2015年3月19日にWindows Update経由でリリースし、同月25日はISO形式ファイルの配布も始まったビルド10041を対象にレビューを重ねてきたが、早いもので5回を数える。そこでビルド10041に関してはひとまず今回を一区切りとし、最後もビルド9926と比較して改善・変更された箇所を中心に報告したい。

「設定」のピン留めはスタートメニューのタイルへ

最初に第18回で触れた「設定」のピン留め機能だが、その後スタートメニューの動作を検証していたところ、タイルとして加わることが分かった。今回はこの件から報告したい。Windows 10テクニカルプレビュー ビルド10041の初期状態は多くのタイルがスタートメニュー内に並び、右端にはスクロールバーも用意しているが、スタートメニューの右上に並ぶ<展開/復元>ボタンをクリックしたところ、存在にようやく気付いたというのがことの次第である。

「設定」の中カテゴリ(「システム」なら「ディスプレイ」や「通知と走者」)に並ぶピン留めを有効にすると、スタートメニューのタイトルとして加わる

タイルのコンテキストメニューからは、ピン留めのオン/オフやタスクバーへのピン留め、サイズ変更が可能(ただし「中」以外は用意されていなかった)

ピン留めしたタイルは「設定」の中カテゴリと同じ名称を持ち、他のタイルと同じくドラッグ&ドロップで移動可能だ。ピン留めのオン/オフも可能で試しにタスクバーへのピン留め操作を行ってみたところ、確かにピン留めされるものの、中カテゴリがジャンプリストには加わらない。Windowsストアアプリがジャンプリスト機能をサポートしているのか確認してこなかったが、Windows 8.1でいくつかのアプリケーションを試したところ、ファイルのドラッグ&ドロップによるジャンプリストへの追加サポートしていないようだ。今後もデスクトップを中心に使うことを踏まえると、コントロールパネルの「最近使ったもの」のようにジャンプリストに対応できると便利ではないだろうか。

MicrosoftのDon Box氏

そういえば、"Windowsストアアプリ"という名称もWindows 10ではなくなるようである。MicrosoftでDistinguished Engineerを勤めるDon Box氏のキーノートスピーチをChannel 9で視聴していると、これまで「メトロアプリ」や「Windowsストアアプリ」と呼んでいたものを「Windows App」と定義すると語っていた。

Windows 10テクニカルプレビュー ビルド10041でコントロールパネルをピン留めした状態。使用頻度の高い項目がジャンプリストに現れる

これはブランド命名時のトラブルも関係している。MicrosoftがWindows 10デバイスプラットフォーム上で同一のアプリケーションが動作する「ユニバーサルアプリ」への移行を推しているのはご承知のとおり。この2つの要素が相まって、モダン/Windowsストア/ユニバーサルアプリと呼ばれるものはすべて "ウィンドウアプリ"、Win32ベースのデスクトップアプリは「Windows desktop application(デスクトップアプリのまま?)」となるようだ。

Windowsアプリをデファイン(定義)というタイトルのスライドから「Windows App」が確認できる

P2P機能で更新プログラムを更新可能……?

それでは、このところ続けていた「設定」の項目チェックに取りかかろう。最後は「保守と管理」の「Windows Update」からたどれる「更新プログラムのダウンロード方法を選択する」という設定項目だ。画面に並ぶのは複数のソースから更新プログラムのダウンロードを許可するスイッチと、その対象として<ローカルネットワーク上のPC><ローカルネットワーク上のPCとインターネット上のPC>の2項目。

「保守と管理\Windows Update」の<詳細オプション>→<更新プログラムのダウンロード方法を選択する>と開けば現れる設定画面

冷静に考えればLAN上のWindows 10搭載PCから同種の更新プログラムを取得していないか確認し、Windows Updateサーバーから取得したハッシュ情報などを確認しつつ、外部とのトラフィック量の軽減する仕組みだと予想できる。問題は後者の"~インターネット上のPC"という部分だ。多くのユーザーは更新プログラムに改ざんが加わるリスクを考えてしまうだろうが、ハッシュ情報を始めとするファイルの整合性を確認する手法は多いため、さほど問題ではない。

では、P2P(Peer to Peer)技術を用いているのかと問われれば、その可能性は高い。そもそもMicrosoftはWindows Vistaの時点でP2Pネットワークを実現するサービスを標準で組み込み、Windows XP時代もIPv6やP2P機能を追加する「Advanced Networking Pack for Windows XP」をリリースしていた。ちょうどその頃はIMクライアントにP2P機能を実装した「3°(Three Degrees)」のベータテストも行っている。ただし3°は、ビジネスモデルやビジョンを確立できなかったため、リリースには至っていない。

