【レポート】

学生が世界に向けて飛び立つマイクロソフトのImagine Cup、日本代表は"風"が決め手に

 

米Microsoftが主催するITコンテスト「ImagineCup」は今年で12回目の歴史を持つ。昨年は34カ国、約7500チームが参加するなど、世界最大規模の学生向けITコンテストだ。昨年は、三重県 鳥羽市の鳥羽商船高等専門学校が日本代表として出場したが、今年はどんなアイディアを持ったチームが日本代表として世界へ羽ばたくのだろうか?

世界大会への足がかり

11日に行われた日本大会は、1チームだけ日本代表として駒を進めることができる世界大会への予選会になるのと同時に、ゲーム部門とワールドシチズンシップ部門、イノベーション部門と、三部門のトップを決める大会でもある。世界大会へ挑戦できるチームは1チームだけと、少々寂しいものだが、それぞれの部門で実力者たちがプレゼンテーションで熱い火花を散らした。なお、学生向けのITコンテストであるため、出場者は全員高校生か高専生、専門学校生、大学生となる。中には25歳の高校生も出場しており、「私は25歳の高校生です!」とプレゼン中に雄叫びをあげていた。

作品名 チーム名 所属
ゲーム部門 Fleeting Light トライデントコンピュータ専門学校
PicGather Creative House バンタンゲームアカデミー
TWIDIVER RTableProject 専門学校HAL大阪
作品名 チーム名 所属
ワールドシチズンシップ部門 CHILDHOOD CHAMPIGNON 筑波大学
HackforPlay HackforPlay 石川高専
jThird Web3D Makers 東京都立新宿山吹高等学校と慶應義塾大学、東京大学
作品名 チーム名 所属
イノベーション部門 すくえあ(SCREEN feels AIR.) すくえあ 香川高等専門学校
P.M.Karaoke MOOMAN 鳥羽商船高等専門学校
Robograph Robograph 大阪府立大学と同志社大学、立命館大学

審査員には、マイクロソフトと共同で中学生や高校生を対象としたプログラミング教育のワークショップ企画・運営などを行った実績を持つライフイズテック 代表取締役の水野 雄介氏やギブリー 取締役の新田 章太氏、産業技術総合研究所の情報技術研究部門で首席研究員を務める後藤 真孝氏、明治大学 総合数理学部 ネットワークデザイン学科で准教授を務める秋岡 明香氏が名を連ねた。

ライフイズテック 代表取締役 水野 雄介氏ら5名

また、マイクロソフトからも、マイクロソフトディベロップメントでOffice 開発統括部プログラムマネージャーの鵜飼 佑氏と日本マイクロソフト 執行役 デベロッパー エクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部長の伊藤かつら氏、同社 エマージングテクノロジー推進部 部長 兼 Microsoft Ventures Tokyo代表の砂金 信一郎氏(伊藤氏と砂金氏は最終審査員)が審査員に就いている。

日本マイクロソフト 執行役 デベロッパー エクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部長 伊藤かつら氏

同社 エマージングテクノロジー推進部 部長 兼 Microsoft Ventures Tokyo代表 砂金 信一郎氏

最優秀賞のチームは?

最優秀賞を勝ち取ったすくえあメンバーら

タイトルと出場チーム一覧から見て、察しが良い読者の中には「このチームが優勝したんだな」と思った人がいるかもしれない。初めに結論を言ってしまうと「すくえあ(SCREEN feels AIR.)」のすくえあがイノベーション部門の部門賞を勝ち取り、全体の日本代表にも輝いた。

すくえあは、サブネームのSCREEN feels AIR.の通り、風を感じるディスプレイを発表した。これはユーザーが風を感じるのではなく、ディスプレイが風を識別し、それに対応するアプリケーションで遊べるというものだ。ディスプレイには約800個のセンサーを敷き詰めており、センサーはフィルムと磁石、磁気センサーで構成されている。

フィルムに磁石を貼り付けており、風を当てるとフィルムが奥へ流れ、磁界の揺れを磁気センサーが検知。この値の変化を風圧として換算することで風の動きを感じるディスプレイとして完成ささせたわけだ。なお、本当の意味での"ディスプレイ"にはプロジェクターを使用している。また、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアも重要な要素で、GPUによって風の気流を計算している。

プレゼンテーションでは、"のれん"や"(風を使った)射的ゲーム"、"肺活量計"をデモンストレーション。主にアーケードゲームでの利用を想定しているようだ。

筆者は昨年と今年の2回しか取材を行っていないのだが、昨年と比べて全体的にハイレベルな内容のプレゼンテーションが多かった。経験が浅いため、マイクロソフト関係者やほかの記者にも話を聞いたのだが、それでも「今年はかなり出来のいいものが多かった」と口を揃えて語っていた。

