お笑い芸人として幅広く活躍する光浦靖子さん。先日発売した著書『お前より私のほうが繊細だぞ!』(幻冬舎/ 580円+税)では、様々な人生相談へクリティカルなアドバイスを繰り出している。そんな光浦さん自身は、一体何を考えながら働いているのか、仕事観を伺った。

アルバイトはすぐにクビになりました

――著書『お前より私の方が繊細だぞ!』の中には仕事に関する話もたくさん出てきました。芸能界に入る前、学生時代のバイトの思い出ってどんなものがありますか?

光浦 靖子(みつうら やすこ)
1971年愛知県出身。幼なじみの大久保佳代子と結成したオアシズでデビュー。バラエティ番組、ラジオ等出演するほか、舞台やコラム執筆など多彩に活躍。

バイトでは本当に不適合者って感じですぐにクビになってました。社員の人にイジワルされてなんかムカツクって言われて。

――ぜんぜんそんな風に見えないんですけど、それは何が原因だったんですかね?

挨拶してないからじゃないかな。なんか、田舎でいっつも同じ人とばっかりいたから他人に挨拶する習慣もなくて、知らない人に「いらっしゃいませ」と言うのも恥ずかしかったんです。それでもちろん「なんで言わないんだ」って怒られるんですけど、自分としてはタイミングがわかんないんですよ、ドアを開けて一歩入ったところで言うのか、もうちょっと入ったときに言ったほうが伝わるんじゃないかとか。声量もいい具合に出ないしで、そんなんで悩んでたら「辞めてくれる?」って。自分では真面目にやってたんですけど、もういちいちドキドキしちゃって、もうびっくりするようなミスばっかり起こしてましたね。

――今では考えられないですよね、そういうミスするようなタイプには見えないし

芸人になったら度胸がついてドキドキしなくなったんです。緊張しすぎて失敗してたんですね。でも、DMにシール貼るのは早かったんですよ、ありえないくらい才能発揮して。そのせいですることがなくなって、でも寝るわけにもいかないから、「辞めます」っていうしかなくって。学生って今考えるとバカだったなーって。

ちょっと前まで、イライラが止まらなかった

――本の中では、OL経験とかはないのに、すごく職場のお局様の気持ちなんかもわかっている感じがしました

年齢がね、そういうポジションにさせちゃいますからね。今の自分としては、御老体みたいなポジションに行きたいですね。どうでもいいよ、なんでもいいよって。

――今、そうなりつつありますか?

まだ途中ですね。でも、最近はイライラもしてないですね。女の人ってどうにもならない時期があるのか、ちょっと前まで、イライラが止まらなかったんですよ。脳みそに考えがいくまでに怒りの感情が湧き出てしまって、こんなに怒ってたら嫌われる、損するってわかてるのにやめられなくって。でも、その状態を抜けたので楽になりましたね。

――もともとはそうじゃなかったのに、一時的にそうなったんですか?

もともとは、おつりを間違われても「違います」って言えないくらいだったのに、その時期だけは言えるようになってしまった上に言い方がキツいのよ。仕事でもそういうのが出ちゃって、「いつか仕事なくなるんだろな」と思いながらも抑えきれなくてイライラしてましたね。

「自分に見えてるものは一部でしかない」と肝に銘じる

――さっきの続きになるんですが、もし光浦さんがOLをしていて、お局様になったらどういう風に過ごすと思いますか?

難しいよね。肝に銘じるとしたら「自分に見えてるものは一部でしかない」ってことですかね。

――それは、どういうことですか?

仕事できないな、という人がいたらそれ一色で見ちゃうかもしれないけれど、それはその人の一部でしかなくて、もっと他の能力があるかもってことですね。逆に、仕事ができる人も単に口がうまいだけかもしれない。いいことにも悪いことにもその後ろには、また別のものがある。歳をとったら視野が狭くなるけど、自分が見てることだけでレッテルを貼っちゃいけないなって。それを肝に銘じないとなと思うんです。でも、面白いレッテルはいいかもしれないんですけどね。「細身のスーツの人は数珠してる」とかそういうのはね。

お局様になった場合もだし、人の上に立つことになったら、腹をくくって、下の立場の人が笑顔になることに徹するのがいいのかなって。自分が心地が良いことよりも、周囲の人のために何かする、そうすればずっと先になるかもしれないけど、自分にも何かかえってくるんじゃないかと思うんです。

――光浦さんが仕事をする上で大事にしてることって何ですか?

自分はフリーだから逃げ場もあるってこともあるんですよね。お金と生活を天秤にかけることはあるけれど、いつでも仕事をやめられるという気持ちは常に持ってます。OLさんの場合はまた違うかもしれないけど、どっかひとつ強みや逃げ場があるといいと思うんですよ。あとね、「白いものは白い」って伝わるからそれを信じていけば……。

――「白いものは白い」ですか

例えば濡れ衣を着せられたり、ちゃんと評価されないことってあると思うんです。でも、時間はかかるかもしれないけど、最後には伝わるんじゃないかなって。だって、プライベートで沖縄行っても、どこそこの店にいたってことが伝わる時代ですよ、これだけSNSが発達してたら、もしも誤解されたって誰かが訂正してくれるんじゃないかって思うんですよ。だから、いつか「白いものは白い」って伝わるんじゃないかって。

――ありがとうございました

※光浦靖子さんが「ビッチになる」宣言!? 恋愛編はこちら

『お前より私のほうが繊細だぞ!』(幻冬舎/ 580円+税)
光浦靖子著。「母の格好がヒョウ柄化していきます」「30歳過ぎの未婚女性が怖いです」「タトゥーを入れようか悩みます」「幸せになっていいのでしょうか?」──。小さなことがつい気になってしまうのが人生。日常に影を落とすお悩みには、皮肉と自虐たっぷりのアドバイスが効果的。辛辣なのに不思議と気持ちがラクになる、笑えて役に立つお悩み相談エッセイ。