され、翌年の6月から天引きされると書きました。そう、年間の所得に対してなのです。社会人1年目の年間所得は4月から12月の9カ月分です。ボーナスも少ないはずです。2年目から住民税が天引きされるとしても、その額は少なく済んでいるのです。

住民税は3年目からフルに課税されます。これが住民税で知っておきたいポイントです。2年目、3年目と給料が上がっても、実際の手取り額では、控除される額も増えるため、給料が上がったという実感を持てないという人が多いのは、こういうわけです。

こうしてみてくると、手取り額は、意外と社会人なり立てのころのほうが多いのかもしれません。ただし、税金は納税の義務があり、社会保険料は、自身の老後や病気ケガなどをした時の保障であり、失業したときの生活保障でもあるのです。

むやみに嘆くのではなく、きちんと自分の給料から、何にいくら引かれているのか、どんなメリットがあるのかをしっかりと理解するようにしましょう。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

伊藤加奈子

マネーエディター&ライター。法政大学卒。1987年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。不動産・住宅系雑誌の編集を経て、マネー誌『あるじゃん』副編集長、『あるじゃんMOOK』編集長を歴任。2003年独立後、ライフスタイル誌の創刊、マネー誌の編集アドバイザーとして活動。2013年沖縄移住を機にWEBメディアを中心にマネー記事の執筆活動をメインに行う。2級FP技能士。