表現の幅が広がる「類語ファインダー」、語彙力もアップ

「類語ファインダー」も新機能の1つだ。以前からある連想変換機能を強化し、提示する情報を増やしている。連想変換機能は、変換中の単語から連想する類義語を、電子辞典の中から探し出す機能だ。その内容は大きく様変わりし、類義語検索というよりも1種の辞書として使用できる。

「Ctrl」+「Tab」キーで呼び出す「類語ファインダー」。類義語や関連語を電子辞典から検索できる

筆者がATOK 2015のベータ版を使った際は、電子辞典を切り替えるキーアサインとして「Backspace」キーや「Shift」+「Backspace」キーが割り当てられていたように記憶しているが、製品版で確認したところ「Tab」キーおよび「Shift」+「Tab」キーに変更されていた。単語選択は「スペース」キー、グループ移動も「Ctrl」+「←(→)」キーが割り当てられ、個人的には実に使いやすい。

電子辞典内のグループや辞典そのものを切り替えるキーアサインは、使いやすいものに変更された

一見すると冗長に見える類語ファインダーも、「解説」や「読み」の表示/非表示を切り替え、表示サイズの拡大縮小、ウィンドウサイズを自分好みに調整すれば、それほど邪魔に感じないだろう。

「読み」や「解説」を非表示化し、さらに縮小表示させた状態。さらにウィンドウサイズは自由に縮小拡大できる

ATOK 2014と同じように連想変換候補を候補ウィンドウで表示する場合は、プロパティの「入力・変換」タブに並ぶ「連想変換」を開き、「候補ウィンドウで表示する」をチェックすればよい。

「類語ファインダー」ではなく、以前の候補ウィンドウで表示させたい場合は「候補ウィンドウで表示する」にチェックを入れる

するとご覧のように候補ウィンドウに連想変換候補が並ぶようになる。もちろん情報ウィンドウによる電子辞典の参照も可能だ

蛇足だが、プロパティには「類語ファインダー」の文字がないため、上記の設定項目が類語ファインダーの有無を指すことに気付かないかもしれない。ATOKは長年同じメニューや項目構成を引き継いできたが、ATOK 2015でも各所の整合性に食い違いが見受けられる。そろそろ抜本的に見直してもよい時期ではないだろうか。

約10万語の専門用語辞書を標準搭載

もう1つ、ATOK 2015の改善点で押さえておきたいのが、専門用語辞書を搭載した点だ。理工学用語辞書や法律経済用語辞書、人文科学用語辞書を標準装備し、約10万語規模の専門用語を収録している。関連業種に携わる方なら、改めてユーザー辞書を作成することなく、普段の資料作成に役立つはずだ。もちろん不要な場合はプロパティから取り除けば済む話なので、基本的にはメリットに数えてよい。

約10万語を収録した3つの専門辞書。必要に応じて使用すれば関連業種のユーザーは資料作成もはかどるだろう

目玉的な新機能の「ATOKナントカ変換サービス」に関しては、以前の記事で紹介しているので割愛するが、発表時と同じく1年間(利用開始は2015年2月から2017年2月まで)の限定で無料利用が可能。使い続けるには、ATOK Passportといった月額制サービスに切り替える必要がある。

総じて、ATOK 2015が順当に機能を強化したIMEであることに疑う余地はない。標準辞書の強化や専門用語辞書の追加に伴う変換効率の見直しに加え、推測変換や連想変換の機能強化も、ユーザーとしてはうれしい改善点である。ただ、月額制サービスのATOK Passportと比べて、パッケージ版を使うメリットが見えなくなってきたのも正直な感想だ。既存ユーザーはAAA優待版によるアップグレードも考慮しつつ、ATOK Passportへの移行も考慮すべきだろう。ATOK Passportの詳細はジャストシステム(ATOK)のWebサイトで確認いただきたい。

阿久津良和(Cactus)