「ブルーボトル」の日本上陸によって「サードウェーブ」という言葉をよく聞くようになった。アメリカで誕生したコーヒー文化のサードウェーブでは、1杯1杯ハンドドリップで淹れる職人的なスタイルが確立されているのだが、その前のセカンドウェーブはシアトル系の雄・スターバックスが牽引していったものだった。

と、ここで……。シアトル系という言葉、読者の皆さんは説明できるだろうか。対の言葉として、「イタリア系」というワードもあるのだが、それぞれ違いをしっかりと把握している人は少ないかもしれない。そこで今回は、原点に立ち返ってシアトル系とイタリア系カフェの違いについて触れていこう。島根県松江市のカフェ「CAFFE VITA」オーナーである門脇裕二さんに解説していただく。

エスプレッソマシンの向きを見てみよう

イタリア系とシアトル系の違い。個人的な見解を含んだ答えで、しかしながらお店によってケースバイケースであるということをお断りした上でお話していきます。

まず店を見て気づくのがエスプレッソマシンの向きです。お客さんに対してエスプレッソマシンが背を向けているか、抽出している様子が見える表向きか、の違いです。シアトル系のチェーン店(スターバックスやタリーズなど)などでよく見るのは、マシンが背中を向けているスタイルです。これは、バリスタがお客さんと会話をしながらドリンクをつくるためにうまれたマシン配置です。この会話をしながらつくるスタイル、シアトルでは一般化していて、ほとんどのお店ではお客さんと会話しながらドリンクをつくっています。実際に、「今日疲れてるなら、ドリンクを甘くしとくね」なんてバリスタが言いながらつくっていました。

エスプレッソマシンの背面を客側に向けているのがシアトル系。バリスタはお客さんと対面になるので会話がしやすくなります

一方イタリア系(セガフレードなど)は、お客さんにエスプレッソの抽出を見てもらえるよう、エスプレッソマシンが正面を向いています。うちの店もこのスタイルです。お客さん側から、抽出やバリスタの動きが見えて楽しいですから。もしかしたらバーテンダーと同じで、動きを見せるからこのスタイルが生まれたのかもしれないですね。

お客さんからはエスプレッソマシンの正面(抽出側)が見えるイタリア系の配置

次はエプロンですかね。一概には言えませんが、シアトル系のお店って首からかけるエプロンが多い気がします。もしくはカジュアルにエプロンをしてなかったり。イタリア系はどちらかと言うと、ソムリエエプロンと言われる腰から下のロングスカートみたいなタイプのエプロンが多い気がしますね。

熱めのカフェラテ、ぬるめのカプチーノ

メニュー面でも違いがあって、メニュー構成がシンプルなのもシアトル系の特徴といえるかもしれません。カフェラテ、エスプレッソ、加えてそれぞれをフレーバーシロップアレンジしたもの。イタリア系なら、アレンジコーヒーはフレーバーシロップは使わず、リキュールで味付けします。

またカプチーノとカフェラテの違いもあるかもしれません。カプチーノはイタリア生まれの飲み物で、カップは逆三角の陶器製、容量は150ml~180mlのものを使います。これ以上の容量になると、カフェラテと表現されます。

シアトル系は、カプチーノではなくカフェラテと表現するお店が多いと思います。シアトル系にもカプチーノはありますが、ミルクフォームが多めのカフェラテといった感じになります。

さらに細かく見ていくと、シアトル系のカフェラテとイタリア系のカプチーノは「温度の差」もあると思います。

シアトル系は海に近い立地のシアトル発祥。漁師達が海から上がってきて、ぬるいラテを飲もうものならクレームに繋がります。なので、少し高めの温度で作っているお店が多いようです。「エクストラホット」という注文ができるのもそこから生まれたかもしれないですね。そしてイタリア系はどちらかと言うと若干ぬるめ。実はエスプレッソ自体もそれほど熱くなく、それと同じぐらいの温度のミルクを合わすのがおいしいと考えている様子です。あとは、猫舌文化もあるかもしれません。

ラテアートとデザインカプチーノの違いは?

読者の皆さんの中には「ラテアート」という言葉を聞いたことがあるという人、いるのではないでしょうか。エスプレッソが入ったカップにピッチャーからミルクを注ぎ入れ、ハートやリーフなどの模様をフリーハンドで仕上げるアレです。ミルクの対流を使って、模様を描いていきます。

一方で、「デザインカプチーノ」という言葉をご存知の方もいるのでは? ウサギや猫などの絵がふわふわの泡の上に描かれているカプチーノです。こちらはピックを使って絵を描きます。絵を描くためにはある程度のミルクフォームが必要で、しかしながらカプチーノのカップ容量は前述の通りカフェラテより少なめ。よって、味わいは比較的濃いめのコーヒー牛乳な感じといえば良いでしょうか。

以上、色々と書きましたが、次にカフェに入ったときは、これまで解説してきたような観点でお店を見るのも楽しいかもしれません。また、シアトル系とイタリア系の良い部分を合わせて1つのお店となっているところもあります。一度観察してみてください。