ニフティは3月20日、東京都新宿区にある同社の本社セミナールームで「クラウド導入の3ステップ!選定・移行・運用の秘訣」と題したイベントを開催した。本イベントはパブリッククラウドについて、選定/移行/運用というステップごとのポイントを紹介するというもの。

クラウド選定のポイント

まずは「ステップ1<選定>クラウド選定のポイントとは? パブリッククラウド市場におけるニフティクラウドの強み」と題して、ニフティ クラウドマーケティング部の小出麻友美氏が講演を行った。

ニフティ クラウドマーケティング部 小出麻友美氏

小出氏は冒頭で、IaaS/PaaSに関するシステム別市場動向の調査結果を挙げ、「クラウドといえば従来はゲームやWebサービスなどエンターテインメント系に使われる傾向が強かったのですが、ここ数年で基幹系/情報系/バックアップといった業務利用の占める割合が急激に増加してきました」と市場背景を語る。

日本国内だけでも10種類以上のパブリッククラウドサービスが乱立する中、サービス提供から5年で導入実績が3,500件を突破(2015年1月現在)した同社の「ニフティクラウド」は、国産クラウドサービスとしてトップシェアを獲得している。ゲームから医療まで幅広い業界で採用されており、オンプレミスで運用していたグループウェアを移行するなどクラウド化の対象システムと利用方法も多彩だ。

こうした“ニフティクラウドが選ばれる理由”と“パブリッククラウドを選定するポイント”として小出氏は、「性能の高さ」、「柔軟性の高さ」、「信頼性の高さ」の3点を挙げ、ディスクのI/Oやネットワーク性能など、カタログスペックだけでは分からないポイントや、サーバータイプのバリエーションや機能の充実度、SLA(Service Level Agreement:サービス品質保証制度)の数字と対象となる条件やサポートの充実度などを確認することの重要性を説明。

「クラウドはベストエフォート型のサービスなので、カタログでの単純比較は危険な面もあります。無料トライアルなどを活用し、実際の性能を確かめてみるのも良いでしょう」と、クラウド選定における注意点をアドバイスした。

サーバ移行時は対応OSや設定に注意

続いてはニフティ クラウドインフラ部の酒井浩平氏が「ステップ2<移行>実例と経験則からのポイント クラウド移行の“勘所”とシステム構成ベストプラクティス」と題した講演を行った。

ニフティ クラウドインフラ部 酒井浩平氏

酒井氏はまず、クラウド導入にあたり上層部を説得するパターンとして「投資を見える化するため」「新しい開発プロセスの基盤だから」「他の会社も使っている」といった例を紹介。上層部から上がる懸念に対する受け答えとして、「セキュリティ面の不安 → 悪化することはなく、むしろ運用の手間が減る」、「高いのでは? → サーバー本体以外の設置/回線/ラック費/保守・管理/廃棄コストなど含めて考える必要がある」といったバリエーションも紹介した。

さらに、ニフティが本社を移転した際の「サーバールーム移設プロジェクト」を事例として挙げ、移行のポイントについて解説した。

移転前のニフティでは、WebサービスやISPサービス提供サーバーこそデータセンターで運用していたが、オフィスの片隅にはまだ歴史的な遺産として約300台ものサーバーが残存。経営者層の「BCP的な観点に加え、クラウド提供会社としてクラウドをフル活用する意味でも、新オフィスにはサーバールームを設置しない」という方針により、サーバーをクラウド上へ移行することになったそうだ。

そこで同プロジェクトでは、約300台のうち約200台の物理サーバーを廃棄。残りのサーバーについては、物理環境を仮想化する「P2V(Physical to Virtual)」、仮想化したサーバーをクラウド環境へ移す「V2C(Virtual to Cloud)」という手順でクラウド化を行った。

ヒアリングによる事前調査では、「アプリやサポートの都合でOS刷新ができない」「ライセンスの関係で再インストールできない」といったサーバーもあり、移行対象を絞り込んでいったそうだ。

「サーバーのクラウド化にあたっては、OSが対応しているか、クラウド上へ持ち込み可能な設定かどうかを事前にしっかりと確認しておいてください。時にはP2Cでの移行を諦めることも大切です」、「移行に合わせて段階的にクラウドに構築しなおすことも考えましょう」と、酒井氏は移行のポイントについて語った。

運用アウトソースの活用で課題を解決

「ステップ3<運用> クラウドで求められるサーバー運用とクラウド活用におけるビジネスチャンス」では、ジグソー セールスグループの尾崎博人氏が登壇。まず講演の前半では、クラウドで求められるサーバー運用について解説した。

ジグソー セールスグループ 尾崎博人氏

尾崎氏は「クラウドサーバーは、簡単かつ数分で新しいサーバー環境が構築でき、なおかつ即リリースできる利便性が魅力です。とはいえ、クラウド環境の構築・運用方法が分からない企業もまだ多く、弊社ではクラウド導入支援サポートを提供しています」と語る。

この支援サポートは、クラウド導入に関する計画から設計・準備、導入・移行、運用・監視に至るまで幅広い対象範囲が特徴だ。

ここで尾崎氏は、クラウドの統合運用管理についてのアンケート結果を挙げ、その大半が人材不足に関連する課題であることを指摘。「システム運用にあたっては内外部の経営要素やIT要素など企業を取り巻く環境に応じて、ビジネスニーズ対応スピードの限界、運用コストの高騰、自社要員のリソース不足、ブラックボックス化、ノウハウの属人化、運用品質の不安定さといった、実にさまざまな課題が発生します。しかし運用アウトソースを活用すれば、こうした課題は一気に解決できるのです」と解説。具体的にニフティクラウドの導入事例として、ネットスーパー向けECシステムの案件を紹介した。

同氏は講演の後半で、クラウド活用におけるビジネスチャンスについて解説した。

「2020年には、インターネット上の情報量が約40ZBになると予測されています。また、2020年には全情報の3分の1がクラウド上に置かれる、もしくはクラウドを通過するという予測もあり、爆発的に増加する情報をどのように扱っていくのかがポイントです」と語る尾崎氏。さらに、2020年には約365兆円規模になるといわれる“IoT市場”に注目し、ここに新たなビジネスチャンスが見出せるという。

「膨大な情報を処理する上で、今後は人工知能による自動化が求められます。今後は生産年齢人口が大幅に減少する見込みですが、こうした状況においてもシステム開発の高速化、迅速なリリース、エンドユーザーの反応を見て改善・廃棄する、といった処理が自動で行えれば、要員不足の影響を受けづらくなるわけです」と尾崎氏。

こうした観点から、ジグソーでは運用と自動化を組み合わせた「A&Aサービス」を提供している。これは多くの情報を機能学習し、情報処理能力を最大限活かす自動運用サービスで、“膨大な情報量を処理するために何が必要か”という問いに対して同社が出した答えのひとつだ。

イベントの最後には、ニフティクラウドを60日間無料で試せる「ニフティクラウド トライアル」、価格感を確認できる「ニフティクラウド 見積シミュレーター」、ニフティクラウドをプリペイド形式で利用できる「ニフティクラウド クレジット」なども紹介。ニフティクラウドの使いやすさをアピールし、セミナーは盛況のうちに幕を閉じた。2015年4月1日からは、ニフティクラウドを10万円分まで無料で利用できるキャンペーンも開始されている。WEBから簡単に申込ができ、約10分で実際に利用可能な状態になるため、ぜひ一度試してみてはいかがだろうか。