サイバー攻撃は、わが国が直面するもっとも深刻な脅威だ。われわれはこの問題に立ち向かうべく、シリコンバレーと協力していく――。

4月20日から5日間の日程で開催された情報セキュリティの総合カンファレンス「RSA Conference 2015」(米国サンフランシスコ・モスコーニ・センター)において、米国国土安全保障省長官を務めるJeh C. Johnson(ジェイ C.ジョンソン)氏は、サイバー攻撃に対する政府の取り組みについて語り、シリコンバレーに政府直轄の「サイバーセキュリティセンター」を設立する計画があることを明らかにした。

米国国土安全保障省長官 Jeh C. Johnson氏

同センターは、国土安全保障省が管轄する「国家サイバーセキュリティ通信統合センター(National Cybersecurity and Communications Integration Center:NCCIC)」のサテライトオフィスという位置づけ。政府機関と民間企業が連携し、24時間態勢でセキュリティ脅威の情報収集、監視、注意喚起を行う。Johnson氏は、「米国政府は、シリコンバレー(のIT企業)との協力関係を強化する。両者が研究や調査結果を共有することで、お互いの利益を確保していきたい」と述べた。

オバマ政権は、サイバーセキュリティ対策を喫急の課題と位置づけ、対策を講じている。2009年にはホワイトハウスにサイバーセキュリティ調整官を設置し、セキュリティ関連政策の統括をはじめ、省庁間の調整機能を強化した。また、2014年2月には、重要インフラ分野の組織や企業のサイバーセキュリティ強化を目的とした、「サイバーセキュリティ・フレームワーク」ガイドラインを策定している。

Johnson氏によると、今回の発表の2カ月前に、オバマ大統領はシリコンバレーのスタンフォード大学を訪れたという。

「我々は、シリコンバレーの"才能ある労働力"に、ワシントンへ来るよう説得したい。米国政府デジタル・サービス(The US Government Digital Service)は、こうした優秀な人材に対し、政府機関と民間企業を行き来できるようなオプションを用意している」(Johnson氏)

かねてからオバマ大統領は、大手ITベンダーや主要なセキュリティベンダーの幹部と情報交換を行っている。今回のサテライトオフィス設立は、そうした取り組みを具現化したものだと言える。

最後にJohnson氏は、暗号化とプライバシーの問題にも触れた。サイバー攻撃に対抗するため、より複雑な暗号化技術が用いられるようになっているものの、国家安全保障の観点から見ると、複雑な暗号化は"チャレンジング"だという。

Johnson氏は、「政府は個人のプライバシーを侵すつもりは毛頭ない」としたうえで、「国土安全保障省はサイバーセキュリティを強化すると同時に、テロに立ち向かう任務も負っている。複雑に暗号化された情報から、(テロのような)犯罪活動の兆候を見つけ出すには、(RSA Conferenceに参加している)皆さんの助けが必要だ」と語りかけ、講演を締めくくった。