【レポート】

「ファンは最終手段だった」 - 担当者に聞く「m-Stick」新モデル開発の裏側

 

既報の通り、マウスコンピューターはWindows 8.1搭載のスティック型PC「m-Stick」の新モデルとして、筐体にファンを設置した「MS-PS01F」を発表した。このところ、大きな盛り上がりを見せるスティック型PCの新モデルだけに、注目度も高い。

今回も開発担当者であるマウスコンピューター製品企画部の部長 平井健裕氏に話を伺うことができたので、新モデルの特徴や既存モデルとの違いなどを聞いた。

マウスコンピューター製品企画部の部長 平井健裕氏

人気が続く「m-Stick」

まずは「m-Stick」について、簡単におさらいしておこう。「m-Stick」はマウスコンピューターが開発・販売するスティック型PC。HDMI端子を備えたテレビやディスプレイに接続することでPCとして利用できる。

m-Stick MS-NH1

2014年11月28日にファンレス仕様の「MS-NH1」を発表。それまでのスティック型デバイスはOSにAndroidを採用しているものがほとんどだったが、「m-Stick」はOSにWindows 8.1を搭載し、大きな注目を集めた。2014年12月5日の発売日には、マウスコンピューターの直販サイトでわずか数秒のうちに売り切れとなり、その後も長らく品薄の状態が続いた。

「具体的な数はいえないが、"想定を間違えたでしょ"といわれるぐらいに、当初の予想を大きく超えた数をお買い上げいただいている」と平井氏。ただし、「最初に製品を紹介したときに"作りためをして、品薄にならないようにしたい"といっていたが、3月くらいまで品薄の状態が続いてしまい、みなさんにご迷惑をおかけした」という人気モデルならではの悩みもあったようだ。

それだけ売れに売れている「m-Stick」だが、購入したユーザーはどのような用途で利用しているのだろうか。平井氏によると「出張や旅行といった外出先で、手持ちのノートPCに何かあった場合のバックアップとして持って行かれる方が思った以上に多い」という。「m-Stick」の小型軽量ボディという特徴に加えて、税込19,800円という手軽さ生かした用途といえる。

64GBモデルは数量限定でまもなく販売終了

2015年3月6日には「MS-NH1」のストレージを64GBに強化したモデル「MS-NH1-64G」を発表した。こちらも好調に販売されているのだが「64GBモデルは数量限定で、近いうちに販売を終了する」という。

まもなく販売終了だというm-Stick MS-NH1-64G

「m-Stick」では、最新のアップデートが適用された状態で、アップデートのスタックをできるだけシュリンクし、容量を稼いだイメージをプリインストールするなど、できる限りストレージを空ける工夫が取られているのだが、それでもストレージはあればあるほどうれしい。64GBモデルの購入を検討しているユーザーは早めにチェックした方がいいだろう。

続く2015年3月27日には、グループ会社のユニットコムからもWindows 8.1搭載のスティック型PC「Picoretta」が発売された。この製品の設計・開発もマウスコンピューターが行っている。

ユニットコムで取り扱うPicoretta

「Picoretta」は、基板を覆う大きなヒートシンクを採用する。そのため「MS-NH1」よりも一回り程度大きく、重量も約1.5倍となるが、冷却能力は向上する。小型軽量モデルがよければ「MS-NH1」、本体サイズや重量よりも冷却能力が重要なら「Picoretta」と用途に合わせて選択できる。

筐体のカバーを外したところ。左がPicorettaで右がMS-NH1。Picorettaは基板全体を覆うようなヒートシンクが特徴だ

いよいよファン付きモデルが登場

そして2015年4月1日、筐体にファンを搭載した「MS-PS01F」が発表された。「MS-PS01F」では、ファン搭載に向けて筐体を新たに設計した。こちらもファンがある分、筐体のサイズは大きくなるが、ファンの冷却によりパフォーマンス向上が見込まれる。

ファンを搭載したMS-PS01F

「ファンは最終手段だろうと考えていた」と平井氏。ファンによる効果は想像しやすい。開発でもまずファン付きが検討されたが「何でもファンを付けたらいいというのは、技術的に負けなので、何とか手はないかと考えた」(平井氏)という。ファンレスモデルやヒートシンクモデルが先に発売となったのはそうした背景がある。

もちろん、平井氏はファン付きモデルを否定しているわけではない。「スティックPCにさまざまなバリエーションを用意させていただく前提であれば、ファン付きもまた有りだろう」と考えたのだという。

「MS-PS01F」に搭載されたファンはSUNON製で、CPUの温度に応じて回転数が可変する。ノイズレベルは1mの距離で25.6dB(A)。当たり前だが無音とはいかない。ただし、平井氏によると音が出ているテレビの裏に取り付けてもほぼ気にならない程度とのことだ。冷却性能は、負荷継続時で「MS-NH1」と比べて10度の温度低下が見られたという。

見せてもらったのは試作段階のもので、筐体の色は白だが、製品では黒の筐体となる

ファンはSUNON製を採用する

ファンを搭載することによる冷却効果。ファンレスモデルよりも10度の温度低下を実現し、その分ターボブースト枠の維持を行う

違いはハードウェアだけではなかった。

ファンレスモデル「MS-NH1」、ヒートシンクモデル「Picoretta」、ファン付きモデル「MS-PS01F」がそろったわけだが、この3モデルはハードウェア面だけではなく、それぞれBIOSも異なっている。それをまとめたのが以下の表だ。