その中の一人は、ハッカソンなどの開発者向けイベントが日本各地で行われていることから、出場者同士の競争が激しくなっているのではないかという見解を述べていた。実際に、すくえあも「全国高等専門学校プログラミングコンテスト(プロコン)」で最優秀賞を獲得した実績を持つ。

最終審査員の伊藤かつら氏も「例年と比較してレベルが高いだけではなく、バラエティに富んだ出場者たちだった。何より、高校生と高専生、専門学校生、大学生まで、幅広い学校の生徒が出場してくれて良かった。しかも、今はプログラミングだけでは勝てない時代で、チーム力やアイディア力、ビジネスセンスを含め、総合力が問われる時代」とし、そのような過酷な競争環境の中でITコンテストを立て続けに勝利したすくえあはかなりの実力を持ったチームといえるだろう。

「すくえあはビジネスに繋がりそうという点も大きい。(完成度が高くて、むしろ伸びしろがないのでは?との質問に)風圧という新しいユーザーインタフェースを通して、色々な可能性が見えてくる。世界大会でというよりも、その先を見られるアイディアだったし、プレゼンテーションで語っていたアーケードゲーム以外にも、デジタルサイネージなど『見ている私たちがアイディアを含ませられる』要素がとても良かったという。世界大会に向けてで言えば、高専生とは思えない"ふてぶてしさ"が世界で通用する要素に見えましたが(笑)」(伊藤氏)

すくえあ本人たちにも話を聞いたが、彼ら自身もアイディアに自信を持っており、世界大会に向けて「嬉しさ5割、やる気3割、怖さ2割」と語るなど、自信が世界の舞台へ旅立つ"怖れ"よりも上回っているようだった。ただ、彼らの悩みは「英語」と即答。世界大会へ今あるアイディアを磨くよりも、英語学習に割く時間の方が多くなりそうだ。

他部門は?

「レベルが高い」という言葉通り、ほかの出場者も強者揃いだった。例えば、すくえあと同じイノベーション部門の「P.M.Karaoke」は、昨年の日本代表と同じ鳥羽商船高等専門学校のチーム(出場者は別)で、審査員からも選考で悩んだとの声が聞かれたアイディアだった。

これは、Kinectやプロジェクターを利用し、P.M=プロジェクション・マッピングを使って、待っている人でもカラオケを楽しめるようにした試みだ。待ち時間のユーザーがWebアプリケーションを使ってスマートフォンをシェイクすると、それに呼応したエフェクトが背景に表示されるほか、Kinectが人間の骨格を認識し、動きに合わせてスポットライトを合わせてくれるようになる。ちなみに、このチームに限らず、複数の出場者が「みなさんお持ちのWindows Phoneで動作します」と語っていたが、恐らく数万人しかお持ちでないと思われる(関連記事:Windows Phoneは法人向けスマホとして圧倒的 - freetel CEO 増田氏インタビューマウスコンピュータがWindows Phoneを手がける理由)。

ゲーム部門の部門賞は「絆」。このチームのFleeting Lightは、恋人や友人はもちろん、会って間もない人でも"絆"を繋げられるゲームだ。一つのタブレット(会場ではSurface Pro 3を使用)を二人で持ち、絆(リンク)を繋ぎながらゲームを進めていく。一人だとクリアできないポイントが存在し、二人で試練を乗り越えていく。

一人で行動し続けると"勇気"がなくなり、ゲームオーバーとなってしまうため、定期的にリンクを張る必要がある。マルチプラットフォーム対応のゲーム統合開発エンジン「Unity」を利用しているほか、当初作成したアプリケーションでは動作が重くなってしまったため、オブジェクトがプレイヤー視線から外れた際にオブジェクトを非表示にするなどの軽量化を行った。

ワールドシチズンシップ部門は「CHAMPIGNON」が部門賞を受賞した。CHAMPIGNONは開発者がフランスで行われている学会へ向かっていることから、当日はSkype中継というマイクロソフトらしいやり方でプレゼンを行った。完成度の高さで言えば群を抜いたアイディアで、HMDとカメラ、ロボット機構を組み合わせて子供の視点や触力覚を再現していた。

かなり学術的な説明が続いており、実際にプレゼンテーション資料も緻密な理論に基づいたものだったのだが、フランスからプレゼンテーションを行った西田 惇さんは、「決してアカデミックな研究開発のためだけに考えたものではない。アミューズメントなどへの応用や病院、医療の現場で子供目線で使ってもらえるような有用なものと思って作っています」と秘めたる思いを口にしていた。

Skypeで参加した西田 惇さん(上)

なお、最優秀賞の目録は30万円で、すくえあのディスプレイのハードウェアコストは23万円程度とのこと。コストを回収できた(?)すくえあだが、7月の本戦へ向けて頑張ってほしい。

HackforPlay

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