「AACクリニック銀座」の浜中聡子院長

世の多くの女性が、一度はダイエットにトライした経験があるだろう。そして、「スリムでいたい」という女性の願いに応えるべく、「バナナダイエット」「ヨーグルトダイエット」「糖質制限ダイエット」など、ダイエットを冠するさまざまなメソッドが生み出されてきた。

ただ、その中には食事量を極端に減らすものや、何か一つの物だけを食べ続けることによる栄養不足を招くものなど、体に過度の負担をかけるものも少なくない。

それでは、一体どのようなダイエットが理想的なのだろうか。"本当にいいダイエット"を学ぶべく、動脈硬化や高脂血症などの生活習慣病を未然に防ぐ「予防医学」に係る知識などを患者に提供する「AACクリニック銀座」の浜中聡子院長に話を伺った。

米国メディアで話題のDASHダイエット

浜中院長は「食べないダイエットは言語道断」と、しっかりと食事をしながらやせていくことが重要だと指摘。「ちゃんと食べたうえで、食事量を減らすのであればバランスよく減らしていくことが大切です」。炭水化物やたんぱく質、脂質などの栄養素のどれかを極端に減らすのではなく、すべての栄養素を一律にバランスよく減らしていくことが好ましいという。

すなわち、「バナナダイエット」や「ヨーグルトダイエット」のような、ある食品だけもしくはある食品を重点的に摂取していくダイエットは体によくないということだ。

食事量を減らす場合、栄養バランスに配慮するようにしよう

栄養バランスに配慮したダイエット法は、「肥満大国」とも言われる米国でも近年注目を集めている。特に米国メディアで話題となっているのが、「DASHダイエット」と呼ばれる方法だ。

「端的に言いますと脂肪、塩分、糖分、アルコールは控え、逆に野菜や果物、ナッツ、大豆、脂の少ないたんぱく質を多めに摂(と)るというものです。体格差はありますが、おおよそ摂取カロリーは2,000kcal/日に抑えています」。

たんぱく質と野菜は毎日摂取しよう

ではそのDASHダイエットを実践するうえで順守すべき項目を一つひとつ説明していこう。

糖分、脂肪を極力避ける

糖分の目安は1週間に大さじ5杯と、甘党にはかなりショックであろう数字となっている。「ドーナツ1個でアウトなので、糖分の制限は結構厳しいです」(浜中院長)。できる範囲で摂取量を減らすよう努めた方がよさそうだ。脂質に関しては、オリーブオイルなどの植物性油を用いるのがよいとのこと。

乳製品はノンファットや低脂肪を選ぶ

日本人は比較的乳製品の摂取が多いそうなので、日ごろから商品選びの際に意識したいところだ。

たんぱく質は魚と鶏肉を中心にし、赤身肉は避ける

「赤身肉自体が悪いわけではありません。牛の赤身肉は鉄分が豊富に含まれていますし。ただ、太りたくない方は牛の赤身肉などは脂肪が多いので避けざるを得ないでしょうから、その特色を知って鶏肉などとうまく食べ分けてください」(浜中院長)。

野菜・果物を豊富に摂取し、炭水化物は全粉穀物を中心に選ぶ

野菜・果物は、砂糖を大量に使用した缶詰製品ではなく、サラダなどちゃんとした野菜の形状になっているものをしっかりと摂取することがポイント。全粉穀物は繊維質が豊富のため、腹もちがよく満腹感も得られやすいというメリットがある。

塩分を控える

塩分摂取を控えると体重が落ちることは、これまでにも証明されている。そのためにも、「薄味に慣れるということを若いときからしておくといいです」(浜中院長)。自炊の際は「ちょっと物足りないかな」くらいの味付けにするといいだろう。

その他にも、「アルコールを控える」「カリウムやカルシウム、マグネシウムが豊富な食べ物を摂取する」「一日30分のエクササイズをする」などもDASHダイエットで守るべき項目に該当する。

DASHダイエットで実践すべきこと

いきなりすべてをやることは難しいだろうが、「良質なたんぱく質と野菜を摂(と)る」ということだけは、必ず毎日実践してほしいと浜中院長は話す。

「DASHダイエットをするにあたり、『体重がここまで減ったら終わり』とか『何日間限定だからやります』というわけではなくて、これらの項目をライフスタイルとして生活の中に取り込んでいかないといけません。体重が減ったり戻ったりする中で、この生活がだんだんと苦にならないようにすることを、4~5年かけてでもやっていただきたいです」。

過度のダイエットは薄毛・抜け毛の原因にも

AACクリニック銀座を訪れる患者の約4割がダイエット経験者であり、特に30代ではその数は約6割にものぼるという。ただ、近年は「一日1食」などの過度のダイエットによるさまざまな"弊害"も見られるようになってきたと浜中院長は指摘する。

絶食や嘔吐などによるダイエット方法を10代から10年間続けた40代の女性の写真。来院時(上)はかなり薄毛であったことがわかる

その一例が「抜け毛・薄毛」だ。食事を抜くことなどでカロリーの摂取量を減らすと、髪の毛の成長に必要な栄養素が不足し、薄毛の原因になる。浜中院長は、「低栄養に陥ると、髪の毛の製造工場といえる『毛乳頭』の成長が極端に妨げられます。過度な食事制限は絶対にやめていただきたいです」と警鐘を鳴らす。

特に女性は「夏に水着を着るまでに間に合わせたい」など、すぐさまダイエットの成果を求めがちで、食事制限だけで体重コントロールをしようと試みるケースが多いそうなので注意してもらいたい。その他に便秘や貧血、生理不順、脱水、骨粗しょう症なども間違ったダイエットによって引き起こされる可能性があることを念頭に置いておこう。

まずは自分のできる範囲から始めよう

ダイエットをする際は、どうしてもすぐに結果を求めがちになりやすい。だが、時間をかけておなか周りや脚、二の腕などに蓄積させた脂肪を、絶食やいわゆる「ばっかり食い」などによって、わずか1カ月や2カ月で落とすというのは、ある意味虫がいい話と言える。

まずは、「体に無理のない範囲で中長期的に体重を落とすことが基本」という認識を持つことが大切。そのうえで、「コーヒーや紅茶に使う砂糖を減らす」「外食時には鶏肉や魚のメニューを意識的に選ぶようにする」「エスカレーターではなく階段を使う」など、自分にできるところから始めてみてはいかがだろうか。