2015年2月3日、東京コンファレンスセンター・品川において「ATCx 複合材設計ソリューションセミナー」(以下、ATCx)が開催された。セミナーには、航空・自動車をはじめとする日本のものづくりの中枢を担うキーパーソン達が一同に会して、複合材の製品適用に必須となる設計・生産・CAEの3大テーマについて言及。各界の技術交流を深めながら、複合材の製品適用を促し、日本のものづくりへ寄与することが目指された。

ATCx - 複合材設計ソリューションセミナー

ATCxとは、アルテアエンジニアリングが主催するグローバルシリーズのユーザー会「Altairテクノロジーカンファレンス(ATC)」から生まれた、業界や製品の最新情報をより早くより深く議論するための特定のトピックにフォーカスしたコミュニティのことである。日本においてATCは、1999年から毎年規模を拡大しながら国内最大級のCAEユーザー会へと発展。昨年7月には16年目を迎えたATCが、ANAインターコンチネンタルホテル東京において2日にわたり開催されている 。

航空・自動車におけるわが国最先端の複合材適用プロジェクトを立て続けに紹介

午前中に行われた最初の講演に登壇したのは、三菱航空機の小祝弘道氏である。同氏は、三菱重工業株式会社において全世界に先がけて主翼構造に複合材を全面適用したF2戦闘機の開発を成功に導き、MRJの開発においてもプロジェクトを指導している人物だ。「航空機構造へのCFRP適用の歩みと民間構造への適用例」をテーマに行われた氏の講演には、来場者からの熱い視線が注がれた。

ランチセッションを挟んで午後の最初の講演に登壇したのは、東レ オートモーティブセンターの黒田義人氏である。同氏は、「炭素繊維複合材料(CFRP)の自動車用途展開」と題して講演。自動車の量産適用に向け、低コスト・リードタイム短縮を目的とした材料や生産技術開発について解説を行った。

JAXAの航空機主翼構想におけるCAE活用事例とは

そしてCAEの技術紹介としてJAXAの協力のもとで行われた講演「JAXA航空機主翼構想検討での積層構成最適化CAE技術」は二部構成をとり、航空機の主翼構造の構想検討においてメタル構造と複合材構造について最適化技術を適用した事例が紹介された。

アルテアエンジニアリング 中川謙氏

Part1の「JAXA将来旅客機TRA2022複合材主翼の構想検討におけるCAE活用フィジビリティ・スタディ」をテーマとした講演には、アルテアエンジニアリングの中川謙氏が登壇した。

中川氏は、今回実施した取り組みについて「JAXAの協力を受けて、CAEを活用した設計プロセスの開発を目指している」と説明。そして「今回は、まずCAEがどのような分野に使うことができるのかのフィジビリティ・スタディとして、複合材主翼の構想検討において、積層構成の最適化により軽量化検討を行った事例について、アルミ構造との比較を交えて紹介したい」と続けた。

同氏は、JAXAから提供を受けた主翼モデルをベースに詳細FEMモデルを作成し、メタル構造と複合材構造について、板厚最適化および積層構成の最適化を行った過程と結果について詳しく説明。CFRP構造の方が剛性を大幅に向上しながらメタル構造よりも軽くなったという結論などを受けて、「今回は既存のFEMモデルをベースにしたが、今後は様々な最適化の条件によって多様な結果へと変わることだろう。試行錯誤を繰り返しながら、より軽量で剛性のある翼の実現を目指したい」と講演を締めくくった。

JAXAの事例を実現したHyperWorksにおける複合材シミュレーション関連製品群

続いてPart2には、アルテアエンジニアリングの由渕稔氏が登壇し、「HyperWorksにおける複合材機能の概要」と題して講演を行った。HyperWorksの中にはたくさんのCAEソフトウェアが含まれているが、由渕氏はそのうち複合材のシミュレーションにかかわる製品とそれぞれの関連性について解説を繰り広げていった。

複合材のモデル化には領域準拠と層準拠の2つの手法があり、従来からの領域準拠の場合、領域ごとにそれぞれの積層のデータが必要となり、またデータに変更があるとすべての領域に変更を加える必要があるのが課題であった。これが新しい手法となる層準拠ならば、ラミネート内の層を定義しそれを積層するため、データの重複は発生せず、CADや制作プロセスと直結することが可能となり、データ変更の労力も小さくて済むというメリットがある。

「基本的にHyperWorksは、領域準拠と層準拠の両方をサポートしている」と由渕氏は強調する。

そしてこの後に由渕氏は、モデル作成およびモデルの視覚化と確認を行う「HyperMesh」、解析と最適化を行う「OptiStruct」と「RADIOSS」、結果の表示とポスト処理計算を行う

HyperWorksの複合材シミュレーション機能

「HyperView」といった、HyperWorks製品群における複合材シミュレーション関連製品について詳しく解説を行っていった。この説明を通じ、HyperWorksの最適化機能を利用することで、Part1で紹介した事例をいかに実現できたかを示したのである。

すべての講演が終了した後にも、来場者からの熱心な質問が続き、当日の登壇者達による回答や、来場者との意見交換が繰り広げられた。こうして早くも、今年7月に開催予定のATCに向けた盛り上がりを見せつつ、ATCxの幕は降ろされた。講演資料はアルテアエンジニアリングのウェブサイト からダウンロード可能。

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2015 Japan Altair テクノロジーカンファレンス開催!

イベント詳細は→こちら

名称 2015 Japan Altair テクノロジーカンファレンス(2015 Japan ATC)
会期 2015年7月7日(火)・8日(水)
会場 ANAインターコンチネンタルホテル東京 地下1階 宴会場
〒107-0052 東京都港区赤坂1-12-33
TEL:03-3505-1111
主催 アルテアエンジニアリング株式会社
対象 Altair製品ユーザー、プロスペクトカスタマー、ビジネスパートナー、報道関係者