各モデルの違いをまとめたもの。それぞれで異なるBIOSを搭載する

まず「MS-NH1」には3種類のBIOSがある。最初の「A05」はブースト機能であるIntel Burst Technology(IBT)が無効で、GPUクロックは646MHzに固定されている。続いての「X18T」は2014年末からサポートページを通じて公開されたCPU性能を重視するバージョン。IBTを有効とし、GPUクロックを313MHzに落としている。最後の「A06」はIBTが無効で、GPUクロックは646MHzに固定と「A05」と同じように見えるのだが、平井氏によると「A06」CPUのステート管理を変更し、同社が「T2」と呼ぶCPUステートが加えられたのだという。

次のグラフは「ぎりぎりコマ落ちしない程度」のフルHD動画を再生した際の、CPUやGPU、CPU温度の推移を示したものだ。青い線で示されたCPUクロックの動きをみると、「A05」では上限の1.33GHzとアイドル時の500MHzの間で頻繁に線が上下しているが、「A06」ではクロックの上がる頻度が抑えられている。その分発熱しにくく、マージンが確保できる。「A06」は64GBモデルの投入と同時に採用したバージョンだが、検証が済み次第、初期に出荷された32GBモデル向けにも提供を予定する。

BIOSによる動作の違い。最新の「A06」ではCPUの動作が最適化されている

また、「Picoretta」と「MS-PS01F」はともに「09」というバージョンのBIOSを採用するのだが、ここでも違いがある。「Picoretta」の場合は、IBTが無効でGPUクロックが646MHz固定。一方「MS-PS01F」は、IBTが有効でGPUクロックも313~646MHzの範囲で可変となっている。これらのBIOSについても、現状よりもよい設定が見つかれば「MS-NH1」と同様に新しいバージョンを公開するという。

いずれのモデルもCPUにはIntel Atom Z3735Fを搭載するが、BIOSや冷却システムの違いによりパフォーマンスがことなる。マウスコンピューターが参考値として公開した資料によると、やはりファンを搭載する「MS-PS01F」がベンチマークで最も高いスコアとなる傾向があるのだが、「モンスターハンターフロンティア」のベンチマークテストを見ると、「MS-PS01F」が最も低いスコアとなっている。これはGPUクロックが変動するためで、用途によってはクロックを固定した方がパフォーマンスが出やすいことを示している。

用途に合わせて選べる3モデル

ベンチマークのスコアや冷却システムによって、「MS-PS01F」や「Picoretta」は「MS-NH1」の上位モデルという形に見えてしまう。しかし、「3モデルでどれが上位ということではなく、それぞれが特徴のある設計となっているので、用途に合わせて選んでほしい」と平井氏がいうように、それぞれのモデルで長所と短所がある。

例えば「MS-NH1」は、ほかのモデルに比べて冷却という面では弱い部分があるが、最も小型軽量なことに加えて、販売期間が長いため前述のBIOSやドライバの最適化が進んでいる。

「Picoretta」は大型のヒートシンクで冷却性能を向上させ、より幅広い環境に適用できるが「MS-NH1」の約1.5倍の重量がある。また、発熱への耐性が上がった一方で、いったん温度が上がり切ってしまうとなかなか下がりにくいという。

「MS-PS01F」はファンよる冷却によって、CPUのパフォーマンスをより引き出せるほか、高負荷時でも安定動作が見込める。一方で、ファンのノイズや駆動部分の故障、ほこりへの耐性の弱さといった弱点がある。

各モデルの特徴を見極め、自分の用途に合った製品を選ぶのがいいだろう。ちなみに平井氏は「MS-NH1」がオススメで「スティック型PCを試してみたいという場合、まずMS-NH1を選んでもらえれば」という。

競合製品にはサポート力で対応

さて、Windows搭載のスティック型PCというと、2014年4月2日にインテルが「Compute Stick」の国内販売を発表。代理店や主要なPCショップで4月30日の発売を予定している。これに対して平井氏は「マウスコンピューターは、すでに4カ月ほど販売実績があり、スティック型PCについてかなりノウハウを蓄積している」とし、サポート面での強みを強調する。

「m-Stick」には、ユーザーからのフィードバックも数多く寄せられている。例えば無線LANについてだ。テレビやディスプレイの裏などは、環境にもよるが、無線LANの電波が届きにくい場所が多く、無線LANがつながらないという問い合わせがあったという。これに対して、マウスコンピューターでは「速度は遅めだが無線LANにはつながりやすいもの」や「速度が出やすいもの」など3種類のドライバを用意し、ユーザーに提供している。

また、発熱に関しては前述したようにBIOSの見直しに加え、「Picoretta」や「MS-PS01F」といった冷却性能を高めたモデルの投入で対応する。

今後の展開

最後に「m-Stick」の今後について聞いた。まずWindows 10については、現行モデルのユーザーに向けて必ず「何らかの形」でアップグレードのパスを用意したいという。

さらに次世代の製品として、現状販売されている3モデルと同じレンジで、筐体デザインを変えずに14nm世代のIntel Atomを搭載したモデルを計画するほか、その上位モデルとしてよりハイパフォーマンスなCPUを搭載モデルの投入も予定する。

このほか、デザインの大幅な変更はないが、筐体に盗難防止用の対策を施すことも検討しているという。

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