セブン銀行はこのたび、災害時等に顧客の生活を支援する「新移動ATM車両」を公開した。

前方から見た「新移動ATM車両」

大震災後、「何か我々にもできることはないか」と『移動ATM車両』を開発

セブン銀行は、2011年3月の東日本大震災後、「何か我々にもできることはないか」と考え、現地へATMを持っていくことを決定。ATMの営業再開に相応の時間が必要な地域で、生活に欠かせないインフラであるATMを使えるようにする事が目的だった。

その際課題となったのは、通信回線や電気の復旧が遅れていることや、現金を運ぶために法規制の壁があることなどだ。例えばコンビニの店舗などに設置しているATMは店舗の通信機器を通じてネットワークにつなげているが、移動ATM車両ではそれは不可能だ。そのため、携帯電話の3G回線を使用することにし、そのためのシステムを開発した。また、現金は現金輸送車で運び、移動ATM車両が現地に到着してからATMに装てんすることで法規制をクリアした。こうして、ひとつひとつの課題をつぶしていくことで『移動ATM車両』実現に成功した。

『移動ATM車両』は、5月21日~8月31日までの期間、3台派遣され、宮城県塩釜市、石巻市、南三陸町、気仙沼市を巡回。約1600件の利用があったという。

新機能「ATMスライドシステム」を導入し、バリアフリー対応を実現

セブン銀行では、震災から4年がたった今年、前回派遣時に顧客から寄せられた意見を反映し、移動ATM車両をさらに使いやすく、場所を選ばずサービス提供できるように新調した。

新しい移動ATM車両の特長は、(1)バリアフリー対応、(2)電源がないところでもATMサービスを提供可能、(3)駐車場1台分程度のスペースでも設置可能、の3点。

(1)の「バリアフリー対応」では、東日本大震災の際は車両の荷台の上にあったATMを車両の外に下ろして使うことができるように、新機能「ATMスライドシステム」を導入。同システムでは、ATMを上げ下ろしするためのリフトを導入し、ATMを車両の外に設置できるようにしたため、高齢者や身体の不自由な方でも安心して利用できるようにしている(ただし、悪天候の時は車両の中での利用となる)。

上から下に下りていくATM

ゆっくりと下りついに着地

車両内でATMを前後に移動させるためのレール

ATMを上下に上げ下ろしするリフトの上部

ATM専用バッテリーと発電機を常備、車両も小型化

また、ATM専用バッテリーと発電機を常備する「マルチ電源システム」によって、(2)の「電源がないところでもATMサービス提供」が可能となった。

ATM専用バッテリー

ATM専用発電機

さらに、可能な限り車両を小型化。これにより、一般的な駐車場の1台分のスペースでも設置可能となった。4WD車両を採用しているので、天候などに左右されないという利点もある。

利用シーン


震災時に派遣された際の課題を改善して完成した「新移動ATM車両」。その車両には、「いざという時に、何か我々にできることはないか」というセブン銀行の思いが込められているといえそうだ。