ふだん聴く曲をより高音質で楽しみたい、ヘッドホンを中心としたリスニングスタイルを充実させたい、というニーズは高い。その潮流がヘッドホン市場を急拡大させ、ポータブル機器のバリエーションを増やし、パーソナルオーディオ市場全体をけん引してきた。

OPPO「HA-2」。編集時点の実勢価格は税込42,000円前後

今後、市場拡大の目玉となるのは「スマートフォン」だ。当初からポータブルオーディオとしての役割を与えられてはいたものの、多機能化と高性能化、小型軽量化に開発の重きが置かれてきたために、音のクオリティは後回しにされてきた感もあるが、ここ1年で潮目は変化した。ドコモの2014-2015冬春モデル全機種がハイレゾ再生に対応したことは、その一例といえるだろう。

しかし、「スマートフォンですべてを完結させる」には限界がある。容積や製造コストの関係で、オーディオ最優先の設計にすることが難しいからだ。トランスに高音質パーツを奢ったり、徹底したノイズ対策を施したりすることも可能だろうが、そうなればスマートフォンとしての競争力が低下してしまう。だから、スマートフォンは送り出し側に徹し、音の出力はオーディオ機器としての品質を磨きに磨いたポータブルアンプ(ヘッドホンアンプ)に任せる、という考え方には説得力が出てくる。

HA-2は薄型ボディでありながら3,000mAhのバッテリーを内蔵、DSD256(11.2MHz)の再生に対応する。写真はエンブレム部分

MHA-2のボリュームノブ。その高精度アナログポテンショメーターがDACチップ内蔵の32bitデジタルボリュームと連動している

今回取りあげる「HA-2」は、アメリカの新鋭オーディオメーカーOPPOが満を持して投入するポータブルヘッドホンアンプ/USB DAC。すでに同カテゴリの製品は数多く存在するが、HA-2が画期的な点は3つある。

1つめは、その機能的なデザイン。幅68×高さ157×厚さ12mmという薄型ボディは、高剛性アルミ合金製で質感高く、そこに高級手帳を想わせる本革製カバーが奢られる。デザインだけでなく、スマートフォンと重ねたときに傷つけないための配慮だ。

2つめは、音質を大きく左右するDACに最新の「Sabre32 Reference ES9018K2M」を搭載していること。多くのオーディオ機器に採用実績を持つESS Technology社の最新モバイル向けDACチップであり、最大384kHz/32bitのPCMデータおよびDSD256(11.2MHz)の再生に対応する。ようやく据置型DACでのDSD再生が普及してきた状況であるにもかかわらず、このサイズ感にしていち早くDSD256対応を果たしたインパクトは大きい。

そして3つめは、高性能補助バッテリーとして利用できること。3,000mAhのリチウムイオンポリマー電池を内蔵、OPPO独自のVOOC高速充電技術により、同梱の高速充電器を使えば約30分で容量の70%、約90分でフル充電することが可能だ。そのうえスマートフォンなどUSB機器への "おすそわけ充電" にも対応しているので、いざというときにはモバイルバッテリーとしての役割を果たす。この点からしても、スマートフォンとの相性は抜群だ。

アルミニウム合金製のボディは本革製カバーで覆われる。刻まれたシボは高級感を演出するだけでなく、スマートフォンに傷をつけない効果がある

iPhone 6を重ねて下部から撮影。若干厚みはあるものの、幅はジャストフィットしている

iPhone 6を重ねて側面から撮影。質感はiPhone 6よりiPhone 5/5sに近い印象だ