3月も終わりに近づき、4月になれば「Cool Chips」の季節である。Cool Chipsは8月に米国で開催される「Hot Chips」の姉妹会議で、コンピュータや半導体設計関係の発表が行われるIEEE主催の国際会議で今回で18回目の開催となる。会期は4月13日から15日の3日間で、場所は、横浜DeNAベイスターズの本拠地である横浜スタジアムにほど近い横浜情報文化センターである。

Cool ChipsのホームページにAdvanced Programが載っているが、初日の4月13日はチュートリアルの講義で、3つの講義が行われる。最初の講義では、フランスのCAE-LETIのEdith Beigne氏がメニーコアアーキテクチャのDVFSについて説明し、超広範囲動作電圧(UWVR)の設計手法について解説する。2番目の講義は、同じくCAE-LETIのAnca Molnos氏の、さまざまなアプリケーションでの電力消費を削減する方法や、電源ドメインごとに速度電力コントローラを配置させた低消費電力メニーコアアーキテクチャについての講義が行われる。どちらの講義も、消費電力と性能のトレードオフが重要課題となっている今日、役立ちそうな講義である。

そして、3番目の講義では、名古屋大学の加藤真平准教授が自動運転システムに必要なすべての要素技術とソリューションを提供するオープンソースソフトウェアについて講義する。

2日目、3日目の本会議では、合計17のセッションが行われる。その内の5セッションが基調講演や招待講演であり、5セッションが論文発表のセッションで、その中で15論文が発表される。

最初の基調講演1はIntelの阿部剛士副社長の「Advancing Moore's Law: Opening New Horizons」と題する講演で、行き詰まりが懸念されるMooreの法則に関して、微細化のリーダーであるIntelの見方が示されるものと期待される。

基調講演2ではIBMのMichael Rosenfield氏が、「Data Centric Systems: Architecture and Solutions for Technical Computing, Big Data, and High Performance Analytics」と題して、効率の高いヘテロジニアスハードウェアによるデータ・セントリック・システムによるビッグデータ処理などについて講演する。

また、基調講演5では、ARMのJohn Goodracre氏が「Riding the Perfect Storm, Bringing Mobile Compute to the Data Centre」と題して、EUROSERVERプロジェクトのビジョンや目標について講演する。

そして、高性能コンピューティング関係では、KalrayのBenoit Dupont de Dinechin氏による「The Kalray MPPA Mission-Critical Supercomputer on a Chip」、Green500で2位となったExascaler-1に関して、ExaScalerの鳥居淳氏が「ExaScaler-1: The Power-Efficient Submersion Many-Core Processor Based Supercomputer」と題して招待講演を行う。

自動運転に関しては、初日に名古屋大学の加藤先生の講義があり、本会議ではルネサス エレクトロニクスの木村氏による招待講演と東芝の宮森氏による招待講演、認識に関する3件の論文が発表されるセッションVII、自動運転に関するパネルディスカッションと充実した内容である。

そして、Cool Chipsの看板である低消費電力の回路設計や低電力プロセサに関する講演や論文発表セッションと盛りだくさんの内容である。

会場の横浜情報文化センターは、地下鉄みなとみらい線の日本大通り駅の真上のビルであり、みなとみらい線を使うのが一番便利である。しかし、JRの関内駅から横浜公園を抜けて歩いても10分程度で、この時期、横浜スタジアムを含む横浜公園はチューリップが咲き誇り、とても美しい。また、横浜情報文化センターは、ハマの名所の山下公園や赤レンガ倉庫、中華街(チャイナタウン)にも近く、例年、筆者は、昼休みには中華街まで昼食を食べに行っている。