昨年12月に総務省は、「SIMロック解除に関するガイドライン」を改訂し、今年5月から事業者に対して、改訂されたガイドラインに従ってSIMロックを解除することを義務化しました。さて、これって、いったい何がいいんでしょうか?

携帯事業者は総務省、メーカーは経済産業省が管轄

実は、この話は、ちょっと複雑です。なので、先に前提となる事実などをいくつか確認しておくことにします。

まず、SIMロック解除の義務化をなぜ総務省が推進するのかというと、通信行政は旧郵政省の管轄で、携帯電話などの事業者は、郵政省を吸収した総務省が管轄しています。ただし、通信行政といっても、スマートフォンなどの製造メーカーは、経済産業省の管轄化にあります。

日本は縦割り行政なので、総務省は、通信事業者については、指導することができますが、ハードウェアメーカーを直接指導することはできません。ただ、こうした通信機器の多くは「認証」を取る必要があり、間接的にスマートフォンや携帯電話を製造する企業のコントロールが不可能というわけでもありません。海外のメーカーであっても、日本国内で利用するためには認証が必要なので、ある程度の影響力はあるでしょう。

さて、総務省は、SIMロック解除の義務化について、昨年12月に改訂を行いました。2010年に一回、SIMロック解除についてのガイドラインを出したものの、これでは不十分だったと感じていたからだと思われます。

ただ、一般ユーザーからすると、SIMロック解除といわれても、あまりピンと来ません。ずっと同じ携帯電話事業者(以下MNO、Mobile Network Operatorと略す)を使っている人にはなんのメリットもありません。

また、いまのところ、ドコモとソフトバンクの間で使っていた携帯電話やスマートフォンを転用できる可能性(機種によって違いがある)があるだけで、KDDI(au)は、ドコモやソフトバンクから機器の持ち込みもできないし、逆にauで使っていた端末をドコモやソフトバンクに持ち込むこともできません。ドコモとソフトバンクも機器によっては、転用して通話が可能というだけで、周波数の違いなどから、必ずしもすべての地域で、すべての機種で転用ができるわけではありません。そう考えるとSIMロック解除でユーザーが受ける恩恵は小さいように思われます。