Windows Vistaのサービス一覧。P2P系機能は「Peer Networking~」といういくつかのサービスで実現している

他方でP2P技術はWCF(Windows Communication Foundation)の1つとして組み込まれ、現在はSharePoint Workspaceに改称したOffice Grooveの基本的技術として用いられていた。このような背景から更新プログラムの取得方法として、"~インターネット上のPC"として近くのPCから更新プログラム(全体もしくは1部)を取得するのだろう。ただ、約10年前から作ってきたP2P技術をそのまま使うのではなく、2013年にMicrosoftが取得したP2P技術でファイル転送サービスを行うPando Networksを買収しているため、こちらの技術を取り込んだ可能性も捨てがたい。

いずれにせよ、P2P機能を有効にする場合、"ダウンロード可能な場合はアップロードする側に回る可能性"も同時に発生する。更新プログラムのアップロードは何ら問題はないものの、1日のアップロード量を制限するISPをお使いの場合、オンラインストレージの利用に続く問題が発生しそうだ。

マウス/タッチ操作で変化するUI

ここからはWindows 10テクニカルプレビュー ビルド10041の細かな変更点を確認していこう。例えばマウス操作時とタッチ操作時にUIが微妙に異なっていることに気付くだろうか。下図はWinHEC 2015の「Input Platform Enhancements for Windows 10」から抜粋したものだが、Windows 10はタッチ操作の改善を目指し、ペンや指で選択しやすくするサイズ調整機能を内包するという。

上部が従来のマウス操作時、下部がタッチ操作時。各アイコンに多くの余裕を用意していることが見て取れる

ウィンドウ右上の操作ボタンサイズもWindows 8.1と比べて大きくなった

もっともこれらはデスクトップ/タブレットモードによる差異のようだが、通常のデスクトップモードでもその違いは確認できる。お手元にWindows 10テクニカルプレビュー 10041がある読者はタスクバーボタンをマウスで右クリックした場合と、指で長押しした時の結果を見比べてほしい。コンテキストメニューの行間が大きくなることに気付くことだろう。

マウスではなくタッチ操作でコンテキストメニューを開くと、項目の行間を大きく取るため、より指で触れやすくなる

Surface Proにインストールしたビルド10041で動作を確認してみたが、確かにタッチしやすさはWindows 8.1と段違いである。このような細かい改善はペンや精密タッチパッドにも加わるようだ。

章を改めるまでもない細かい変更点は各所で見受けられる。例えば「ストア(ベータ)」にはアプリケーションやゲームといったカテゴリに「映画とテレビ」が加わり、RTM(製造工程版)リリース時は、動画コンテンツのレンタル/購入プロセスを「ビデオ」から移行させるつもりなのだろう。また、ドライブのダイアログを開くと使用状況を示す円グラフのサイズが小さくなっている。

「ストア(ベータ)」に加わった<映画とテレビ>。ようやくXboxアカウントとMicrosoftの完全統合が進むようだ

ビルド10041のドライブプロパティダイアログ。円グラフは立体化せず、アイコンと同じくシンプルなものに置き換わった

また、Windows 10が新Webブラウザー「Project Spartan(開発コード名)」と新HTMLレンダリングエンジン「Edge」を搭載することは既報のとおりだが、その一部機能をInternet Explorer 11で確認できる「Experimental Features(試験的な機能)」の設定項目も大幅に増えていた。詳しく述べていくとWindows 10の話から離れるため割愛するが、モダンWebへの対応は着々と進んでいるようだ。

ビルド9926にIEの「Experimental Features」。項目は最小限だった

ビルド10041のIEは「試験的な機能」と日本語化し、数多くのWeb技術に対する有無が選択できる

最後に本ビルド10041では確認できないが、今後を見据えた情報として「WDDM(Windows Display Driver Model) 2.0」に触れておこう。最初のアナウンスは2014年開催のBuild 2014のため目新しさはないものの、Direct3D 12 APIを利用に欠かせないため、Windows 10ではWDDM 2.0対応のビデオドライバーは必須となる(ちなみにビルド10041をIntel HDグラフィック4000上で動かした場合、WDDM 1.3のドライバーが組み込まれた)。

WDDM 2.0は仮想GPUや4K解像度など多くの機能に対応する予定だ

内蔵&外部GPUを利用したディスプレイ出力や、複数の接続ポートを用いたハイブリッド出力面の改善も行われる

上図はWinHEC2015のプレゼンテーション資料「Graphics Investments in Windows 10」から抜粋したものだが、ディスクリート(外部)GPUへのディスプレイ接続や、外部ディスプレイに出力する際のDPI/スケーリング調整をサポートするなど、"ちょっと気になる"部分の改善が各所に行われる予定だ。この辺りに関しては2015年5月からのBuild 2015で詳しく説明され、Windows 10の新ビルドで実際に試すことができるだろう。ビルド10041に関するレビューは今回でひとまずお開きにし、新ビルドが登場したあかつきには再び改善点などをご報告したい。

阿久津良和(Cactus)

前回の記事はこちら
・短期集中連載「Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第19回) - コンパネ時代の終焉を感じる「Settings」の新項目
http://news.mynavi.jp/articles/2015/03/27/windows10/
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