デル時代にWindows Phoneの法人需要を確信

「freetel」ブランドでスマートフォンやSIMカードの販売を手がけるプラスワン・マーケティングが、3月2日~5日までスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2015」にブースを出展。同社初となるWindows Phone 8.1端末などを展示し、海外からの来場者にアピールした。

freetelによるWindows Phone 8.1端末の試作機

Mobile World Congress 2015のfreetelブース

freetelブランドでWindows Phone 8.1端末を投入する意図について、プラスワン・マーケティングCEOの増田薫氏は、法人需要の高さを最大の理由に挙げる。

「freetelを立ち上げる前には、デルの携帯電話事業の責任者を務めていた。法人顧客と接してきた中で、Windows Phoneの需要は非常に高いという手応えがあった」と増田氏は振り返る。

プラスワン・マーケティングCEOの増田薫氏

また、増田氏はデル時代に5インチのスマートフォン「Dell Streak」に出会ってスマートフォンの将来性を感じたといい、「当時、ソフトバンクはiPhoneより大きな画面のスマートフォンを探していた。そこで同社幹部にStreakを売り込み、国内発売にこぎ着けた」(増田氏)とエピソードを明かす。

さらに、デル初のWindows Phone 7端末である「Dell Venue Pro」の日本展開を試みたものの、ほどなくしてデルは携帯電話事業から撤退。国内法人向けにWindows Phoneを提供するという計画もお蔵入りとなった。「5年前からfreetelの構想を温めていた。起業して、自ら作りたい端末を作ってやろうと考えた」(増田氏)と当時を振り返る。

法人向けスマートフォンとして、国内ではiOSやAndroidの導入事例も増えているが、「クラウドとの連携、管理の容易さにおいて、Windows Phoneは圧倒的に優れる」(増田氏)として、法人環境への適合性の高さを見込んでいる。

日本品質の製品を世界へ

freetelとしてMWCに出展するのは2015年が初めてになるという。「会社を立ち上げたのが2年半前のこと。昨年の5月まで社員は4人で、MWCに出展するほどの余裕がなかった。現在では60人まで拡大した」(増田氏)と出展まで経緯を語った。

デルの責任者というポジションを捨ててまで起業した理由について増田氏は、「日本は資源に乏しい国だが、良いものを実直に作ってきた歴史がある。しかし戦後の復興を支えたチャレンジャーはいまや大起業となり、製造部門を海外に移転するなど寂しい限り。"Made in Japan"を、もう一度世界に広めたい」と語る。

日本品質を世界へ、とうたいながらも、「正直に言って、これまでは満足できないモデルも多数あった」(増田氏)と認める。その上で、「重要なのは設計や量産の品質。freetelの製品は、海外における工程にも当社の社員を入れ、目を光らせている」(同)と説明する。

品質管理の担当者には、元ソニーの経験者を採用。Windows Phoneの展開にあたっても、元日本マイクロソフトでIS12Tの発売を手がけた責任者を採用するなど、大手企業からの人材も積極的に登用している点も強みとする。カスタマーサポートは外注せず、社内で体制を構築した。「デルのサポートは海外にアウトソースしていた。これでは、かゆいところまで手が届かない」(増田氏)と指摘する。

MWCのブースでは、漆塗りのスマートフォンを展示。甲冑や日本酒など、欧州を中心とした海外の来場者にも分かりやすい日本のイメージをアピールすることが狙いという。Windows Phone端末の「Ninja」というコードネームもその一環であるとした。

日本の漆塗りの技術を披露し、来場者の注目を集めた

MWCに出展した成果としては、海外展開の拡大を挙げた。「すでに当社の端末を海外に展開するという話は数カ国で決まっていたが、MWCでの商談で30弱の国に拡大することが、ほぼ決まった」(増田氏)と明かした。

freetel端末は「格安スマホ」ではない

Windows Phoneの国内展開にあたっては、「どのOSも、ハイ・ロー・ミドルの3機種をラインアップしたい」(増田氏)と、複数端末の展開を見込む。今回の展示機はWindows Phoneはミドルに相当するとしており、さらに安価なモデルと、高価なモデルの計画を示唆した。一方、コンシューマー向けには、継続的にAndroidも提供する。「コンシューマー向けとしては、アプリのたくさんあるAndroidが適しているのではないか」(増田氏)と語る。

コンシューマー向けには、当面の間アプリの多いAndroidが優勢と見る

本体価格について増田氏は、「適正価格」を強調する。「iPhoneの価格は7~8万円だが、製造原価は150ドルくらい。機能的には完成に近づいており、5年後も10年後もそんな価格で売れるとは思えない」(増田氏)と見る。「当社の製品は決して安くはない、適正価格だと考えている。心血を注いで作った製品を、格安スマホと呼ばれるのは心外だ」(同)と吐露した。

国内展開にあたっては、マイクロソフトとの業務提携によりライセンスホルダーになったという。Windows Phoneについて日本マイクロソフトの動きが鈍いとの声もあるが、「そのようなことは全くない。良い関係を築いている。米マイクロソフトからも、日本の戦略パートナーとみなしてもらっている」(増田氏)と語った。

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