避妊をしない無防備なセックスが行われた際、後から妊娠を防ぐ「緊急避妊」という方法があることをご存じでしょうか? 「毎回ちゃんとコンドームをつけているから大丈夫」というカップルも多いかもしれませんね。でももし、セックスの途中でコンドームが破れてしまったら……? そんな誰にでも起こりうる"もしものとき"のために、「アフターピル」に代表される緊急避妊法に関する基本的な知識をおさえておきましょう。

安全でもっとも一般的な緊急避妊法が「アフターピル」

緊急避妊とは、望まない妊娠を避けるために、性交後に緊急で行う避妊処置のことです。避妊をせずにセックスしてしまったときや避妊に失敗したときばかりでなく、性犯罪による妊娠の恐れがある場合などにも用いられます。緊急避妊には、薬の服用する方法と銅付加子宮内避妊具(IUD)を使う方法があり、医師が診察した上で適切な処置を判断します。

緊急避妊法の中でも、もっとも一般的に使われているのが「アフターピル」というもの。女性ホルモンを成分とした避妊薬の一種ですが、計画的に服用する低用量ピルより用量が多く、排卵や着床を抑制する働きがあることから妊娠を回避すると言われています。

"用量が多いホルモン剤"というと不安になるかもしれませんが、アフターピルを使用しても不妊などの後遺症が出ることはありません。副作用はあるものの、中絶手術に比べれば、はるかに負担は軽いと言えるでしょう。ただし体の状態や既往歴(過去の病歴や健康の記録)によってはアフターピルが使えない人もいるので、医師の診察を受け、十分に説明を聞いてから服用することが大切です。

「72時間以内に服用」が絶対ルール

アフターピルには、72時間以内(3日以内)に服用すれば、前述の通り排卵を抑制したり、受精あるいは受精卵の着床を妨げたりする作用があるとされています。すなわち受精卵が着床し、すでに妊娠が成立してしまった場合には効果がありません。ちなみに、現在日本で使われているアフターピルには、従来使われている2回服用タイプと、最近発売された1回服用タイプがあります。

頼もしく思えるアフターピルですが、薬である以上は当然、副作用のリスクもあると考えられます。後編では、アフターピルの副作用や服用する場合の注意点についてお話ししていきます。

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善方裕美 医師

日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。

主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など