キーサイト・テクノロジーは3月6日、ダイナミックレンジを従来品に比べて拡大したベクトル・ネットワーク・アナライザ「E5080A ENAシリーズ」を発売した。同社の普及価格帯向けベクトル・ネットワーク・アナライザ「ENAシリーズ」の最上位品に相当する。ENAシリーズではこれまで、「E5071C/E5072A」が最上位品だった。

ベクトル・ネットワーク・アナライザ「E5080A ENAシリーズ」の外観

発売した「E5080A」の最大の特徴は、ダイナミックレンジが135dB(周波数範囲50MHz~6GHz:保証値)と広いこと。従来品E5071Cのダイナミックレンジが123dBなので、12dB広げたことになる。ダイナミックレンジを拡大したことで、測定時間を従来品E7051Cに比べておよそ10分の1に短くできる。

ネットワーク・アナライザの測定時間は、IFBW(中間周波数帯域幅)の設定値によっておおよそ決まる。IFBWを広くすると測定時間は短くなるものの、雑音レベルが増加し、ダイナミックレンジが低下する。例えば110dBのダイナミックレンジを確保するためには、従来品のE5071Cでは、IFBWを1kHzと狭くしておく必要があった。これがE5080Aでは、110dBのダイナミックレンジを確保しておけるIFBWが10kHzに広がった。この結果、従来品では1.6秒かかっていた測定を、約10分の1である0.17秒で実行できるようになった。

新製品(左)と従来品(右)のIFBWと測定時間の違い

また、測定作業におけるグラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)を改良した。タッチパネルでドラッグ・アンド・ドロップ操作、ダイアログ選択、ウイザード選択などを実行できる。例えばSパラメータを測定して各パラメータ(S11~S22)4つのウインドウにそれぞれ表示する設定の場合、従来品では9ステップほどかかっていたのが、新製品では3ステップで設定が完了するようになった。

4つのウインドウにSパラメータの各パラメータを表示する(従来品での設定作業)

4つのウインドウにSパラメータの各パラメータを表示する(新製品での設定作業)

E5080Aの基本性能は、トレース雑音が0.0015dBrms(伝送特性、IFBW10kHz、周波数範囲10MHz~6GHz)、温度ドリフトが±0.005dB/℃(周波数範囲9kHz~3GHz)である。

本体のディスプレイは12.1型フルカラーTFT液晶ディスプレイとタッチパネル。ディスプレイの解像度は1280画素×800画素(WXGA)である。本体の寸法は幅460mm×高さ266mm×奥行き451mm。重量は2ポート品が20.3kg、4ポート品が22.7kg。

価格(税別)はポート数と測定可能な最高周波数によって異なる。2ポート品は、最高周波数が4.5GHzの「E5080A-245」が357万918円、6.5GHzの「E5080A-265」が394万5479円、9GHzの「E5080A-295」が441万3021円である。4ポート品は、4.5GHzの「E5080A-445」が573万6279円、6.5GHzの「E5080A-465」が598万4047円、9GHzの「E5080A-495」が633万7351円。