突然だが、「パーラービーズ」という商品をご存知だろうか? 日本では「ダイヤブロック」や最近では「nanoblock(ナノブロック)」でおなじみの玩具メーカー・カワダが1995年に国内販売を開始した、ビーズシリーズだ。通称“アイロンビーズ”とも呼ばれており、好きな形に並べたビーズを上からアイロンで熱してくっ付けることができる。現在、アラフォー世代の筆者は実は知らなかったが、アラサー世代以下の女子たちに訊ねると、揃って「懐かしい!!」という声が返ってきたほど、一定の世代以下の女子たちは一度は夢中で楽しんだ時代があるようだ。

カワダの「パーラービーズ」。ビーズとアイロンペーパーが基本セットで、それ以外はパッケージにより、プレートやピンセット、アクセサリーパーツなどが同梱されている

オトナも夢中になる面白さ

そんな今年で発売から20周年を迎えたパーラービーズを筆者も体験してみた。商品が届き、手元に置いていたところ、現在小学2年生の筆者の息子も「パーラービーズだ! やりたい、やりたい!!」とものすごい食いつきよう。訊ねると、学童保育で遊んだことがあるとのこと。パーラービーズ初心者の筆者が説明書を読まなくても、子どもにレクチャーを受けながら、見よう見まねでひとつ目を作ってみた。

左からバケツ入りタイプの「マルチビーズ 筒入り 5000P」、「パーラービーズ ミラクルシェイプ☆カラフルビーズセット」、「リラックマ たっぷりセット」

子どもはパッケージ写真のサンプルを見ながら、基本形は同じで色を変えたり、一部を自分でオリジナルにアレンジしながら作っていたが、もう十分いい大人な筆者はなんとなくビーズの色を好きに選んで、思いのままに模様を描いてみた。なんとなく全体の模様や色が線対称になるのを意識しながら、とりあえず完成。

パッケージに載っているサンプルの写真を参考にしながらビーズを並べていく小学2年生男児の作品

パーラービーズ初挑戦の筆者第1作目。なんとなく好きな色を選んで幾何学模様風に並べてみる

そして、手順のとおり、付属のアイロンペーパーを表面にかぶせ、その上からアイロンを押し当て、下のビーズが熱で溶けてくっ付いているかを確認してから、ビーズを土台の板からゆっくりと剥がす。温度が冷めたところで、もう1度反対の面を同じ作業を繰り返す。たったこれだけの作業だが、アイロンを当て過ぎても熱でビーズが溶けすぎて変形してしまうし、特に端側のビーズはしっかりと接着しておかなければ、後からバラバラと崩れてしまう可能性があるので念入りにするなど、簡単ではあるが意外とコツが必要だ。また、熱で反ってしまうので、両面の作業を終えた後は、しばらく上から重石を載せておくなど、最後まで手を抜かないことが大事。

アイロンを“中”に設定し、アイロンシートをかぶせた上から押し当てる

ビーズがくっ付いたのを確認し、ゆっくりアイロンシートを剥がして、プレートからも外す。表面が冷めた後、反対側も同様にアイロンを当てる

子どもの教育にも役立つ!?

初めてパーラービーズを体験した感想は、まずはクリエイティビティの可能性の高さに関心。子どものように、見本どおりにキャラクターやモチーフを作るという初歩的な創造性にはじまり、それをさらに膨らませて自分でアレンジしたり、自分自身で考えたオリジナルのものを作成したり、想像力や応用性にも富んでいて、子どもから大人まで楽しむことができる。

そして、もうひとつが集中力を養うのに最適だということ。無数にあるビーズの中から使いたいビーズを探し出すという作業だけでもかなりの集中力を問われる。さらに、小さなビーズをピンセットでつまんで並べるという作業も集中力なしには不可能。手元がちょっと緩んだだけでも、ビーズが落下してしまい、既に並べたビーズに直撃して全壊という惨事も何度か経験した。しかし、こうした失敗をしないためにどのように対処したらいいのかなどをやりながら試行錯誤して学んでいくという技術向上と達成感も得られる。

山のような小さなビーズを選り分け、一つひとつ、つまみ出すだけでも集中力が要求される

ちなみに、初回の時はバラバラになったビーズの山の中から一つひとつ使いたいものを探し出してその都度並べていくという作業を繰り返したが、作りたい柄や色があらかじめ頭の中で固定されている場合は、やはり使いたい色を事前に選り分けてから並べる作業だけに集中したほうが効率がよいということに途中気付き始めた。

ビーズパレットが付属しているセットなら、事前に選り分けて効率アップ。こうして選り分けてみると、一見似たような色でも微妙に異なる色もあり、間違えないためにも必須の作業といえる

ビーズは色の違いだけでなく、ストライプのビーズや形違いのものもある。子どもと一緒に選り分けを競うゲームとして楽しむのも◎

さらに、ビーズの種類を分別する作業のみに特化した場合も、それらをどのように行うと最も効率がよいかということをそのうち考え始めるようになり、単純作業ながら非常に頭を使う。気が付くと夢中で分別しながら、「これはお年寄りの認知症防止にも効果があるだろうな」などと考えていた。

ビーズを並べる作業に関しても同様のことがいえる。例えば、ビーズの色を交互に変えたい場合、最初から上から順に並べていく方法もあれば、先に片方のビーズだけをひとつ飛ばしで並べた後、もうひとつをそのすき間を埋めるように並べていく方法もある。飽きっぽい筆者の場合、単純作業に疲れてくると並べ方を変えたりして気分を変えながら最後までやり通した。

色違いで交互に並べる場合、順番どおりに並べたり、ひとつ飛びで同じ色だけ先に並べたりと並べ方を試行錯誤するのもひとつの楽しみ方だ

また、自分で図柄を考える場合は、既に頭の中で考えた図案を思い浮かべながら、それを板の上で再現していく方法もあれば、まずはビーズを敷き詰めて、その中から“間引く”といった方法で形を整えたり、変えたりといった方法もあり、ちょっとした空間認識力の訓練のように、結果として出来上がったものの意外性を楽しみながら完成させることもできる。こうした遊び方に多様な広がりがありながらも“ものづくり”も経験できるというのが、パーラービーズのまさに醍醐味だと感じた。

図案が思い浮かばない時にはとりあえずビーズを埋めてみる……

並べたビーズを間引いていき、“引き算”しながら図柄を作っていくのもひとつの方法

すき間の部分をイメージに合わせて、好きな色で埋めていき、完成! ちなみに、最初に漠然と浮かんだイメージはアンデス模様

子どもの知育には言うまでもなく、大人にも充分さまざまな効果があって楽しいパーラービーズ。幼い頃は“あんみつ姫”や“じゃじゃ馬娘”と呼ばれ、遊びと言えば、基本屋外で猿のごとく走り回り、ビーズや編み物といった女子力の高い遊びには一度も見向きすることがなかった筆者だが、気が付くと夢中になってしまっていた。没頭し始めると無心になれるので、落ち込んでいるときや嫌なことがあったときにそれらを忘れるのにもうってつけ。子どもはもちろん、まだ試したことのない大人もぜひ一度体験してみてほしい。

今回親子で初めてつくった作品。上級者は縦にも並べて立体物もつくれるとか。そのうち挑戦したい!

なお、同社ではパーラービーズの単色セット総数200名に当たる「パーラービーズ20thキャンペーン」(3月20日~5月11日)や、「パーラービーズ」で制作したオリジナル作品を募集する「フォトコンテスト」(5月11日まで)も実施している。