iOS 8.3がリリースされた。新アプリ「写真」や数々の新機能を含む比較的大規模なアップデートであり、なかでも高音質通話機能「VoLTE」はiPhone 6/6 Plusユーザにとって待望のフィーチャーといえる。本稿では、auの回線を主なターゲットとして、VoLTE導入のメリットと利用するまでの手順を解説しよう。

このタイミングでVoLTEが開始される理由

日本時間の4月9日未明に配布開始されたiOS 8.3にアップデートすると、日本でiPhoneを扱うキャリアすべてで高音質通話機能「VoLTE(Voice over LTE、ボルテ)」が利用できるようになる。対応機種はiPhone 6/6 Plus、iOS 8.3アップデートを適用後にキャリアアップデートを実行することで、VoLTEの設定項目が現れる形だ。

今回のVoLTE対応は、iOS 8.3の新機能というわけではなく、Appleにしても日本の通信キャリアにしても初のサービスではない。実際、ドコモが2014年6月にAndroid端末を対象にサービスインしたのを皮切りに、auとソフトバンクも2014年12月には運用を開始している。iPhone 6/6 Plusが対象機種に含まれていなかっただけのことだ。

iOS 8.2の音声通話の画面。ピクト表示が「1x」であることがわかる

日本の通信キャリア3社は、iOS 8.3アップデートのタイミングでVoLTE対応を実施した。iOSの新機能というわけではない

一方、米国など海外ではiPhone 6/6 Plusの発売当初からサービスが提供されていた。日本にどのような事情があったかは不明だが、iPhoneが大きなシェアを占める市場であるだけに、設備更新のスケジュールなど通信キャリア側の事情を汲んだことは想像に難くない。キャリア同士の過剰な競争によるサービス/通信品質の低下は、Appleにとってもイメージダウンにつながるからだ。かくして、日本ではドコモ/au/ソフトバンクの3社横並びでVoLTE対応を果たすことになり、そのタイミングとしてiOS 8.3が選ばれたということなのだろう。

ただし、通信キャリアごとにVoLTE対応の"重み"は異なる。auの場合、これまでは通信方式の制約により通話中にデータ通信できず(通話しながらWebを見たり地図を表示したりできない)、異なる通信方式を採用するドコモやソフトバンクと比較したときのウィークポイントとなっていたが、auでもVoLTEの導入により通話とデータ通信を同時に行う「コンカレント通信」が可能になった。au版iPhoneユーザのほうが、VoLTE導入の利点は相対的に大きいといえるだろう。

ドコモとソフトバンクのユーザにしても、音質以外のVoLTEのメリットがある。LTE通信時は音声通話とデータ通信を同時処理できないため、着信があるとW-CDMA方式の3G回線へ自動的に切り替えていたが、VoLTEでは通話中でも4G回線のままデータ通信できるようになるからだ。コンカレント通信が使えること自体は従来と変わらないが、3Gから4Gへの復帰には多少の時間を要することから、VoLTEのほうが体感速度で上回るはずだ。