フランスの風景にカフェは欠かせない

フランス・パリの街角、歩道にせり出すように席が設けられたカフェ。思い思いにくつろぐフランス人が飲んでいるコーヒーはどのようなものかご存知だろうか。コーヒーはフランス語で「cafe(カフェ)」、喫茶店を意味する「カフェ」と同語である。そしてこの「カフェ」の正体は、ずばり「エスプレッソ」! 日本の標準的な濃さのコーヒーを飲みたい時には一知恵必要だ。

エスプレッソをうんと甘くが定番

カジュアルなカフェから正統派フランス料理のレストランまで、フランスで「カフェ」を頼むと、出てくるのは小さなカップのエスプレッソだ。観光客慣れした店では、注文を聞いて「エスプレッソ? 」と確認してくれることもある。

カフェで長時間ねばるには物足りない量だが、こってりした食後の締めにはエスプレッソの苦みがちょうどよい。大抵のフランス人はこの小さなカップに砂糖をしっかり入れ、甘くして飲む。カップの脇に添えられた、小さなビスケットやチョコレートなどをかじりながら。

では、日本でのように、より薄くたっぷりした量のコーヒーを飲みたい時には何を頼めばよいのだろう。正解は「cafe allonge(カフェ・アロンジェ)」。エスプレッソをお湯で薄めたコーヒーだ。店によっては「cafe americain(カフェ・アメリカン)」を提供しているところもある。この2つは、正式にはベースにするコーヒーがエスプレッソかドリップコーヒーかの違いがあるのだが、ほとんど区別されていないのが実情だ。

メニューに「カフェ・オ・レ」がない!?

フランスで「カフェ」と言えば「エスプレッソ」が出てくる

「ミルク入りでコーヒーはたっぷり」を飲みたければ「cafe creme(カフェ・クレーム)」を。日本でフランス流コーヒーの代表とみなされている「cafe au lait(カフェ・オ・レ)」は、フランスではメニューに載っていないことが多い。カフェ・オ・レが飲みたければカフェ・クレームを注文しよう。2つの違いには諸説あるが、本場フランスではカフェ・オ・レは基本的に朝の飲み物なのだ。

また、「カフェ」に少量のミルクを入れた「cafe noisette(カフェ・ノワゼット)」もよく飲まれる。「カフェ」と同じく小さなカップで、エスプレッソをややマイルドにして楽しめる。

フランス人の家庭での飲み方

従来、インスタントコーヒーやドリップコーヒーが一般的であった家庭でも、この5年ほどでエスプレッソへのシフトがめざましい。これは、ネスレ社のエスプレッソマシン「ネスプレッソ」の普及によるところが大きい。

ネスプレッソは俳優のジョージ・クルーニーのテレビCMで知られる、手軽に楽しめるカプセル式のマシンだ。カプセルも10個1箱で3.5ユーロ(約450円)からと比較的安価で、スーパーやコーヒー専門店では互換カプセルがさらに安価で購入できる。パリに限れば、今や一家に一台に迫る勢いだ。

朝はカフェ・オ・レも健在である。複数のフランス人に教えてもらったお手軽レシピを紹介しよう。お湯を一切使わずミルクのみを温め、これにインスタント・コーヒーを溶かすだけ。ミルクもコーヒーも風味濃厚なカフェ・オ・レが手早くできる。フランス人好みのインスタントカフェオレ、ぜひお試しあれ!

※cafe、allonge、americain、cremeは、それぞれ「e」の上にアクセント記号がつく
※1ユーロ=130円で換算。記事中の価格・情報は2015年4月のもの。写真はイメージで本文とは関係ありません

筆者プロフィール: 岡前 寿子(おかまえ ひさこ)

東京在住の主婦ライター。ご近所の噂話から世界のトレンドまで、守備範囲の広さが身上。渡仏回数は10数回にのぼり、2年弱のパリ在住経験がある。所属する「ベル・エキップ」は、取材、執筆、撮影、翻訳(仏語、英語)、プログラム企画開発を行うライティング・チーム。ニュースリリースやグルメ記事を中心に、月約300本以上の記事を手がける。拠点は東京、大阪、神戸、横浜、茨城、大分にあり拡大中。メンバーによる書籍、ムック、雑誌記事も多数。